大正8年に建てられた方一間の鐘楼
清水寺鐘楼は、静岡県静岡市葵区音羽町にある高野山真言宗音羽山清水寺の鐘楼で、大正8年(1919年)の建築、平成12年(2000年)4月28日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。建築面積は27平方メートル。境内にある三つの登録有形文化財のうちもっとも小さいが、細部の密度という点ではもっとも見応えがある。
平面は方一間、四方を吹き放しとする鐘台で、梵鐘は柱と組物だけに囲まれて宙に吊られる。屋根は入母屋造、本瓦葺。
設計は古宇田実。当時は東京美術学校に在職していた。12年後、古宇田は神戸高等工業学校長としてふたたびこの境内に関わり、昭和6年(1931年)の鉄筋コンクリート造本堂と木造の庫裏を手がけている。三棟のなかでもっとも早い時期の作であり、意匠への関心がもっとも自由に現れた建物でもある。
細部にこそ価値がある
登録番号は22-0068、第24回の登録で、告示は平成12年(2000年)5月25日。登録基準は「造形の規範となっているもの」である。文化庁の解説文は意匠について具体的に踏み込んでおり、評価の所在が明瞭に読み取れる。
本柱と間柱の双方に尾垂木付の組物を置き、軒廻りを華やかに構成する。この規模の建物としては密度の高い扱いといえる。妻や虹梁まわりに目を移せば蟇股があり、柱から突き出す横材の先端には木鼻が彫られる。文化庁はこの蟇股と木鼻の意匠にも特色があると記す。
意外なのは隅の処理である。四隅の支柱は木材ではなく青銅の鋳物で、蓮をモチーフとした意匠が施されている。大正期の木造鐘楼に鋳物の支柱を用いること自体が珍しく、それを無地のまま置かずに仏教的な文様で飾った点に、補強材を意匠の一部として引き受けようとする設計者の姿勢がうかがえる。
梵鐘の来歴と、撞ける鐘であること
現在吊られている梵鐘は、この鐘楼のために鋳られたものではない。寺の記録によれば、明治44年(1911年)に静岡市から鐘が納められ、その8年後に鐘楼が建った。市中の時を告げていた分時鐘であったとする説明もある。この鐘は戦時中の金属供出によって失われ、現在の梵鐘は昭和25年(1950年)に復興されたものである。
清水寺の登録有形文化財のうち、参拝者が実際に手を触れられるのはこの鐘楼だけである。大晦日には除夜の鐘が一般に開放され、先着100名が撞くことができる。23時30分から番号札の受付が始まり、法要ののち23時40分ごろから撞き始める。108という数は煩悩の数に対応する。当日は隣接する公園が臨時駐車場として使えるため、駐車場が2台分しかない普段の状況とは事情が異なる。
それ以外の日も、鐘楼は境内に開かれたまま建っており、四方から自由に眺められる。四囲を吹き放しとする構造は、そもそも周囲から見られることを前提にした形である。撮影に制限は設けられていない。交通は静岡鉄道音羽町駅から北へ徒歩約2分、東名高速静岡インターチェンジからは約5キロメートル。
訪問の時期を選ぶなら、7月9日の清水寺観音大祭が最も大きい。夕刻の奉賛行列に続いて奉納花火が上がる。2月3日の節分会、1月1日の修正会も一般開放にあたる。数歩の距離に本堂と庫裏が建ち、静岡県指定有形文化財の観音堂も近い。
Q&A
- 清水寺鐘楼(静岡市)の鐘を撞くことはできますか。
- 大晦日の除夜の鐘で可能です。先着100名まで撞くことができ、23時30分から番号札の受付、法要ののち23時40分ごろから撞き始めます。当日は隣接する公園を臨時駐車場として利用できます。
- 清水寺鐘楼の梵鐘はいつのものですか。
- 現在の梵鐘は昭和25年(1950年)のものです。明治44年(1911年)に静岡市から納められた鐘が先にありましたが、戦時中の金属供出で失われました。鐘楼そのものは大正8年(1919年)の建築です。
- 清水寺鐘楼の見どころはどこですか。
- 本柱と間柱に置かれた尾垂木付の組物、蟇股と木鼻の彫刻、そして青銅鋳物製の隅支柱に施された蓮の意匠です。隅支柱は遠目には見落としやすいので、近づいて確かめてください。
- 清水寺鐘楼はいつ登録有形文化財になりましたか。
- 平成12年(2000年)4月28日に登録され、告示は同年5月25日、登録番号は22-0068です。登録基準は「造形の規範となっているもの」です。
- 清水寺鐘楼への行き方と拝観料を教えてください。
- 拝観料も予約も不要です。静岡鉄道音羽町駅から北へ徒歩約2分で、鐘楼は境内に開かれた状態で建っており四方から見学できます。駐車場は2台分のみ、問い合わせは054-246-9333です。
基本情報
| 名称 | 清水寺鐘楼(きよみずでらしょうろう) |
|---|---|
| 所在地 | 静岡県静岡市葵区音羽町27-8 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号22-0068 |
| 指定年 | 平成12年(2000年)4月28日登録、同年5月25日告示 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋建、瓦葺、建築面積27平方メートル(大正8年建築) |
| 所有者 | 清水寺 |
| 公開状況 | 境内から自由に見学可。大晦日の除夜の鐘は先着100名まで撞鐘可能 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁) 清水寺鐘楼
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00001710
- 国指定文化財等データベース(文化庁) 清水寺本堂
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00001112
- 国指定文化財等データベース(文化庁) 清水寺庫裏
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002546
- しずおか文化財ナビ 清水寺観音堂厨子(静岡県)
- https://www.pref.shizuoka.jp/kankosports/bunkageijutsu/bunkazai/1002825/1041003/1041886/1004975/1021045.html
最終更新日: 2026.08.04