後鳥羽上皇の離宮跡に建つ神社

水無瀬神宮は、大阪府三島郡島本町広瀬にある神社で、仁治元年(1240年)に後鳥羽上皇の離宮跡に建てられた御影堂を起こりとし、境内の客殿と茶室が大正15年(1926年)に重要文化財に指定され、本殿など5件が平成28年(2016年)に登録有形文化財に登録された。読みは「みなせじんぐう」。祭神は後鳥羽天皇・土御門天皇・順徳天皇の3柱である。

境内は天王山の東の麓、住宅地の中にある。木津川・宇治川・桂川の三川が合流して淀川となる地点に近く、京都府との境にも近い。鳥居は小ぶりで、通りから見ると鎮守の杜のほうが先に目に入る。

水無瀬殿から御影堂、そして水無瀬神宮へ

水無瀬神宮の公式の由緒によると、この地は後鳥羽天皇が都から足しげく通った水無瀬離宮(水無瀬殿)の跡である。淀川の舟運で都と結ばれ、川の合流点に両岸の山が迫る眺めを上皇は好んだとされ、勅撰和歌集『新古今和歌集』の編纂もこの上皇の命によるものだった。

承久3年(1221年)の承久の乱ののち隠岐に移された上皇は、19年をその地で過ごした。亡くなる直前、両手の朱印を押した置文を水無瀬殿を守っていた水無瀬信成・親成父子に送り、自らの後生を弔うよう求めている。島本町の解説では、上皇の死後、父子はこの置文と直衣姿の上皇の肖像画を離宮跡の御影堂に安置した。これが水無瀬神宮の起こりで、置文と肖像画は今も神宮の所有として京都国立博物館に寄託されている。

御影堂は江戸時代の末まで仏式で上皇を祀っていた。大阪府建築士事務所協会の会報によれば、明治6年(1873年)に神社となって「水無瀬宮」と改め、昭和14年(1939年)に社格が上がった際に「水無瀬神宮」の名になった。

境内の7棟と指定・登録

水無瀬神宮の境内には、国の文化財になっている建物が7件ある。重要文化財は客殿と茶室の2件で、大正15年(1926年)4月19日に同じ日付で指定された。登録有形文化財は本殿、拝殿及び幣殿、神庫、手水舎、神門及び築地塀の5件で、平成28年(2016年)8月1日にそろって登録されている。登録番号は27-0642から27-0646までの連番である。

建てられた時代は大きく4つに分かれる。いちばん古いのは桃山時代の客殿で、豊臣秀吉の寄進と伝わる。本殿と神門及び築地塀、茶室は江戸時代前期、手水舎と神庫は大正期、拝殿及び幣殿は昭和4年(1929年)の建築である。建築年代に350年ほどの開きがある建物が、ひとつの境内でつながっている。

登録の基準も2通りに分かれる。本殿と拝殿及び幣殿は「造形の規範となっているもの」、神庫・手水舎・神門及び築地塀は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として評価された。文化庁の解説は、神庫について「近代に再編された境内景観」に寄与すると書いている。江戸前期の本殿と門を軸に、大正から昭和初めにかけて社殿まわりが整えられたことが、登録の文面からも読み取れる。

配置は西から東へ一直線である。参道の突き当たりに神門があり、くぐると左手に手水舎、正面に拝殿、その奥に本殿が西を向いて建つ。拝殿に向かって左側が客殿で、客殿の庭を隔てて茶室がある。神庫は境内の南西の隅に北を向いて建っている。

名水「離宮の水」

水無瀬神宮の境内に湧く「離宮の水」は、昭和60年(1985年)に環境庁(現在の環境省)の名水百選に選ばれた。大阪府内で選ばれたのはこの水だけである。取水場は神門をくぐった左側にあり、水を汲めるのは午前6時から午後5時まで。量に上限はないが、1回に20リットルを汲んだ人は列の最後尾に並び直す決まりになっている。

早朝から容器を提げた人が並ぶのは、この神社のふだんの風景である。ろ過装置の改修などで取水を止める日があり、神宮は公式サイトの更新情報で知らせている。

祭礼と茶の湯

水無瀬神宮では祭神3柱それぞれの祭日に祭典が行われる。4月4日が後鳥羽天皇祭、10月14日が順徳天皇祭、11月13日が土御門天皇祭で、例祭は12月7日である。順徳天皇祭には表千家、土御門天皇祭には武者小路千家の献茶祭があわせて営まれ、4月5日には裏千家の献茶式が行われる。表千家・裏千家・武者小路千家の三千家が、年に一度ずつこの社で茶を献じていることになる。

毎月第2日曜日には、茶室で燈心会の月釜が開かれる。茶室の拝観と茶会の詳細は、茶室のページにまとめた。

水無瀬神宮への行き方と参拝の時間

水無瀬神宮の最寄り駅は、阪急京都本線の水無瀬駅とJR京都線の島本駅で、どちらからも歩いて10分ほどである。JR京都線の山崎駅からは徒歩15分で、タクシーを使うなら山崎駅が便利だと神宮は案内している。境内には無料の駐車場があり、大型バスも入れるが、バスで来る場合は社務所への予約が要る。

境内は24時間参拝でき、拝観料はかからない。お守りや御朱印の受付は午前9時から午後5時まで、御祈祷の受付は午前9時から午後4時までで、御祈祷には予約が必要である。令和3年(2021年)8月から、ペットを連れて境内に入ることはできなくなった。

建物の内部に入れるのは、予約制で拝観できる茶室と、特別な機会に公開される客殿に限られる。本殿・拝殿及び幣殿・神庫・手水舎・神門及び築地塀は境内から外観を見る形になる。後鳥羽天皇の肖像画と置文は通常公開されておらず、JR島本駅前の島本町立歴史文化資料館に複製が置かれている。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):水無瀬神宮本殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011156
国指定文化財等データベース(文化庁):水無瀬神宮拝殿及び幣殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011157
国指定文化財等データベース(文化庁):水無瀬神宮神庫
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011158
国指定文化財等データベース(文化庁):水無瀬神宮手水舎
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011159
国指定文化財等データベース(文化庁):水無瀬神宮神門及び築地塀
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00011160
国指定文化財等データベース(文化庁):水無瀬神宮客殿
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/2224
国指定文化財等データベース(文化庁):水無瀬神宮茶室
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/2225
水無瀬神宮:神宮について
https://www.minasejingu.jp/info.html
水無瀬神宮:アクセス
https://www.minasejingu.jp/access.html
水無瀬神宮:よく頂く質問
https://www.minasejingu.jp/faq.html
水無瀬神宮:年間祭事・催し
https://www.minasejingu.jp/event.html
水無瀬神宮:手水舎(離宮の水)
https://www.minasejingu.jp/chouzu-sha.html
島本町:島本町の文化財
https://www.town.shimamoto.lg.jp/site/rekishi-bunka/2412.html
島本町:島本の文化財 第9号 水無瀬神宮(PDF)
https://www.town.shimamoto.lg.jp/uploaded/attachment/3760.pdf
大阪府建築士事務所協会:建築人 2007年10月号 まちあるき 水無瀬神宮(PDF)
https://www.aba-osakafu.or.jp/chiiki-gr/mishimano/kenchikujin/mishimano_tiiki0710.pdf

最終更新日: 2026.10.02

基本情報

名称水無瀬神宮
所在地大阪府三島郡島本町広瀬三丁目10-24
所有者宗教法人水無瀬神宮
指定重要文化財 2件・登録有形文化財 5件
座標34.88500, 135.67289