當山紀念館:沖縄の海外移民の歴史を伝える記念建築

沖縄県国頭郡金武町の町役場裏手に静かに佇む當山紀念館は、1935年(昭和10年)に建てられた戦前の鉄筋コンクリート造建築物です。沖縄初の海外集団移民を実現した「移民の父」當山久三の功績を記念して、海外移民からの寄付金の剰余金を基に建設されました。

令和3年(2021年)2月26日、国土の歴史的景観に寄与しているとして国登録有形文化財に登録され、金武町として初の国登録文化財となりました。現在は當山久三の業績や移民に関する資料を展示する記念館として、沖縄と世界をつなぐ歴史を今に伝えています。

歴史的背景

當山紀念館の歴史は、金武村(現・金武町)出身の當山久三(1868〜1910年)の生涯と深く結びついています。教員、並里の総代(区長)を経て海外移民事業に身を投じた當山は、1899年(明治32年)12月5日、金武出身者を中心とした26名のハワイ移民を那覇港から送り出しました。これが沖縄県初の海外集団移民の始まりです。

その後、當山はフィリピン、北米、中南米などへも多くの沖縄県民を送り出しました。日米開戦により1941年に海外移民が中断されるまでに、金武村だけで3,225人が海外へ渡りました。移民たちが故郷へ送った仕送りは、一時期、沖縄県歳入の6割以上を占めるほどとなり、窮乏する沖縄社会を大きく支えました。

1931年(昭和6年)に當山久三の銅像が金武村に建立された際、海外移民からの寄付金に剰余が生じたことから、その資金を活用して記念館の建設が計画されました。設計を担当したのは、金武区出身で昭和期の沖縄を代表する建築家・大城龍太郎です。1935年に完成した當山紀念館は、移民教育やハワイ渡航30周年記念式、村会の会場として活用されました。

文化財としての価値

當山紀念館が国登録有形文化財に登録された背景には、いくつかの重要な要因があります。まず、沖縄県内では1945年の沖縄戦によって大半の建造物が破壊されており、戦前の鉄筋コンクリート建築が現存すること自体が極めて稀少です。

また、本建物は沖縄の海外移民運動という歴史的に重要な社会現象を物語る有形の遺産であり、太平洋を越えた沖縄と世界各地のつながりを象徴しています。さらに、設計者の大城龍太郎は戦後に波上宮本殿や琉球政府立法院庁舎などの設計を手がけ、1968年には沖縄建築専門学校を創立するなど、沖縄建築界に多大な貢献を果たした人物であり、その初期作品としての建築史的価値も高く評価されています。

建築の見どころ

小規模ながらも、當山紀念館には設計者・大城龍太郎のモダニズム的感性を反映した特徴的な意匠が随所に見られます。構造面では逆梁構造が採用されており、天井に梁が露出せず滑らかな曲面を描く独特の空間が生まれています。1935年の沖縄の建築としては非常に先進的な技法です。

正面入口にはアーチ型の開口部が設けられ、外壁には丸窓や八角形の窓がはめ込まれるなど、当時としてはモダンで洗練されたデザインとなっています。戦前の農村部である金武において、この建物がいかに斬新であったかがうかがえます。

戦後、幼稚園、役場、教育委員会の事務所として長く使用されてきましたが、2016年(平成28年)に建築当初の姿への復元工事が完了し、リニューアルオープンしました。オープニングセレモニーには海外から多くの県系人(シマヌチュ)が参加し、この建物が世界に広がる沖縄ディアスポラにとっていかに特別な存在であるかが示されました。

来館案内

當山紀念館は無料で見学できます。館内には當山久三の業績や沖縄の移民史に関する写真、文書、資料などが展示されています。建物の前には1931年に建立され、戦時中の金属供出で失われた後、1961年に再建された當山久三の銅像も立っています。

紀念館は金武町役場に隣接しており、場所はわかりやすい立地です。那覇方面からは沖縄自動車道の金武インターチェンジを利用すると便利で、所要時間は約1時間です。

周辺の見どころ

金武町にはほかにも魅力的な見どころがあります。金武観音寺は16世紀に創建されたと伝わる歴史ある寺院で、境内には沖縄戦時に避難所として使用された鍾乳洞(日秀洞)があります。金武大川は飲料水、水浴場、洗濯場などに区分された伝統的な共同水源で、金武町指定文化財に指定されています。

また、金武町はタコライス発祥の地としても知られています。キャンプ・ハンセン周辺の飲食街では、この沖縄独自のアメリカ融合料理を味わうことができます。自然派の方には、金武町ネイチャーみらい館がおすすめです。億首川沿いのマングローブでのカヤックや、キャンプなどのアウトドア体験が楽しめます。

Q&A

Q當山久三とはどのような人物ですか?
A當山久三(1868〜1910年)は金武村(現・金武町)出身の人物で、1899年に沖縄初の海外集団移民をハワイに送り出しました。「移民の父」と呼ばれ、ハワイ、フィリピン、南北アメリカなどに多くの沖縄県民を導き、沖縄の海外移民の礎を築きました。
Q入館料はかかりますか?
A入館は無料です。開館時間は午前9時から午後4時まで、休館日は土曜・日曜・祝日(慰霊の日を含む)・年末年始です。
Qなぜこの建物は文化財として重要なのですか?
A1945年の沖縄戦で大半の建造物が失われた沖縄において、戦前の鉄筋コンクリート建築が現存すること自体が極めて稀少です。海外移民運動との歴史的つながり、そして沖縄を代表する建築家・大城龍太郎によるモダンな設計も高く評価されています。
Qアクセス方法を教えてください。
A沖縄県国頭郡金武町字金武4にあり、金武町役場のすぐ裏手です。那覇方面からは沖縄自動車道の金武インターチェンジを利用し、町中心部へ向かってください。所要時間は約1時間です。
Q設計者は誰ですか?
A金武区出身の建築家・大城龍太郎が設計しました。大城は戦後、波上宮本殿や琉球政府立法院庁舎など沖縄の重要建築を手がけ、1968年には沖縄建築専門学校を創立するなど、沖縄建築界に大きく貢献しました。

基本情報

名称 當山紀念館(とうやまきねんかん)
文化財指定 国登録有形文化財(令和3年2月26日登録)
建設年 1935年(昭和10年)
設計 大城龍太郎
構造 鉄筋コンクリート造、逆梁構造
所有者 金武町
所在地 〒904-1292 沖縄県国頭郡金武町字金武4
開館時間 午前9時〜午後4時
休館日 土曜日・日曜日・祝日(慰霊の日)・年末年始
入館料 無料
お問い合わせ 金武町役場 企画課 TEL:098-968-6262

参考文献

當山紀念館|金武町 Official Site
https://www.town.kin.okinawa.jp/soshiki/kikakuka/4/4/593.html
當山久三の像・當山紀念館|おきなわ物語
https://www.okinawastory.jp/spot/600012113
金武町移動展|沖縄県公文書館
https://www.archives.pref.okinawa.jp/event_information/past_exhibitions/8558
金武町 - Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E6%AD%A6%E7%94%BA

最終更新日: 2026.04.10