唐招提寺鼓楼 ― 仏舎利を納める舎利殿と、続く行事
金堂と東側の長い一棟のあいだに、入母屋屋根の小ぶりな二階建てが立つ。鼓楼と呼ぶが、その名は堂の中身を言い尽くしていない。寺では舎利殿とも呼ぶ。鑑真が唐から請来したと伝わる仏舎利を安置するからである。舎利は国宝の金亀舎利塔に納められ、上層の厨子のなかに守られている。
この鼓楼は、唐招提寺の国宝建造物のなかで最も新しい。建立は仁治元年(一二四〇)、鎌倉時代前期のことで、開山からおよそ五百年を下る。しかも年代が単年で特定されている点が珍しい。
小さくとも格の高い建築
平面は桁行三間、梁間二間と小さい。楼造の二階建てで、高欄をめぐらせ、本瓦葺の入母屋屋根を架ける。ただの実用建築を超える価値を与えているのは、昭和二十八年(一九五三)の国宝指定であり、鎌倉時代の二層建築という希少さである。もとは経蔵であった可能性を指摘する説もあり、必要に応じて建物の役割を付け替えていく中世寺院のあり方にも通じる。
この堂の意味は舎利にある。仏教において釈迦の遺骨は最高の礼拝対象であり、それを収める建物は相応の丁重さで扱われた。東隣の礼堂が存在するのも、鼓楼が納めるものを人々が正面から礼拝するためである。
うちわまきの行事
年に一度、静かな鼓楼が奈良でも指折りの行事の中心となる。五月十九日、寺はうちわまきを行う。ハート形の団扇を鼓楼から下の群衆へ撒く行事である。この習わしは寺の律を中興した覚盛の記憶に結びつき、団扇は病や災いを除けると信じられてきた。この日に訪れる人は、建物が本来の役目を果たす姿を目にすることになる。数百年にわたって続いてきた行事である。
それ以外の時季、鼓楼は堂内へ立ち入るのではなく外から仰ぐ対象であり、上層の厨子は閉じられている。金堂前の開けた地面から見上げると、その垂直の姿は周囲の横長の堂宇と意図された対比をなす。伽藍が高い音と長い音を配した楽曲のように構成されていることに気づかされる。
Q&A
- 舎利殿がなぜ鼓楼と呼ばれるのですか。
- 古くから鼓楼の名で呼ばれてきましたが、仏舎利を安置することから舎利殿とも称されます。いずれも同じ建物を指します。
- 内部に納められている舎利とは何ですか。
- 鑑真が日本にもたらしたと伝わる仏舎利で、国宝の金亀舎利塔に納め、上層の厨子に安置されています。
- うちわまきはいつ行われますか。
- 毎年五月十九日です。鼓楼から団扇を撒く行事で、中興の覚盛にちなみ、除病の功徳があるとされます。
- 建立はいつですか。
- 仁治元年(一二四〇)、鎌倉時代前期の建立で、寺の五棟の国宝建造物のなかでは最も新しい建物です。
- 中に登れますか。
- 通常は外観の拝観で、上層の厨子は閉じられています。行事の姿を見るなら五月十九日のうちわまきが最適です。
基本情報
| 名称 | 唐招提寺鼓楼(とうしょうだいじころう)/舎利殿とも |
|---|---|
| 所在地 | 奈良県奈良市五条町 |
| 指定区分 | 国宝(建造物)/明治三十三年重要文化財指定、昭和二十八年十一月十四日に国宝指定 |
| 員数 | 一棟(附:厨子一基、古材二十一点) |
| 時代 | 鎌倉時代前期・仁治元年(一二四〇) |
| 構造形式 | 桁行三間、梁間二間、楼造、入母屋造、本瓦葺 |
| 所有者 | 宗教法人唐招提寺 |
| 公開状況 | 世界遺産「古都奈良の文化財」の構成資産。外観拝観。五月十九日にうちわまき |
参考文献
- 唐招提寺 公式サイト ― 鼓楼
- https://toshodaiji.jp/about_koroh.html
- 文化庁 ― 国指定文化財等データベース
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/2479
- 奈良市 ― 世界遺産 唐招提寺
- https://www.city.nara.lg.jp/site/world-heritage/88527.html
最終更新日: 2026.07.11