名主の屋敷から長島記念館へ
旧長島家住宅は、埼玉県熊谷市小八林にある旧名主長島家の屋敷で、江戸時代後期の主屋や大正時代の石蔵などあわせて8件が、令和6年(2024年)3月6日に国の登録有形文化財に登録された。建物は現在、公益財団法人長島記念財団が「長島記念館」として公開している。
小八林は「こやつばやし」と読む。荒川の右岸に水田が広がる地域で、長島家はこの村の名主を務めた旧家だった。熊谷市の資料によれば、下流に「八ッ林」という大きな集落があり、それと区別するために「小」を冠した地名と考えられている。
屋敷が記念館になったのは、この家に生まれた銀行家、長島恭助(1901〜1992年)の遺志による。恭助は明治34年(1901年)にここで生まれ、大正12年(1923年)に武州銀行へ入行し、のちに埼玉銀行の頭取と会長を務めた。晩年には、育英事業と、少しずつ集めた絵画や刀剣を公開するための財団を構想していたという。
恭助は平成4年(1992年)9月に亡くなり、構想は遺族が引き継いだ。翌平成5年(1993年)に長島記念財団が設立され、平成6年(1994年)に生家を記念館として開いた。財団は平成24年(2012年)に公益財団法人の認定を受けている。
文化財としての評価は、公開が始まってからずっと後に来た。平成31年(2019年)3月29日に「長島記念館・邸宅」が熊谷市の文化財に指定され、国の文化審議会は令和5年(2023年)11月24日に8件の登録を答申した。
屋敷の配置と8件の顔ぶれ
旧長島家住宅として登録された8件は、主屋・米蔵・前蔵・裏蔵・表門・木戸門・長屋塀・外塀である。登録番号は11-0222から11-0229まで連続し、8件とも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」という同じ基準で登録された。建物を1棟ずつ評価したのではなく、屋敷全体を一つの景観として見た登録である。
配置を南から順に追う。敷地の南辺には、東の隅に米蔵、その西隣に表門、さらに西へ長屋塀が並び、この3件が屋敷の正面をつくる。表門から主屋へ向かう道筋の東側に前蔵が西を向いて建ち、敷地の中央やや東寄りに主屋が南を向いて構える。
主屋の前には主庭が開け、庭の東側を仕切る塀の途中に小さな木戸門がある。主屋の北には裏蔵が南を向いて建ち、敷地の北辺と西辺を大谷石の外塀が囲い込む。外から内へ、正面から奥へと、用途の違う建物が層を成している。
建てられた時期は二つに分かれる。主屋・表門・木戸門・長屋塀の4件は江戸時代後期、米蔵・前蔵・裏蔵の石蔵3棟と外塀は大正3年(1914年)頃から大正9年(1920年)頃にかけての建設である。茅葺の主屋と白漆喰の長屋塀が並ぶ江戸期の屋敷に、大正期になって大谷石の蔵と石塀が加わった。3棟の石蔵は、いずれも石造2階建で切妻造の桟瓦葺という同じ形式にそろえられている。
個々の建物の詳しい構造は、それぞれのページで扱う。
旧長島家住宅を訪ねる
旧長島家住宅は長島記念館として公開されており、入館は有料である。開館は10時から16時まで。休館日は毎週月曜日と木曜日(祝日の場合は開館)、祝日の翌日(土曜日・日曜日を除く)、夏期と年末年始。夏期休館と年末年始の日程は年ごとに記念館のお知らせで告知される。
入館料は一般300円、小・中学生100円。20名以上の団体はそれぞれ210円と70円になる。駐車場は50台分ある。問い合わせ先は記念館(電話0493-39-2025)。
展示は二つの場所に分かれている。母屋(主屋)では、昭和30年代ごろの暮らしの道具を並べた常設展示と、巨人軍のサインボールなどを見せる。蔵を改造した展示室では、恭助が集めた川合玉堂・横山大観らの日本画、高田誠・中川一政らの洋画、渋沢栄一の書、日本刀など約50点を季節ごとに入れ替えて並べる。館内の撮影の可否は公式案内に記載がないので、受付で確かめておくと安心である。
電車で行く場合は、JR高崎線熊谷駅の南口から熊谷市のゆうゆうバス「ひまわり号」に乗り、終点の「長島記念館前」で降りる。乗車時間はおよそ40分で、降りればすぐ記念館である。運賃は1回200円(小学生100円)。ひまわり号は日曜日だけ1便が運休になるので、帰りの便まで時刻表で確認しておきたい。車の場合、記念館の案内ではJR高崎線吹上駅から5分とされている。
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁):旧長島家住宅主屋
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014738
- 国指定文化財等データベース(文化庁):旧長島家住宅米蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014739
- 国指定文化財等データベース(文化庁):旧長島家住宅外塀
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014745
- 熊谷市:「旧長島家住宅主屋」等8件が国の登録有形文化財になりました
- https://www.city.kumagaya.lg.jp/about/soshiki/kyoiku/kounanbunkazaicenter/oshirase/ta22160120240.html
- 埼玉県:国登録有形文化財(建造物)の新規登録について(熊谷市・旧長島家住宅主屋など8件)
- https://www.pref.saitama.lg.jp/f2216/news/page/news2023112402.html
- 熊谷市:長島記念館
- https://www.city.kumagaya.lg.jp/kanko/midokoro/nagashima.html
- 熊谷市:熊谷市ゆうゆうバス 路線図と時刻表、運行情報
- https://www.city.kumagaya.lg.jp/about/soshiki/sogo/kikaku/koutu/yuuyuubasu.html
- 長島記念館:利用案内とアクセス
- https://nagashimakinenkan.com/guide.html
- 長島記念館:長島記念財団と記念館の概要
- https://nagashimakinenkan.com/about.html
- 長島記念館:ごあいさつ
- https://nagashimakinenkan.com/message.html
- 熊谷デジタルミュージアム(熊谷市立江南文化財センター):長島恭助
- https://www.kumagaya-bunkazai.jp/museum/ijin/nagasimakyousuke.htm
最終更新日: 2026.09.24
基本情報
| 名称 | 旧長島家住宅 |
|---|---|
| 所在地 | 埼玉県熊谷市小八林字大境1022 |
| 所有者 | 公益財団法人長島記念財団 |
| 指定 | 登録有形文化財 8件 |
| 座標 | 36.07934, 139.43691 |