大正10年の郡役所 ― 登録有形文化財

益田市立歴史民俗資料館(旧美濃郡役所)は、島根県益田市本町6-8にある大正10年(1921年)建築の木造平屋建の建物で、平成8年(1996年)12月20日に国の登録有形文化財に登録された。員数は1棟。構造及び形式は木造平屋建、瓦葺、建築面積340平方メートル。所有は益田市である。

文化庁の解説は建物の性格を二文で示す。郡役所として建設された和風、平屋建の建物で、正面に車寄せと左右前方に突出する入母屋造の翼屋が付く平面構成は、大正期の役場建築の特徴を示している。全体として軒高が高いが、内法上に小庇及び欄間を付け軒下の意匠を整えている。

郡役所とは、明治から大正にかけて府県と町村のあいだに置かれた郡の行政機関である。大正15年(1926年)に郡制が廃止されたため、郡役所として建てられた建物で残るものは多くない。益田では美濃郡の役所がこの場所に建てられ、5年後に郡の行政そのものが終わった。

T字型の平面と高い軒 ― 役場建築の型

正面に立つと、まず車寄せが目に入る。来庁者を迎える玄関で、その左右に入母屋造の翼屋が前方へ突き出す。上から見ればT字型になる配置で、文化庁はこれを大正期の役場建築の特徴として挙げた。

正面の格式を保ちながら、左右の執務空間に採光と通風を確保する。役所という用途がそのまま平面に現れている。同じ時期に各地で建てられた郡役所や町村役場が同型を取っており、この建物はその一例として登録されている。

もう一つの特徴は軒の高さである。平屋建でありながら軒が高く、遠目には二階建てに見える。文化庁はそのうえで、内法の上に小庇と欄間を付けて軒下の意匠を整えていると記す。高い軒をただ高いままにせず、目の高さに小庇と欄間を置いて壁面を分節している。

屋根には石見地方で生産される石州瓦が葺かれている。赤褐色の釉薬瓦で、益田川沿いの緑のなかで屋根だけが色を持つ。

郡役所から資料館へ

郡制廃止のあと、建物は益田警察署、益田総合事務所として使われた。昭和58年(1983年)5月に益田市立歴史民俗資料館として開館し、縄文時代から近世にいたる益田の歴史資料と民俗資料を収蔵・展示してきた。登録名称の「益田市立歴史民俗資料館」はこの時期の名である。

老朽化と耐震性の問題から平成31年(2019年)3月に休館し、改修工事を経て令和5年(2023年)4月1日に益田市立歴史文化交流館として再開した。同年6月に愛称「れきしーな」が決まっている。

建物の用途は郡役所、警察署、事務所、資料館、交流館と5回変わったが、外形はそのまま残された。登録有形文化財の制度は所有者が活用しながら維持することを前提としており、この建物はその趣旨どおりに使われ続けている。

れきしーな ― 現在の使われ方

交流館は3つのエリアからなる。情報発信エリアは日本遺産「中世日本の傑作 益田を味わう」の案内と市内の観光情報を扱い、入場は無料である。展示ルームでは益田の歴史文化に関わる美術品や考古資料の企画展示が行われ、一般200円、団体(20名以上)160円、高校生以下は無料。交流活動ルームではワークショップなどが開かれる。

この建物自体が日本遺産の構成文化財に含まれている。展示を見るだけでなく、高い天井と木組みの空間そのものが見学の対象になる。

見学

開館は午前9時から午後5時まで。休館は毎週火曜日(祝日の場合は翌日)と年末年始(12月29日から1月3日)である。

交通はJR益田駅から車で約10分。市内線バスで「折戸」下車、徒歩約1分。駐車場は約5台分で、臨時駐車場もある。車椅子対応のスロープとトイレ、無料Wi-Fiが整っている。

問い合わせは益田市立歴史文化交流館(0856-23-2635)へ。

Q&A

Q益田市立歴史民俗資料館(旧美濃郡役所)はいつ建てられ、いつ登録されましたか。
A大正10年(1921年)に美濃郡役所として建てられ、平成8年(1996年)12月20日に国の登録有形文化財に登録されました。木造平屋建、瓦葺、建築面積340平方メートル、員数1棟です。
Qこの建物の建築的な特徴は何ですか。
A正面に車寄せ、左右前方に入母屋造の翼屋が突出するT字型の平面構成で、文化庁はこれを大正期の役場建築の特徴としています。平屋建ながら軒が高く、内法の上に小庇と欄間を付けて軒下の意匠を整えています。屋根は石州瓦です。
Q郡役所とは何ですか。
A明治から大正にかけて府県と町村のあいだに置かれた郡の行政機関です。大正15年(1926年)に郡制が廃止されたため、郡役所として建てられた建物で残るものは多くありません。この建物は建設から5年で郡の行政が終わりました。
Q建物はどのように使われてきましたか。
A郡役所のあと益田警察署、益田総合事務所として使われ、昭和58年(1983年)に歴史民俗資料館として開館しました。平成31年に休館して改修し、令和5年(2023年)4月に歴史文化交流館「れきしーな」として再開しています。用途は5回変わりましたが外形は残されました。
Q開館時間と料金は。
A午前9時から午後5時まで、火曜日(祝日の場合は翌日)と年末年始が休館です。情報発信エリアは無料、展示ルームは一般200円、団体160円、高校生以下無料。JR益田駅から車で約10分、バスは「折戸」下車徒歩約1分です。

基本情報

名称益田市立歴史民俗資料館(旧美濃郡役所)(ますだしりつれきしみんぞくしりょうかん(きゅうみのぐんやくしょ))/現在の施設名は益田市立歴史文化交流館「れきしーな」
所在地島根県益田市本町6-8
指定区分登録有形文化財(建造物)/日本遺産「中世日本の傑作 益田を味わう」構成文化財
指定年1996年(平成8年)12月20日 登録
員数1棟
寸法木造平屋建、瓦葺(石州瓦)、建築面積340平方メートル。正面に車寄せ、左右前方に入母屋造の翼屋が突出。1921年
所有者益田市
公開状況午前9時から午後5時。火曜日(祝日の場合は翌日)と年末年始は休館。情報発信エリアは無料、展示ルームは一般200円、団体160円、高校生以下無料

参考文献

文化遺産オンライン 益田市立歴史民俗資料館(旧美濃郡役所)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/165392
益田市 文化財課
https://www.city.masuda.lg.jp/soshikikarasagasu/kyoikuiinkai/bunkazaika/3/3149.html
益田市 歴史文化交流館
https://www.city.masuda.lg.jp/soshikikarasagasu/sangyokeizaibu/kankokoryuka/rekisibunnkakouryuukan/8105.html
文化庁 日本遺産ポータルサイト 構成文化財
https://japan-heritage.bunka.go.jp/ja/culturalproperties/result/5360/
益田市立歴史文化交流館 れきしーな
https://masuda-rekishibunka-rekishieena.com/

最終更新日: 2026.09.02