近江日野商人・山中兵右衛門家の本宅

近江日野商人館は、滋賀県蒲生郡日野町大窪にある日野町立の歴史民俗資料館で、昭和11年(1936年)に新築された近江日野商人・山中兵右衛門家の旧本宅を使っており、主屋・表門・西蔵・東蔵・井戸屋形・物置の6棟が平成10年(1998年)1月16日に国の登録有形文化財となった。文化庁の登録名称は「近江日野商人館(旧山中兵右衛門家住宅)」、地元では「旧山中兵右衛門邸」とも呼ばれる。読みは「おうみひのしょうにんかん」である。

日野の商人は江戸時代の初め頃から行商に出て、日野椀や日野合薬(あわせぐすり)などを各地で売り歩いた。やがて関東地方を中心に出店や支店を構え、酒や醤油の醸造を営む家が多く現れる。館の施設案内によれば、そうした店のなかには現在も営業を続けるものが少なくない。

山中家もその一つである。静岡県駿東郡清水町に本社を置く酒問屋、株式会社山中兵右衞門商店の沿革によると、宝永元年(1704年)に山中万吉、のちの初代兵右衛門が日野から行商に旅立ち、享保3年(1718年)に小田原藩の御厨(現在の御殿場市)に店を構えた。寛政12年(1800年)には御殿場の名主から酒株を譲り受けて酒造を始め、のちに沼津・小田原・伊豆へも店を広げている。文化庁の解説は、山中家を酒の醸造や鉛の販売などで栄えた家と記す。

商いの拠点が遠く駿河にあっても、本宅は日野に置かれた。いま資料館になっている屋敷は、昭和11年(1936年)に建て替えられたものである。館の案内によれば、工事は昭和14年(1939年)にかけて続き、仕事の乏しい時代に職を生む「お助け普請」として行われたという。文化庁のデータベースは主屋を昭和11年、表門と東西の蔵を昭和11年頃、井戸屋形と物置を昭和18年(1943年)頃の建築としている。

昭和56年(1981年)、山中家は日野の本宅を家屋敷ごと町へ寄贈し、同じ年の10月3日に日野町立歴史民俗資料館「近江日野商人館」が開館した。日野観光協会は「八幡表に日野裏」という言い回しを引いて、この屋敷を典型的な日野商人の本宅とし、表構えで富を誇らない厳格でつつましい暮らしぶりがよく表れていると紹介している。

6棟の登録と屋敷の構成

6棟の登録番号は25-0018から25-0023まで連続しており、同じ日に一括で登録された。ただし基準は同じではない。主屋だけが「造形の規範となっているもの」、表門・西蔵・東蔵・井戸屋形・物置の5棟は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」として登録されている。屋敷の中心は主屋で、ほかの5棟はそれを取り巻いて屋敷構えをつくる付属屋、という位置づけである。

配置は文化庁の解説からおおよそ読み取れる。主屋は入母屋造2階建の主体部を中心に、その両脇に平屋の座敷と釜屋(台所棟)が付く。表門は主体部の正面西寄りにある式台の南に、道路から少し引き込んで建ち、前に小さな石橋を渡し、左右へ屋根付きの板塀を延ばす。

主体部の西に付く釜屋の周りには、暮らしを支える建物が寄り集まっている。釜屋の北に東蔵、その西に西蔵が並び、釜屋の西には井戸屋形が軒を接して平行に建ち、その北に物置が続く。表門を入って正面に見える主屋に対し、蔵や井戸屋形は屋敷の奥で台所まわりを囲むように配されている。

建物の規模には大きな差がある。建築面積は主屋が280平方メートル、西蔵が58平方メートル、東蔵が32平方メートル、井戸屋形が11平方メートル、物置が5平方メートル。文化庁の解説によれば、かつては東西の蔵のほかにも蔵があったという。失われた蔵はあるものの、主屋から付属屋まで6棟がそろって残ることで、昭和初期の商家の本宅がどんな建物の組み合わせで成り立っていたかを具体的にたどることができる。

