高い石積基壇に立つ、境内最古と考えられる建物

弘誓寺鐘楼堂は、滋賀県東近江市建部下野町にある江戸時代中期の鐘楼で、17世紀後半から18世紀前半に建てられ、令和3年(2021年)に国の登録有形文化財となった。境内の東南に位置し、高く積み上げた石積基壇の上に建つ。建築面積は13平方メートル。

四本の円柱を内側へわずかに傾けて立て、腰貫・内法貫・頭貫という三段の貫で軸部を固める。組物三斗組、中備には蟇股を置く。妻は虹梁の上に大瓶束を立てて棟木を受ける。屋根は切妻造本瓦葺

文化庁の解説は、この建物を境内では現存最古と考えられる、と記す。本堂が天明8年(1788年)、庫裏が文化2年(1805年)、表門が享保6年(1721年)であるから、弘誓寺鐘楼堂はそのいずれよりさかのぼる可能性が高い。

境内の時間の起点として

弘誓寺鐘楼堂に適用された登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。境内の東南という位置は、集落の側から寺を見たときに最初に目に入る一角にあたる。高い基壇の上に載ることで、小さな建物でありながら遠くからでも所在が分かる。

建部下野町の弘誓寺では、令和3年(2021年)2月26日に弘誓寺鐘楼堂を含む5棟が同時に登録された。表門、中門、玄関、庫裏、鐘楼堂である。年代は享保6年(1721年)の表門から江戸後期の中門まで幅があり、そのなかで最も古いのが鐘楼堂と考えられている。境内の中心にある本堂は天明8年(1788年)の建立で、令和5年(2023年)3月17日に東近江市の指定文化財となった。

制度上、弘誓寺鐘楼堂は「登録」であって「指定」ではない。登録有形文化財は平成8年(1996年)に創設された制度である。

三段の貫と、三斗の組物

弘誓寺鐘楼堂の見どころは、柱を固める仕組みが外からそのまま見えることにある。四本の円柱には、足元近くの腰貫、中ほどの内法貫、頂部の頭貫という三段の横材が通されている。壁がないため、どの高さで柱を締めているかが一目で分かる。木造の軸組がどう成り立つのかを説明するのに、これほど適した建物はそう多くない。

柱の上には三斗組が載る。斗を三つ用いる基本的な組物で、その間の中備に蟇股が入る。蟇股は輪郭が蛙の脚に似ることからこの名で呼ばれる部材で、荷を分散させながら装飾も兼ねる。

基壇が高いので、見上げる角度が急になる。石段のある側から近づき、少し離れて全体の輪郭を見てから、基壇のきわに寄って組物を見上げるという順序がよい。本瓦葺の屋根が四本の細い柱に支えられている、その均衡が分かる。

見学とアクセス

弘誓寺鐘楼堂は屋外の建物で、境内の東南に立つため、境内に入れば外から自由に眺められる。弘誓寺は地域の門徒が用いる寺院であり、観光寺院としての公開制度はなく、拝観時間や拝観料の設定は文化庁のデータベースにも東近江市の文化財案内にも記載がない。令和8年(2026年)9月時点で公表された拝観制度は確認できなかった。梵鐘を撞くことはできない。石積基壇は高いので、上に登ることは避けたい。

撮影についての公表された規則もない。境内からの外観撮影は一般に妨げられていないが、法要が営まれている時間帯は控えたい。

最寄り駅は近江鉄道本線の河辺の森駅で、駅から南東へ600メートルほど、徒歩10分程度。河辺の森駅は無人駅で列車の本数が少ないため、近江鉄道の八日市駅からタクシーを使う方法もある。車では名神高速道路の八日市インターチェンジから10分ほどである。

Q&A

Q弘誓寺鐘楼堂はいつ建てられましたか。
A江戸時代中期、17世紀後半から18世紀前半の建立です。文化庁の解説は境内では現存最古と考えられると記しています。令和3年(2021年)2月26日に国の登録有形文化財となりました。
Q弘誓寺鐘楼堂は見学できますか。拝観料はかかりますか。
A境内に立つ屋外の建物なので、境内に入れば外から眺められます。拝観時間や拝観料は公表されていません(令和8年/2026年9月確認)。
Q弘誓寺鐘楼堂の鐘を撞くことはできますか。
A参拝者が撞くための公開は行われていません。石積基壇が高いため、基壇に登ることも避けてください。
Q弘誓寺鐘楼堂の見どころはどこですか。
A壁がないため、腰貫・内法貫・頭貫という三段の貫で柱を固める仕組みが外から見えます。柱上の三斗組と、その間に置かれた蟇股も見どころです。
Q弘誓寺鐘楼堂へのアクセスと最寄り駅を教えてください。
A近江鉄道本線の河辺の森駅から南東へ600メートルほど、徒歩10分程度です。列車の本数が少ないため、八日市駅からタクシーを使う方法もあります。

基本データ

名称弘誓寺鐘楼堂(ぐぜいじしょうろうどう)
所在地滋賀県東近江市建部下野町282
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年令和3年(2021年)2月26日登録
員数1棟
寸法木造、瓦葺、建築面積13平方メートル
所有者宗教法人弘誓寺
公開状況境内から外観の見学可。拝観時間・拝観料の公表なし

参考文献

国指定文化財等データベース「弘誓寺鐘楼堂」(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013745
文化遺産オンライン「弘誓寺鐘楼堂」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/517387
東近江市「文化財一覧」
https://www.city.higashiomi.shiga.jp/bunka_sports_shougaigakushu/rekishi_bunka/1003140/1003141.html
東近江市「有形文化財(建造物)一覧」
https://www.city.higashiomi.shiga.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/141/r5.5.1kenzoubutsu.pdf

最終更新日: 2026.09.07