杭全神社本殿(第三殿)とは

大阪市平野区、JR平野駅から南東へ歩いて数分の杭全(くまた)神社には、拝殿の奥に三棟の本殿が横並びに建っている。向かって右端が第三殿で、永正10年(1513年)の建立。一間社春日造、檜皮葺の小ぶりな社殿で、大阪市内に残る最古級の木造建築のひとつに数えられる。祀られているのは伊弉諾尊。この地では熊野證誠権現として信仰されてきた。

第三殿が建つまで

神社の創建は貞観4年(862年)と伝わる。坂上田村麻呂の子孫にあたる坂上当道が、領地としていた杭全の地に牛頭天王(素盞嗚尊)を祀ったのが始まりとされる。この系譜は第一本殿にあたる。

第三殿の由来はこれとは別である。江戸時代に成立した『平野郷社縁起』によれば、建久元年(1190年)、一人の山伏が、役行者の手になると伝わる熊野證誠権現の尊像を携えて訪れ、すでに祀られていた神とならべて安置したのが起こりだという。

現在の社殿は永正10年(1513年)のもの。建立の年は棟札に記され、その棟札二枚は本殿とともに重要文化財の附(つけたり)に指定されている。大坂の陣では境内の多くが破却されたが、本殿は焼失をまぬがれた。修造は元和4年から寛永2年(1618〜1625年)にかけて、土地の代官を中心に進められた。

なぜ重要文化財なのか

第三殿が重要文化財に指定されたのは昭和24年(1949年)2月18日。同じ年に建てられた隣の第二殿も同格で、奈良の春日大社から正徳元年(1711年)に移された第一殿は、のちに追加して指定された。1513年建立の二棟を支えているのは、年代の古さと、それを裏づける記録の確かさである。棟札によって建立年がはっきり特定でき、大阪市内でも有数の古建築として位置づけられている。

社殿を見る

近くで眺めると、第三殿はゆっくり見るに値する。形式は一間社春日造。正方形に近い平面に、前方へ流れ落ちる屋根が向拝となって階段の上に張り出し、春日造らしい反りと棟飾りをのせる。

隣の第二殿は、同じ年に別の形式で建てられた。こちらは三間社流造で、前方へ長く伸びる流れ屋根をもつ。二棟を並べて見ると、中世日本を代表する二つの社殿形式を、同じ年・同じ造り手の仕事として見比べられる。

本殿は瑞垣の内にあり、内部に立ち入ることはできない。拝所の正面から、その屋根や正面の構えを見るかたちになる。参拝者の少ない朝のうちが、屋根の線をじっくり追うには向いている。

境内とその周辺

杭全神社には、全国でここにしか残らない建物がある。連歌所である。連歌を詠むための建物で、宝永5年(1708年)の再建。大阪市の有形文化財に指定されている。今も毎月、連歌の会が開かれ、インターネットを使った連歌も行われている。

平野の外まで名を知られているのは、夏祭、いわゆる平野だんじり祭である。毎年7月11日から14日まで、九台のだんじりが旧平野郷を曳き回される。13日の宮入では、九台が次々と、およそ四時間半をかけて宮入りし、30万人を超えるともいわれる人出で賑わう。現存最古のだんじりは弘化2年(1845年)のものという。

行き方は分かりやすい。JR大和路線の平野駅から南東へ徒歩約6分。境内は自由に参拝でき、拝観料はかからない。本殿の内部は公開されていないが、屋根と正面の姿ははっきりと見える。

Q&A

Q第三殿の中に入れますか。
Aいいえ。三棟の本殿は瑞垣の内にあり、内部は公開されていません。拝所の正面からははっきりと拝観できます。
Q隣の第二殿とは何が違うのですか。
Aどちらも永正10年(1513年)の建立ですが、形式が異なります。第三殿は一間社春日造、第二殿はひと回り大きい三間社流造です。二棟を見比べられるのが、この本殿群のおもしろさです。
Q第三殿の祭神は誰ですか。
A伊弉諾尊です。この地では、熊野の神々につながる熊野證誠権現として祀られています。
Qいつ訪れるのがよいですか。
A境内は通年で参拝できます。だんじり祭を見るなら7月中旬、建築を静かに見るなら平日の午前中がおすすめです。
Q境内で他に見ておきたいものは。
A全国でただ一つ残る連歌所と、いくつかの摂末社が並ぶ境内です。だんじりは近くに収蔵され、7月に曳き出されます。

基本情報

名称杭全神社本殿(第三殿)/くまたじんじゃほんでん(だいさんでん)
所在地大阪府大阪市平野区平野宮町二丁目
指定区分重要文化財(昭和24年〈1949年〉2月18日指定)
年代永正10年(1513年)/室町後期
構造一間社春日造、檜皮葺
員数1棟(附 棟札2枚)
祭神伊弉諾尊(熊野證誠権現)
所有者杭全神社
アクセスJR大和路線 平野駅から南東へ徒歩約6分
公開境内自由/本殿は外観のみ

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/2100
杭全神社 公式サイト「杭全神社について」
https://kumata.jp/about
杭全神社 公式サイト「アクセス」
https://kumata.jp/access

最終更新日: 2026.06.04