石清水八幡宮:1160年以上にわたり京都を守り続ける国宝の社

京都府八幡市の男山山頂に鎮座する石清水八幡宮は、大分県の宇佐神宮、神奈川県の鶴岡八幡宮と並ぶ日本三大八幡宮のひとつです。平安時代初期の860年に創建され、千年以上にわたり皇室と国家の守護神として崇敬を集めてきました。2016年に国宝に指定された本社10棟は、現存する八幡造建築として最古かつ最大規模を誇り、まるで竜宮城のような極彩色の彫刻装飾が訪れる人を魅了します。地元の方々から「やわたのはちまんさん」と親しまれる、由緒正しき古社の魅力をご紹介します。

歴史的背景

石清水八幡宮の起源は859年、僧侶・行教が九州の宇佐八幡宮で神託を受けたことに始まります。その神託に従い、翌860年、平安京の裏鬼門(南西の方角)を守護する神として、男山の山頂に八幡大神が祀られました。「石清水」の名は、創建以前からこの地に湧いていた霊泉に由来しています。

939年には伊勢神宮に次いで奉幣される地位を獲得し、「天下第二の宗廟」と称されるようになりました。天皇・上皇・法皇による行幸啓は250回余りを数え、皇室・朝廷から極めて篤い崇敬を受けました。また、源氏が八幡神を氏神としたことから武家からの信仰も厚く、戦国時代には織田信長が天正8年(1580年)に「黄金の雨樋」を寄進、豊臣秀吉が天正17年(1589年)に廻廊を再建、その子秀頼が慶長11年(1606年)に社殿を造替しました。

現在の本社社殿群は、寛永11年(1634年)に徳川三代将軍・家光のもとで造営されたものです。明治維新の神仏分離令により仏教的要素は排除され、一時「男山八幡宮」と改称されましたが、由緒ある「石清水」の号を守るべく、大正7年(1918年)に石清水八幡宮と改称されて現在に至ります。

国宝指定の理由

平成28年(2016年)2月、石清水八幡宮の本社10棟と附棟札3枚が国宝に指定されました。10棟まとめての国宝指定は極めて異例のことです。指定された建造物は、八幡造本殿、摂社武内社本殿、瑞籬、幣殿および舞殿、楼門、東門、西門、廻廊3棟です。

国宝指定にあたっては、主に二つの点が高く評価されました。第一に、本殿が国内の同形式の本殿の中で現存最古かつ最大規模の八幡造建築であること。八幡造とは、切妻造の内殿と外殿を前後に並べて内部で一体化させた独特の建築様式で、横から見ると屋根がM字形に見えるのが特徴です。第二に、本殿を廻廊や瑞籬で囲んで一体化するという古代に成立した荘厳な社殿形式を保持しつつ、近世的な装飾を兼備した完成度の高い神社建築であること。

なお、2012年には境内全体が国の史跡にも指定されており、男山の文化的景観全体が重要な文化遺産として認められています。

見どころ・魅力

八幡造の本殿

本殿の最大の特徴は、内殿と外殿の二棟が前後に並ぶ八幡造の構造です。二つの屋根が接する部分には、織田信長が寄進した「黄金の雨樋」が400年以上の時を経て今なお懸かっています。桧皮葺の優美な屋根と相まって、壮大な規模と気品を感じさせます。中央に応神天皇、向かって左に比咩大神、右に神功皇后が祀られています。

極彩色の彫刻装飾

石清水八幡宮の社殿は「竜宮城のよう」と称されるほど鮮やかな極彩色で彩られています。2004年から8年の歳月をかけて創建当時の色彩が復元されました。瑞籬の欄間彫刻には、鹿と紅葉、リスとブドウ(子孫繁栄の象徴)、ゾウ(江戸時代の職人が文献だけを頼りに彫ったため猫のような肉球がある愛らしい姿)など、象徴的な動植物が生き生きと描かれています。西門の蟇股には夜になると動き出すと伝わる「目貫きの猿」の彫刻もあります。

楠木正成の大楠

本殿のそばには、南北朝時代の忠臣・楠木正成が必勝祈願として奉納したと伝わる樹齢約700年の大楠が立っています。その圧倒的な存在感は、石清水八幡宮が武家との深い縁を持つことを物語っています。

エジソン記念碑

発明王トーマス・エジソンが白熱電球の長寿命化に成功した際、フィラメントに使用されたのが男山周辺の真竹でした。境内にはエジソン記念碑が建立されており、毎年2月にはエジソン生誕祭も行われています。学業成就・合格祈願の竹製絵馬も人気です。

鳩のモチーフと授与品

鳩は八幡大神の使いとされ、境内のいたるところに鳩のモチーフが見られます。特に人気なのが「八」の字が双鳩で描かれた「鳩の御朱印」。書き手によって微妙に異なる鳩のデザインも楽しみのひとつです。鳩みくじや石清水八幡宮オリジナルマスキングテープなど、ここでしか手に入らない授与品も充実しています。

勅祭 石清水祭

毎年9月15日に行われる石清水祭は、賀茂祭(葵祭)・春日祭と並ぶ日本三大勅祭のひとつです。勅祭とは、天皇の使者である勅使が派遣されて行われる格式高い祭典で、全国約8万の神社のうちわずか16社でのみ執り行われます。

