村上の城下町に佇む昭和初期の名建築

新潟県村上市の歴史ある城下町の中心部、小町地区に静かに佇む旧第四銀行村上支店長住宅主屋は、昭和11年(1936年)に村上信用組合の理事長宅として建設された格調高い和風住宅です。日本最古の「ナンバー銀行」として知られた第四銀行(現・第四北越銀行)の村上支店長住宅として長く親しまれたこの建物は、平成15年(2003年)に国の登録有形文化財に登録されました。たちの高い入母屋造の堂々たる外観と、黒柿などの銘木を惜しみなく使った精緻な内部意匠は、戦前の村上における金融界の繁栄と地元職人の卓越した技術を今に伝えています。

歴史的背景

本住宅は、昭和11年(1936年)に村上信用組合の理事長宅として建設されました。村上信用組合は明治40年(1907年)に有限責任村上信用組合として設立された金融機関で、現在の村上信用金庫の前身にあたります。昭和初期、村上の金融界の指導者たちは、伝統的な日本建築の美意識を守りながらも、その社会的地位にふさわしい格式ある住宅を求めていました。

建物の名称に冠される第四銀行は、日本の金融史において特筆すべき存在です。明治5年(1872年)制定の国立銀行条例に基づき、明治7年(1874年)に第四国立銀行として新潟に設立されました。「ナンバー銀行」の商号を維持する現存銀行としては最古の歴史を持ち、令和3年(2021年)に北越銀行と合併して第四北越銀行となるまで、150年近くにわたって新潟県の経済を支え続けました。村上にも支店を構え、地域経済の発展に重要な役割を果たしてきました。

村上市は、江戸時代に村上藩の城下町として栄えた歴史を持ち、城跡・武家屋敷・町屋・寺町という城下町の四大要素が現在も残る全国的にも希少な都市です。旧町人町には伝統的な町屋建築が数多く残り、歴史的な町並みの中で今も人々の暮らしが営まれています。

文化財指定の理由

本住宅は平成15年(2003年)1月31日に国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。その主な理由は、昭和初期における村上地域の優れた和風住宅建築の特質を顕著に示している点にあります。

建築的には、たちの高い入母屋造、桟瓦葺の木造2階建で、起り破風の車寄玄関を備えた堂々たる構えが評価されています。外部は簓子下見(ささらこしたみ)の仕上げで、格式ある和風住宅としての風格を備えています。

内部においては、黒柿をはじめとする銘木を用いた床飾りや建具の精緻な造作が特に高く評価されています。黒柿は、数百年の樹齢を持つ柿の木にまれに現れる黒い木目が特徴で、古来より最も高級な装飾材の一つとされてきました。

さらに、棟札の存在により、設計者が菅原建吉、大工棟梁が飯田文次郎であることが判明しており、建築の設計・施工に関する歴史的記録としても貴重な価値を有しています。

建築の見どころ

本住宅は建築面積108平方メートルの木造2階建で、周囲の建物と比べてもひときわ高い佇まいが特徴です。入母屋造の屋根は、日本建築において最も格式の高い屋根形式の一つで、寺社建築や上流階級の邸宅に用いられてきた伝統を受け継いでいます。

車寄玄関に架かる起り破風(むくりはふ)は、緩やかな曲線を描き、建物の威厳を保ちながらも訪れる者を迎え入れる柔和な印象を与えます。外壁の簓子下見は、細かく加工された板材を重ねる伝統的な技法で、端正で品のある外観を生み出しています。

内部に足を踏み入れると、黒柿の美しい木目が際立つ床の間や、職人技が光る襖絵、欄間の彫刻など、随所に匠の技を見ることができます。黒柿の独特な黒い縞模様は、一つとして同じものがない自然の芸術品であり、この住宅の最大の見どころの一つです。

格式の高さと住まいとしての温かみを見事に調和させた本住宅は、昭和初期の日本における金融界の指導者たちが、いかに伝統文化への深い敬意を込めて住まいを造り上げたかを物語る貴重な建築遺産です。

アクセス・見学情報

旧第四銀行村上支店長住宅主屋は、新潟県村上市小町1358-2に位置しています。個人所有の登録有形文化財のため、内部見学は制限される場合があります。見学を希望される場合は、事前に村上市教育委員会文化行政推進室または村上市観光協会にお問い合わせください。

