いけだピアまるセンター(旧池田実業銀行本店)—大正の名建築が今も息づく池田の象徴

大阪府池田市新町、旧能勢街道に面して静かにたたずむ「いけだピアまるセンター」は、大正14(1925)年に池田実業銀行本店として建てられた、池田市最古の鉄筋コンクリート建造物です。重厚な銀行建築の風格と近代的なデザイン感覚を兼ね備えた外観は、池田の街並みのシンボルとして今も多くの人々に親しまれており、平成16(2004)年には国の登録有形文化財に登録されました。

大正期の経済発展を物語る建造物

明治維新後の池田は、警察署をはじめ郵便局、裁判所、郡役所、師範学校等の公共機関が置かれ、能勢・豊能郡の行政・経済の中心地としての役割を担っていました。さらに、銀行や娯楽施設の整備、箕面有馬電気軌道(現・阪急電車)の敷設、室町住宅の開発などにより、近代都市としての発展を遂げていきます。

そのような背景のなかで、関東大震災から2年後の大正14(1925)年11月、旧池田実業銀行本店は完成しました。震災の教訓を踏まえ、当時最先端の鉄筋コンクリート造2階建てとして建てられたこの建物は、池田で最古の鉄筋コンクリート建造物として知られ、近代池田の発展を象徴する貴重な存在となっています。

銀行から図書館、そして創業支援拠点へ

この建物は、時代とともに用途を変えながら、地域に寄り添い続けてきました。戦時の経済統制により池田実業銀行は住友銀行と合併し、建物は昭和34(1959)年まで住友銀行池田支店として使用されました。

昭和37(1962)年には池田市が建物を取得・改装し、市立図書館として開館。学生や勤労青少年の学びの場として早朝から行列ができるほど賑わっていたと伝えられています。平成12(2000)年には、起業家や創業間もないベンチャー企業を支援するインキュベートルームとして再活用が始まり、現在は「いけだピアまるセンター」として、コワーキングスペースを併設した創業支援拠点として活用されています。銀行という地域経済を支える役割から始まり、学びの場、そして再び新しい事業を生み出す場へと姿を変えながら、約100年にわたって池田の街と歩み続けてきた建物です。

登録有形文化財に指定された理由

平成16(2004)年6月9日、当センターは国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。登録基準のひとつである「造形の規範となっているもの」に該当すると評価されたもので、その意匠的価値は文化庁の解説でも明確に位置づけられています。

外観は、基底部を石張風に仕上げ、隅部および1階・2階の縦長上げ下げ窓間の狭い壁面に褐色タイルを柱になぞらえて貼ることで、垂直性を強調しています。頂部はアーキトレイブ風につくられており、銀行建築らしい重厚さと近代的感覚を見事に融合させています。装飾を抑えながらも風格を保ったその佇まいは、大正末期の銀行建築の典型を今に伝える貴重な事例です。

また、池田で最古の鉄筋コンクリート建造物として、地域の近代建築技術の発展史を語るうえでも欠かせない存在となっています。

設計者—小笠原鈅(祥光)

設計を手がけたのは、鉄道院出身で大阪を中心に活躍した建築家・小笠原鈅(おがさわらひさし/祥光)です。鉄道建築で培った構造的合理性と、洋風古典の意匠感覚を融合させた作風で知られ、本建築においても垂直性を強調しつつ均整のとれた立面を生み出しています。大正末期の関西における近代商業建築の発展を語るうえで、興味深い設計者のひとりです。

見どころ

国道173号「新町」交差点付近に建つこの建物は、池田の街並みに静かな存在感を放っています。訪れた際にはぜひ次のような点に注目してみてください。

  • 石張風に仕上げた基底部と、その上に広がる褐色タイル張の壁面が織りなす落ち着いた色調のコントラスト。
  • 窓と窓の間に柱のように配された縦長の褐色タイル帯が、2階建てながら垂直方向に伸びやかな印象を与えています。
  • 頂部のアーキトレイブ風の処理が、洋風古典建築を彷彿とさせる格調を生み出しています。
  • 大きな縦長上げ下げ窓は、内部に豊かな自然光を取り込む大正期の合理的な設計思想を体現しています。
  • 内部は現代のコワーキング空間として活用されており、大正期の銀行建築が今も「働く場」として息づいている姿を感じることができます。