資料館としての見学

主屋の内部は資料館の展示室として使われている。常設展「天下に躍動した関東兵衛 三百年の歴史」は、日野商人の行商と出店経営の歴史を行商品・道中具・家訓などで紹介するもので、ほかに所蔵資料や地元から提供された資料による企画展が年に数回開かれる。

館の施設案内によると、希望すれば係員が主屋1階を解説しながら案内する(ひな人形の展示期間は除く)。2階の歴史展示は、特に希望があり、係員の人数に余裕がある場合に限って案内するとしている。訪問前に電話で確かめておくと確実である。

毎年2月から3月にかけては、「日野ひなまつり紀行」にあわせて「近江日野に伝わるひな人形展」が開かれ、江戸・明治・大正期のひな人形が長さ12メートルの特設ひな段に並ぶ。座敷の多くが展示室に変わる時期なので、建物そのものを落ち着いて見たい場合はこの期間を外すとよい。

開館時間・入館料・アクセス

開館は午前9時から午後4時まで。休館日は毎週月曜日と火曜日で、月・火曜日が祝日の場合は開館して水曜日が休館になる。年末年始(12月29日から1月4日)のほか、お盆の臨時休館などの不定休がある。入館料は大人300円(30人以上の団体は250円)、小・中学生120円で、障害者手帳を持つ人は無料になる。問い合わせは近江日野商人館(電話0748-52-0007)へ。

館内の撮影について、公式の利用案内には記載が見当たらない。撮影を予定している場合は受付で確認するのが確実である。

公共交通では、JR近江八幡駅の南口から近江バスの「日野北畑口」行きに乗り、「大窪」で降りて徒歩3分ほど。JR貴生川駅から近江鉄道で約20分の日野駅からも、同じ北畑口行きのバスで「大窪」まで行ける。日野駅から館までは約3キロある。土日祝日と年末年始には町の公共ライドシェアでも来館できると館が案内している。

車の場合、名神高速の八日市ICから約20分、蒲生スマートICから約15分、新名神の甲賀土山ICまたは信楽ICから約25分。国道477号の「河原」交差点から南へ下り、「大窪」交差点を左折して東へ進み、次のT字路を右折して200メートルほど行った左側に駐車場がある。所在地は日野町大窪1011。滋賀県博物館協議会の案内では普通車30台、大型車4台が停められる。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁):近江日野商人館(旧山中兵右衛門家住宅)主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000437
国指定文化財等データベース(文化庁):近江日野商人館(旧山中兵右衛門家住宅)表門
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000438
国指定文化財等データベース(文化庁):近江日野商人館(旧山中兵右衛門家住宅)東蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000439
国指定文化財等データベース(文化庁):近江日野商人館(旧山中兵右衛門家住宅)西蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000440
国指定文化財等データベース(文化庁):近江日野商人館(旧山中兵右衛門家住宅)井戸屋形
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000441
国指定文化財等データベース(文化庁):近江日野商人館(旧山中兵右衛門家住宅)物置
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00000442
日野町歴史民俗資料館 近江日野商人館 公式サイト
https://hinosyouninkan.jp/
近江日野商人館 公式サイト:施設案内
https://hinosyouninkan.jp/shiseturiyou/
日野町役場:歴史民俗資料館・近江日野商人館
https://www.town.shiga-hino.lg.jp/0000004865.html
日野観光協会:歴史民俗資料館「近江日野商人館」
https://hino-kanko.jp/sight/hinosyouninkan/
滋賀県博物館協議会:近江日野商人館
https://sam.shiga.jp/%E8%BF%91%E6%B1%9F%E6%97%A5%E9%87%8E%E5%95%86%E4%BA%BA%E9%A4%A8/
株式会社山中兵右衞門商店:会社案内
https://www.yamahyo.co.jp/company/

最終更新日: 2026.09.24

基本情報

名称近江日野商人館
所在地滋賀県蒲生郡日野町大字大窪1011
所有者日野町
指定登録有形文化財 6件
座標35.01156, 136.24760