古法を守る、二畳の茶室

即庵という茶室が、小林一三が茶の約束事を作り替える姿を示すなら、費隠という茶室は、彼がそれを守る姿を示す。池田の山荘の南庭の南東隅に建つそれは、きわめて小さい。わずか二畳、建築面積は7.8平方メートルにすぎない茶室である。即庵が椅子で実験を試みたのに対し、費隠は、古典的な小間の親密で正統な形を守り抜く。

建物は東西を棟とし、切妻造の屋根を銅板で葺き、東面に庇を掛ける。柱は直径8〜9センチの細い丸材で、壁は淡黄色の土壁で仕上げる。北面の西端には躙口が設けられる。客が身をかがめてくぐる低い入口であり、これをくぐる者を等しく低くする所作である。西面には花頭窓が穿たれ、その上部に扁額が掲げられる。内部は二畳の席で、壁に浅く入り込む室床を備える。

費隠のすべては、茶の伝統的な気配へと向けられている。小さな規模、土の壁、身をかがめる入口、浅い床。それは、数歩先の即庵に対する、古典の側からの対句である。

茶室が登録された理由

平成21年(2009)8月、費隠は国の登録有形文化財に登録された。登録番号は27-0532。ここで、その登録は同族の他の物件と、一点、示唆的に異なる。山荘・正門・塀・即庵がいずれも国土の歴史的景観に寄与しているものとして登録されたのに対し、費隠のみは別の基準、すなわち造形の規範となっているものとして登録された。この違いは、この茶室が、敷地における位置よりも、茶室そのものの質によって評価されたことを示している。

その名もまた、来歴を帯びる。費隠の名は、元首相の近衛文麿によって与えられたと伝わる。一三が近衛内閣で商工大臣を務めた縁による。一国の宰相が名づけた茶室は、茶の道が当代の政財界の人士の交わる場であった一三の世界に、自然に収まっている。

費隠は昭和19年(1944)に建てられ、のちに敷地内で移築された。したがって現在の位置は、当初の場所ではなく移築の結果である。移築の記録は必ずしも一貫しないため、この茶室は、現在地へ移されたものとして記すのがふさわしい。変わらないのはその性格である。簡潔で丁寧に造られた、古典の語法の一つの手本として読める茶室であること。

訪れて見るべきところ

即庵を見たのちに費隠へ来れば、対比がおのずと語る。椅子の席が自らを開くのに対し、費隠は引き込む。躙口の高さまで身を屈めれば、低い入口の意図が感じられる。それは、権勢ある者にすら、入る際に頭を垂れることを求める。細い丸柱と淡黄色の土壁が、二畳がほとんど必然とする、静かで近い気配を室内に与えている。

西の壁には花頭窓を探したい。その花頭の輪郭が、漆喰に切り取られた柔らかな形をなし、上には扁額が据えられる。次に、内部の浅い室床を見る。最も簡素な形へと削ぎ落とされた床である。これらは茶人が一目で読み取る要素であり、併せて、なぜこの小さな一室が、名高い屋敷の一部としてではなく、その種の規範として選び出されたのかを説き明かしている。

Q&A

Q費隠は即庵とどう違いますか。
A即庵が椅子席を備えた独創的な席であるのに対し、費隠は小さく伝統的な二畳の茶室です。二つは同じ庭にあり、併せて、茶に対する小林一三の二つの側面を示します。
Q躙口とは何ですか。
A客が身をかがめてくぐる、茶室の小さく低い入口です。頭を垂れて通る所作により、身分の別なく、すべての客が対等に置かれます。
Q費隠という名はどこから来たのですか。
A元首相の近衛文麿によって与えられたと伝わります。小林一三が近衛内閣で商工大臣を務めた縁によるものです。
Qなぜ費隠だけ他と異なる基準で登録されたのですか。
A他の物件が歴史的景観への寄与で登録されたのに対し、費隠は造形の規範となっているものとして登録されました。敷地における役割ではなく、茶室そのものの質を評価したものです。
Q費隠は当初の場所に建っていますか。
Aいいえ。昭和19年(1944)に建てられ、のちに敷地内で移築されて、現在は南庭の南東隅に建ちます。

基本情報

名称逸翁美術館費隠(茶室)
所在地大阪府池田市建石町1965他
指定区分登録有形文化財(登録番号27-0532)
登録年月日平成21年(2009)8月7日(告示8月25日)。造形の規範となっているものとして登録
員数1棟
構造木造平屋建、切妻造銅板葺、建築面積7.8平方メートル。昭和19年建築、のち移築。二畳の茶室で浅い室床を備える
所有者公益財団法人阪急文化財団
交通阪急宝塚本線 池田駅から徒歩約10〜13分
公開小林一三記念館の敷地内。月曜・年末年始休館。最新の開館時間は事前にご確認ください

References

文化庁 — 国指定文化財等データベース 逸翁美術館費隠
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00007764
阪急文化財団 — 小林一三記念館 施設紹介(登録有形文化財)
https://www.hankyu-bunka.or.jp/kinenkan/facility/
阪急文化財団 — アクセス
https://www.hankyu-bunka.or.jp/access/

最終更新日: 2026.07.05