塀が文化財として登録されるということ

本光寺塀は、新潟県佐渡市沢根篭町の浄土真宗寺院・本光寺の外塀で、江戸時代末期の建設、平成20年(2008年)3月7日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。大門の東西から県道45号線沿いに延び、登録上の総延長は14メートルである。

堂宇や門に比べ、塀が単独で登録される例は多くない。この塀に適用された登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」であり、評価の力点がどこにあるかを明示している。漆喰塗りの塀それ自体は控えめな構築物だが、大門と一体で見たとき、寺の敷地を街路に対して一続きの表構えへとまとめ上げる役割を担う。塀を欠けば、境内は開けた敷地に建物が並ぶだけの光景になる。

本光寺の草創は慶長8年(1603年)と伝わり、三度の移転を経て天明元年(1781年)に現在地へ落ち着いた。平成20年には本堂・鐘楼・大門・この塀の4棟が同日に登録されている。

下は石、上は漆喰

この塀は立ち上がるにつれて材が入れ替わる。その順を追って見ていきたい。

最下部の高さ1メートルは凝灰岩の基礎である。加工しやすい軟質の火山岩を積み、木部を積雪と地面から切り離す。その上に土台を置き、柱を建て、柱間に貫を通す。壁面は漆喰仕上げの真壁とし、柱を塗り込めずに表へ現す。さらに上部では腕木を持ち出して桁を受け、桁が板軒を支え、軒には桟瓦を葺く。

総高は2メートルに及ぶ。つまり全体のおよそ半分を石積みが占める計算になる。本州の寺院で見慣れた築地塀と比べると、下半身の重い構成である。冬季の飛雪と潮風にさらされる日本海沿岸の立地を考えれば、木部を地面から高く逃がすこの割付けは理にかなっている。

左右非対称の延長と、昭和48年の移動

塀は左右対称ではない。折曲りに沿って測ると東側が9.0メートル、西側が4.8メートル。合計13.8メートルとなり、これが登録上「延長14m」と記される数値の内訳である。大門の正面に立てば、左右の長さの違いはすぐに見て取れる。意匠上の意図というより、敷地形状の反映と考えるのが自然だろう。

どちらの袖も当初の位置にはない。昭和48年(1973年)、海沿いの県道の拡幅工事に際して、大門とともに後方の現在線まで移された。移築を経た物件が登録有形文化財となる例は珍しくないが、塀と道路との現在の関係が江戸末期ではなく1970年代の産物である点は、現地で意識しておきたい。

もう一点、現場で気づくことがある。大門と塀が一組として移されたため、両者の通り芯と軒の連続は損なわれずに残った。同じ時代、日本各地の道路拡幅では、この種の塀は撤去されるのが通例だった。ここでは運び直すという選択がとられている。

どこから見るか

本光寺塀は公道に面しているため、時間を問わず無料で見学でき、撮影も自由である。境内に立ち入る必要はない。表構え全体を捉えるなら、県道45号線の向かい側に立つとよい。大門と東西の袖塀が一画面に収まる。なお本光寺は檀家を抱える現役の真宗寺院であり、本堂内部は定時公開されていない。

周囲の地理も合わせて把握しておきたい。沢根は、背後の山中で天文11年(1542年)に開かれた鶴子銀山の積出港として発展した集落である。鶴子銀山は令和6年(2024年)7月、「佐渡島の金山」の構成要素として世界文化遺産に登録された。両津港からは車でおよそ40分、路線バス本線(両津港⇔相川)は塀の前を通り、最寄りの停留所は沢根学校前である。

Q&A

Q本光寺塀は見学できますか。境内に入る必要はありますか。
A境内に入る必要はありません。塀は大門の東西から県道45号線沿いに延びており、公道から時間を問わず無料で見学・撮影できます。県道の向かい側に立つと、大門と左右の袖塀を一望できます。
Q本光寺塀はいつの建設で、どのくらいの長さがありますか。
A江戸時代末期の建設で、西暦では1830年から1867年ごろとされています。登録上の総延長は14メートル。内訳は折曲りに沿って東側9.0メートル、西側4.8メートルで、総高は2メートルに及びます。
Q本光寺塀はなぜ文化財に登録されたのですか。
A平成20年(2008年)3月7日、登録基準「国土の歴史的景観に寄与しているもの」により登録されました。登録番号は15-0295です。造形の突出ではなく、大門と一体で街路の景観を形づくっている点が評価されています。
Q本光寺塀はどのような構造で造られていますか。
A高さ1メートルの凝灰岩基礎の上に土台を置き、柱を建てて貫を通します。壁面は漆喰仕上げの真壁とし、柱を表に現します。上部は腕木で桁を受け、桁が板軒を支え、軒に桟瓦を葺いています。
Q本光寺塀は当初からこの位置に建っているのですか。
A当初の位置ではありません。昭和48年(1973年)の県道拡幅工事に伴い、大門とともに現在の線まで移されました。国指定文化財等データベースの当該物件の記載にも移築の事実が明記されています。

基本情報

名称本光寺塀(ほんこうじへい)
所在地新潟県佐渡市沢根篭町字浜方39
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録番号 15-0295/登録基準「国土の歴史的景観に寄与しているもの」
指定年平成20年(2008年)3月7日登録(告示3月19日)
員数1棟
寸法木造、瓦葺、延長14メートル(東側折曲り9.0メートル、西側折曲り4.8メートル)、総高約2メートル
所有者宗教法人本光寺
公開状況公道から常時無料で見学可。境内への立ち入りは不要

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース — 本光寺塀
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00006822
佐渡市 — 国登録 有形文化財:本光寺
https://www.city.sado.niigata.jp/site/bunkazai/4965.html
文化庁 国指定文化財等データベース — 本光寺大門
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00006821
さど観光ナビ — 鶴子銀山
https://www.visitsado.com/spot/detail0089/

最終更新日: 2026.08.13