見られることを前提に造られた門

医光寺中門(いこうじちゅうもん)は、島根県益田市染羽町の臨済宗東福寺派医光寺(醫光寺)にある江戸時代後期の四脚門で、平成29年(2017年)5月2日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。間口4.6メートル、切妻造の桟瓦葺。参道の中ほどに位置し、総門をくぐって石段を上がると、本堂を背にして正面に現れる。

年代の記載には幅がある。文化庁の国指定文化財等データベースは江戸後期、西暦では1751年から1830年と幅を持たせる。島根県の登録文化財一覧はこれを絞り込み、安永年間(1772〜1781年)とする。いずれにしても、境内の多くを焼いた享保14年(1729年)の大火から数十年を経てからの建立である。焼失直後の応急的な再建ではなく、一世代あとの、装飾に手を掛ける余裕が生まれた時期の仕事ということになる。

その余裕は彫刻に表れている。本柱は丸柱、控柱は角柱とし、両者を頭貫で固める。その頭貫には亀甲紋が地紋彫りで刻まれ、六角形の連なりが材の長さいっぱいに走る。軒を支えるのは出組の組物。虹梁にも木鼻にも彫刻が施される。目に入る木部で、無地のまま残された箇所はごくわずかだ。

門の向こうにある寺の来歴

医光寺は臨済宗東福寺派に属し、正式には瀧蔵山醫光禅寺と称する。本尊は薬師如来。病苦を除く仏として古くから信仰を集めてきた尊像で、寺号の「医」もここに由来する。

この寺の歴史は、隣の敷地から始まる。現在地の西方に崇観寺があった。貞治2年(1363年)の創建と伝わり、石見の海沿いを治めた武家・益田氏の庇護を受けた。足利将軍の台翰をもって住職が任じられる格式の高い寺院だったという。画僧・雪舟がその住職の一人を務め、文明年間(1469〜1487年)に塔頭のひとつへ庭を築いた。雪舟が第5世だったか第7世だったかは資料によって記述が分かれ、決着していない。

崇観寺は戦国期に衰退する。益田家17代の宗兼が南の高台に医光寺を興し、崇観寺を統合した。雪舟の庭もそのまま引き継がれ、現在は国の史跡及び名勝に指定されている。雪舟作と伝わる庭園6か所のうちのひとつで、池泉観賞半回遊式。池を鶴の形に象り、そのなかに亀島を置く。背後の山畔を切り取って立石を据え、枯滝の石組を配する。

三つの門と、三つの区分

参道を下から順に読んでいくと、日本の文化財制度の仕組みが一度に見えてくる。入口に立つ総門は、益田氏の居城・七尾城の大手門を移築したものと伝えられ、島根県の指定有形文化財。その上にある庭園は国の指定。あいだの中門は国の登録である。登録制度は平成8年(1996年)に創設された比較的緩やかな保護の枠組みで、希少性よりも歴史的景観への寄与を評価軸とする。三つの区分、三つの法的扱いが、ひとつの石段の上下に並んでいる。医光寺は日本遺産「中世日本の傑作 益田を味わう-地方の時代に輝き再び-」の構成文化財でもある。

訪ねる

拝観はおおむね午前8時30分から17時まで、夏期は17時30分まで。ただし公開時間の記載は情報源によって差があり、休観日が設定される場合もあるため、事前に電話で確認しておくと確実だ。庭園と本堂の拝観料は大人500円、高校生300円、中学生以下は無料。20名以上の団体には割引がある。受付は参道を上りきった本堂の右手にある。

JR益田駅からは路線バスで約15分、「医光寺前」下車、徒歩1分。歩けば35分ほどで、駅にはレンタサイクルもある。駐車場あり。

門はくぐる前に少し時間をとりたい。真下から見上げると組物が影の層になり、頭貫の亀甲紋は判別しにくい。石段を二、三段下がると輪郭が立ってくる。地紋彫りは彫りが浅いので、真昼の光では平板に見える。正面に斜めから光が入る夕方近くが、いちばん深さの分かる条件になる。

庭園のほうは門とは別の暦で動く。3月半ばに枝垂れ桜、5月にツツジが山畔を覆い、秋には楓が色づく。冬の雪景色は、雪舟の水墨画にいちばん近い姿になる。総門の近くには雪舟の遺灰を納めたと伝わる灰塚がある。文亀2年(1502年)に益田の東光寺(大喜庵)で83歳の生涯を終え、崇観寺で荼毘に付されたと地元では伝えられている。

Q&A

Q医光寺中門は見学できますか。拝観料はいくらですか。
A見学できます。中門は総門と本堂のあいだの参道上に建っています。庭園と本堂の拝観料は大人500円、高校生300円、中学生以下無料で、受付は本堂の右手です。拝観時間はおおむね8時30分から17時、夏期は17時30分までですが、情報源によって記載に差があるため訪問前の確認をおすすめします。
Q医光寺中門はいつ建てられたのですか。
A文化庁の国指定文化財等データベースは江戸後期(1751〜1830年)としています。島根県の登録文化財一覧はこれをさらに絞り、安永年間(1772〜1781年)と記載します。いずれの場合も享保14年(1729年)の大火から数十年後にあたり、焼失直後の再建ではなく、後年の造営に属する建物と考えられます。
Q医光寺中門ではどこを見ればよいですか。
A見どころは三つあります。頭貫に刻まれた亀甲紋の地紋彫り、軒を支える出組の組物、そして虹梁と木鼻の彫刻です。本柱を丸柱、控柱を角柱とする四脚門で、間口4.6メートル、切妻造の桟瓦葺という構成も併せて確認してください。
Q医光寺中門と、総門・庭園とはどう違うのですか。
A文化財としての区分が三つとも異なります。七尾城の大手門を移築したと伝わる総門は島根県指定有形文化財、雪舟庭園は国指定の史跡及び名勝、中門は国の登録有形文化財です。登録制度は平成8年に設けられた比較的緩やかな保護の枠組みで、歴史的景観への寄与を評価します。
Q医光寺中門へは益田駅からどう行きますか。
AJR益田駅から路線バスで約15分、「医光寺前」バス停下車、徒歩1分です。徒歩の場合は約35分かかります。駅にはレンタサイクルがあり、寺には駐車場も備わっています。

基本情報

名称医光寺中門(いこうじちゅうもん)
所在地島根県益田市染羽町ロ195-1
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録基準:国土の歴史的景観に寄与しているもの/登録番号 32-0180
指定年平成29年(2017年)5月2日
員数1棟
寸法木造、瓦葺、間口4.6メートル/四脚門、切妻造、桟瓦葺
所有者宗教法人醫光寺
公開状況参道上にあり見学可能。庭園・本堂の拝観料は大人500円、高校生300円、中学生以下無料。拝観時間はおおむね8時30分〜17時(夏期17時30分まで)

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)医光寺中門
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011553
文化遺産オンライン 医光寺中門
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/300399
島根県 登録文化財一覧
https://www.pref.shimane.lg.jp/life/bunka/bunkazai/shimane/tourokubunkazai2.html
日本遺産ポータルサイト 医光寺ほか構成文化財
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/culturalproperties/result/5370/
しまね観光ナビ 医光寺
https://www.kankou-shimane.com/destination/20435

最終更新日: 2026.08.22