周辺の見どころ

池田市は「事始めのまち」として知られ、日清食品創業者・安藤百福氏や阪急電鉄創業者・小林一三氏などのベンチャースピリットを今に伝える街です。いけだピアまるセンターを訪れた後は、周辺の名所もあわせて巡ることをおすすめします。

  • カップヌードルミュージアム 大阪池田—インスタントラーメン発祥の地に建つ、安藤百福氏の創意工夫を体感できる人気の博物館です。
  • 五月山公園—市の北側にそびえる五月山は、春は桜、秋は紅葉の名所として親しまれ、山頂展望台からは大阪平野を一望できます。
  • 池田城跡公園—戦国時代の城跡を整備した歴史公園で、復元された櫓門や物見櫓があります。
  • 阪急池田駅周辺—駅前商店街には地元の老舗酒蔵やカフェ、大阪らしい飲食店が並びます。
  • 大阪国際空港(伊丹空港)—市の南側に隣接し、飛行機の離着陸を間近で楽しめるスポットとしても人気です。

アクセス

いけだピアまるセンターへは、阪急宝塚線の池田駅から徒歩約10分。大阪梅田駅から特急で約20分という好アクセスです。歴史ある新町の街並みを歩きながら向かうことができ、街歩きそのものが旅の楽しみとなります。なお、現在は創業支援施設として運営されているため、内部の見学は施設の利用目的に応じた範囲となりますが、外観は街路から自由に鑑賞することができます。

Q&A

Qいつ建てられて、いつ文化財に登録されましたか?
A大正14(1925)年11月に竣工し、平成16(2004)年6月9日に国の登録有形文化財(建造物)として登録されました。
Q設計者はどなたですか?
A鉄道院出身で大阪を中心に活躍した建築家・小笠原鈅(祥光)が設計を手がけました。
Q建物の中に入ることはできますか?
A外観は街路から自由にご覧いただけます。内部は現在、コワーキングスペースや創業支援施設として運営されているため、施設の利用目的に応じてご利用いただけます。
Q大阪市内からのアクセス方法を教えてください。
A阪急宝塚線の大阪梅田駅から池田駅まで特急で約20分、池田駅から徒歩約10分です。
Q建築的にはどのような点が特徴ですか?
A池田市最古の鉄筋コンクリート建造物であり、石張風の基底部、褐色タイルによる垂直性の強調、アーキトレイブ風の頂部など、大正末期の銀行建築の典型を伝える優れた事例です。

基本情報

名称 いけだピアまるセンター(旧池田実業銀行本店)
所在地 大阪府池田市新町2-14
所有者 池田市
設計 小笠原鈅(祥光)
竣工 大正14(1925)年11月
構造 鉄筋コンクリート造2階建、建築面積303㎡
文化財種別 登録有形文化財(建造物)—平成16年6月9日登録
アクセス 阪急宝塚線「池田駅」から徒歩約10分
電話番号 072-734-6620

参考文献

文化遺産オンライン「いけだピアまるセンター(旧池田実業銀行本店)」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/139918
文化庁 国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004148
池田市公式ホームページ「いけだピアまるセンター」
https://www.city.ikeda.osaka.jp/soshiki/siminseikatsu/shoko/sougyousien/1415935207764.html
池田市「創建100年 国登録文化財『いけだピアまるセンター』を未来へつなぐプロジェクト」
https://www.city.ikeda.osaka.jp/furusatoikeda/gcf/19644.html

最終更新日: 2026.05.06