JR羽越本線村上駅からタクシーで約5分、徒歩で約20分です。お車の場合は、日本海東北自動車道の村上瀬波温泉ICから約5分でアクセスできます。小町地区は村上の歴史的中心部にあり、周辺には多くの文化財や町屋が点在しているため、まち歩きを楽しみながら訪れることをお勧めします。

周辺の見どころ

村上市は文化財の宝庫であり、旧第四銀行村上支店長住宅主屋の周辺にも多くの魅力的なスポットが集まっています。

  • 若林家住宅(国指定重要文化財) — 村上藩の武家屋敷で、昭和52年に国の重要文化財に指定されました。保存修理工事を経て建築当初の姿に復元されており、江戸時代の武士の暮らしを垣間見ることができます。
  • 村上城跡 — 村上藩歴代藩主の居城跡で、山頂からは村上市街、三面川、日本海を一望できます。桜の名所としても知られ、春には多くの花見客で賑わいます。
  • 町屋の町並み — 旧町人町には江戸時代から明治時代にかけて建てられた伝統的な町屋が多数残されています。春の「町屋の人形さま巡り」や秋の「町屋の屏風まつり」では、各家に伝わる雛人形や屏風が公開され、全国から多くの観光客が訪れます。
  • 瀬波温泉 — 村上市街から車で約10分の海辺の温泉地です。日本海に沈む夕日を眺めながらの入浴は格別で、高温のナトリウム塩化物泉は「熱の湯」として知られています。新鮮な海の幸も楽しめます。
  • 千年鮭 きっかわ — 村上は千年の歴史を持つ鮭の町として有名です。きっかわでは、歴史ある町屋の天井から吊るされた塩引き鮭の壮観な光景を見学でき、伝統的な鮭料理も味わえます。

Q&A

Q旧第四銀行村上支店長住宅主屋とはどのような建物ですか?
A昭和11年(1936年)に村上信用組合の理事長宅として建設された格式ある和風住宅です。たちの高い入母屋造の木造2階建で、黒柿などの銘木を用いた精緻な内部意匠が特徴です。のちに第四銀行(現・第四北越銀行)の村上支店長住宅として使われ、平成15年に国の登録有形文化財に登録されました。
Q建築の見どころは何ですか?
A外観では起り破風の車寄玄関や簓子下見の外壁が見事です。内部では黒柿をはじめとする銘木を用いた床飾りや建具の凝った造作が見どころです。棟札により、設計者の菅原建吉と大工棟梁の飯田文次郎の名前が判明しており、建築史的にも貴重な記録が残されています。
Q見学はできますか?
A個人所有の登録有形文化財のため、内部見学は制限される場合があります。見学を希望される場合は、村上市教育委員会や村上市観光協会に事前にお問い合わせください。外観は小町地区のまち歩きの中でご覧いただけます。
Q最寄り駅からのアクセスは?
AJR羽越本線村上駅からタクシーで約5分、徒歩では約20分です。お車の場合は、日本海東北自動車道の村上瀬波温泉ICから約5分です。新潟駅からは羽越本線で約1時間、東京方面からは上越新幹線で新潟駅まで行き、羽越本線に乗り換えるルートが便利です。
Q周辺のおすすめスポットはありますか?
A村上は城下町の歴史が色濃く残るまちで、重要文化財の若林家住宅、村上城跡、伝統的な町屋の町並みなどが徒歩圏内にあります。また、車で約10分の瀬波温泉では日本海の絶景と温泉を楽しめます。鮭の町として有名な村上ならではの鮭料理もぜひお試しください。

基本情報

名称 旧第四銀行村上支店長住宅主屋(きゅうだいしぎんこうむらかみしてんちょうじゅうたくしゅおく)
指定区分 国登録有形文化財(建造物)
登録年月日 平成15年(2003年)1月31日
建築年 昭和11年(1936年)
構造 木造2階建、瓦葺、建築面積108㎡
設計 菅原建吉
大工棟梁 飯田文次郎
所在地 新潟県村上市小町1358-2
アクセス JR羽越本線村上駅からタクシー約5分、日本海東北自動車道村上瀬波温泉ICから車約5分

参考文献

旧第四銀行村上支店長住宅主屋 - 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/182993
国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003083
村上市 歴史的風致形成建造物の指定について
https://www.city.murakami.lg.jp/soshiki/88/rekisitekifutikeiseikenzobutu.html
第四銀行 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC%E5%9B%9B%E9%8A%80%E8%A1%8C
村上信用金庫 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%91%E4%B8%8A%E4%BF%A1%E7%94%A8%E9%87%91%E5%BA%AB

最終更新日: 2026.03.28