深田家住宅主屋
滋賀県東近江市能登川町、旧街道に面して建つ深田家住宅主屋は、通りに向けた顔立ちがいたって平明である。昭和4年(1929年)の竣工。木造2階建、瓦葺で、街道からの外観は町屋の一般的な造りに収まっている。ただし各部の割り付けには、単なる慣例を超えた寸法感覚がうかがえる。開口部の間隔や軒の比例に、近代らしい端正さが混じり、隣接する家並みからわずかに抜き出て見える。
敷地には主屋のほか、土蔵と離れが同じ屋敷地内に配される。三棟をあわせて読むと、昭和初期の在郷商家が建物をどう組み立てたかが見えてくる。住まいを街道側に置き、土蔵や付属屋を背後と側面に集める構成である。
登録の理由
主屋は平成10年(1998年)7月23日に登録有形文化財(建造物)となり、同年8月4日に告示された。登録番号は25-0036。登録基準は「造形の規範となっているもの」による。登録は重要文化財の指定より軽い保護の枠組みで、建物を博物館的に固定せず、所有者が住み続け、手を入れながら守っていくことを前提とする点に特徴がある。
評価の核心は街道からは見えにくい。階下の間取りはこの種の住宅として想定される一般的なもので、意匠が大きく展開するのは階上である。各室はそれぞれ趣向を変えて設えられ、なかでも大広間は本格的な数寄屋の空間として仕上げられている。裕福な家に許された、茶室由来の洗練された様式がここに用いられている。
見どころ
階上の大広間は細部に目を向けるほど応えてくれる。天井は格天井を平坦にせず、格子面をゆるやかに上へ湾曲させたむくり格天井とし、室内の印象をやわらげている。壁には下地窓が穿たれる。塗り込めず、下地の竹小舞をあえて見せる小窓で、ここでは蝙蝠の輪郭に切られている。蝙蝠は日本で古くから吉祥の意匠とされてきた形である。私的な階上の各室を、互いに違う表情をもつ空間として整えようとした家の意識が読み取れる。
現に人が住まう個人の住宅であり、内部は公開されていない。街道からその正面を眺め、割り付けの丁寧さを確かめることはできる。同種の建物の内部に入ってみたい場合は、同じ東近江市内の五個荘金堂の商家群がよい手がかりになる。近江商人の本宅数邸が公開されており、こうした室内の構えと使われ方を間近に知ることができる。
Q&A
- 深田家住宅主屋はいつ建てられましたか。
- 昭和4年(1929年)の竣工です。平成10年(1998年)7月に登録有形文化財となりました。
- 建物の中を見学できますか。
- 個人の住宅のため、内部は公開されていません。外観は前面の旧街道から見ることができます。
- 階下と階上では何が違うのですか。
- 階下は一般的な間取りですが、階上は各室を個別に設え、大広間はむくり格天井や蝙蝠型の下地窓を備えた数寄屋空間となっています。
- 「登録」文化財は「指定」文化財とどう違うのですか。
- 登録は、日常的に使われている建物を守るために設けられた比較的緩やかな制度です。建物を記録・保護しつつ、所有者が住み続け維持していくことを認める点で、より厳格な重要文化財の指定と異なります。
- 近くに実際に入れる似た建物はありますか。
- あります。JR能登川駅から向かえる五個荘金堂地区には近江商人の町並みが残り、公開されている歴史的住宅が複数あります。
基本情報
| 名称 | 深田家住宅主屋(ふかだけじゅうたくしゅおく) |
|---|---|
| 所在地 | 滋賀県東近江市能登川町606 |
| 区分 | 登録有形文化財(建造物)/登録番号 25-0036 |
| 登録年月日 | 平成10年(1998年)7月23日(告示8月4日) |
| 建築年 | 昭和4年(1929年) |
| 構造 | 木造2階建、瓦葺、建築面積約156平方メートル、1棟 |
| 公開 | 個人住宅のため内部非公開。外観は街道から見学可。最寄りはJR能登川駅 |
参考文献
- 文化庁 — 国指定文化財等データベース(深田家住宅主屋)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00000589
- 文化遺産オンライン — 深田家住宅主屋
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/191589
- 奈良文化財研究所 文化財総覧WebGIS — 深田家住宅主屋
- https://heritagemap.nabunken.go.jp/statistic/98016314-深田家住宅主屋/index.html
最終更新日: 2026.07.11