この祭りの最大の特徴は、午前2時という深夜に神事が始まること。午前3時には約500人のお供を従えた3基の御鳳輦が松明や提灯の灯りを頼りに山上から山麓へと下る「神幸の儀」が行われます。その幽玄な光景は「動く古典」と称され、平安時代さながらの壮麗な儀式を今に伝えています。放生川で魚や鳥を放つ「放生行事」は、宇佐八幡宮時代から伝わる仏教的儀式に起源を持ち、神仏習合の歴史を色濃く残しています。

アクセス・参拝情報

石清水八幡宮は、桂川・宇治川・木津川の三川合流地点に位置する標高約120メートルの男山の山頂に鎮座しています。参拝方法は二通りあります。京阪電車「石清水八幡宮駅」直結のケーブルカー「石清水八幡宮参道ケーブル」を利用すれば約3分で山上へ。2019年にリニューアルされた「あかね」と「こがね」の2両が運行しています。徒歩の場合は約30分、三つの鳥居をくぐりながら自然豊かな参道を楽しめます。

通常は御祈祷される方のみ入ることができる社殿内部を、神職の案内で見学できる「昇殿参拝」も行われています。春は約1,000本の桜、秋は見事な紅葉が山全体を彩り、四季を通じて美しい景観が楽しめます。

京都駅からは、近鉄京都線で丹波橋駅へ、京阪本線に乗り換えて石清水八幡宮駅下車。所要時間は約40分です。

周辺の見どころ

男山の麓には、江戸時代初期の社僧・松花堂昭乗ゆかりの松花堂庭園・美術館があります。昭乗は近衛信尹・本阿弥光悦と並ぶ「寛永の三筆」として知られる文化人で、松花堂弁当はこの昭乗が使っていた器にヒントを得て、吉兆の創業者・湯木貞一が考案したとされています。

山麓の高良神社は、兼好法師の随筆『徒然草』に登場することで有名です。仁和寺の老僧が高良神社を石清水八幡宮の本殿と勘違いし、山上に登らずに帰ってしまったという逸話が記されており、往時の社殿の壮大さを物語っています。境内には樹齢約700年のタブの木が「厄除けの木」として大切にされています。

木津川沿いの背割堤は、約220本の桜が1.4キロメートルにわたって続く関西屈指の桜の名所です。男山山上の展望台からは、北西に天王山、北東に比叡山を含む山城盆地全体を見渡すことができます。

Q&A

Q石清水八幡宮はなぜ重要なのですか?
A石清水八幡宮は伊勢神宮に次ぐ「天下第二の宗廟」と称され、1160年以上にわたり京都の裏鬼門を守護してきました。天皇・上皇の行幸啓は250回余りを数え、本社10棟は現存最古・最大規模の八幡造建築として国宝に指定されています。
Q山上の本殿までどうやって行けますか?
A京阪電車「石清水八幡宮駅」から直結のケーブルカーで約3分で山上に到着できます。徒歩の場合は参道を約30分かけて登ります。ケーブルカーで上り、徒歩で下るルートもおすすめです。
Q八幡造とはどのような建築様式ですか?
A八幡造は切妻造の二棟(内殿と外殿)を前後に並べて内部で一体化させた独特の建築様式です。横から見ると屋根がM字形に見えるのが特徴で、現存する八幡造は全国に約4棟しかない大変貴重なものです。石清水八幡宮の本殿はその中で最古かつ最大規模です。
Qエジソンと石清水八幡宮の関係は?
A発明王エジソンが白熱電球の長寿命フィラメントに使用した竹が、男山周辺の真竹でした。境内にはエジソン記念碑が建てられ、毎年2月にはエジソン生誕祭が行われています。
Qおすすめの参拝時期はいつですか?
A一年を通じて美しい境内ですが、春(3月下旬~4月)は約1,000本の桜、秋(11月中旬~下旬)は紅葉が特に見事です。9月15日の石清水祭は日本三大勅祭のひとつで、深夜の幻想的な松明行列は必見です。

基本情報

名称 石清水八幡宮(いわしみずはちまんぐう)
文化財指定 国宝(本社10棟、2016年指定)/国史跡(境内、2012年指定)
御祭神 八幡大神(応神天皇・神功皇后・比咩大神)
創建 貞観2年(860年)
現社殿造営 寛永11年(1634年)、徳川家光による造営
建築様式 八幡造(現存最古・最大規模)
所在地 京都府八幡市八幡高坊30(〒614-8588)
アクセス 京阪「石清水八幡宮駅」→参道ケーブル(約3分)→徒歩約5分/または駅から徒歩約30分
所有者 石清水八幡宮

参考文献

石清水八幡宮 公式サイト
https://iwashimizu.or.jp/
国宝:石清水八幡宮 | 八幡市役所
https://www.city.yawata.kyoto.jp/0000000457.html
石清水八幡宮本社が国宝に指定されました | 八幡市役所
https://www.city.yawata.kyoto.jp/0000003043.html
石清水八幡宮MAP | 八幡ストーリー
https://www.city.yawata.kyoto.jp/yawata-story/introduction/iwashimizu.html
石清水八幡宮本社 本殿 - 文化遺産オンライン
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/200919
国史跡石清水八幡宮境内について | 八幡市役所
https://www.city.yawata.kyoto.jp/0000001228.html
石清水八幡宮 | 京阪電車おでかけナビ
https://www.keihan.co.jp/recommend/uji-fushimi/yawata01-iwashimizu.php
石清水八幡宮を徹底解説! | KYOTO SIDE
https://www.kyotoside.jp/entry/20170810/
石清水八幡宮の見どころは? | そうだ 京都、行こう。
https://souda-kyoto.jp/blog/00542.html

最終更新日: 2026.04.07

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