昭和6年、鉄筋コンクリートで建てられた本堂
清水寺本堂は、静岡県静岡市葵区音羽町にある高野山真言宗音羽山清水寺の仏堂で、昭和6年(1931年)の建築、平成11年(1999年)6月7日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。京都東山の清水寺とは別の寺院である。谷津山の西麓という地形が京都の清水寺に似ていたことから、永禄年間の創建時にこの寺号が付けられたと伝わる。地元では「きよみずさん」と呼ばれている。
構造は鉄筋コンクリート造平屋建、建築面積は186平方メートル。設計者は当時神戸高等工業学校長であった古宇田実、施工は東京の島藤が請け負った。
昭和初年の仏堂に鉄筋コンクリートを選んだ理由は、この境内が経てきた被災の歴史と無縁ではないだろう。嘉永7年(1854年)の安政東海地震では境内の堂宇の大半が倒壊あるいは焼失したと伝えられ、その後長く復旧が進まなかった。焼けない、崩れないという素材の性格が、再建にあたって重く働いたと考えられる。
登録の理由と造形上の位置づけ
登録番号は22-0040、第17回の登録である。登録告示は平成11年(1999年)7月19日。文化庁が挙げる登録基準は「造形の規範となっているもの」で、意匠面の評価が登録理由になっている。
評価の中心にあるのは、伝統的な仏堂の構成を非伝統的な材料で組み立てた手つきである。正面は7間、そこに円柱を配する。角柱を用いるのが通例の日本の寺院建築にあって、この選択がまず目を引く。中央3間は二手先の組物を置き、軒を向拝風に切り上げている。木造堂宇であれば向拝として別に架け出す部分を、軒の処理のなかに畳み込んでいるわけである。屋根は切妻造。入母屋造や寄棟造が主流を占める本堂において、切妻屋根はきわめて珍しく、文化庁の解説文もこの点を「特異な形態」として記す。
境内には同じ古宇田実の設計になる建物がほかに2棟ある。昭和6年の庫裏と、大正8年(1919年)の鐘楼で、いずれも登録有形文化財。木造と鉄筋コンクリートという二つの素材を、一人の建築家が同じ境内で扱った例として見ることができる。
見どころと拝観の実際
正面から少し離れて全体を眺めると、円柱の並びが日本の仏堂とも西洋建築とも異なる印象を与える。寺では、歴代の住職が日中文化交流に尽力した経緯から、この堂を「日華親善殿」とも称してきた。地元の紹介文には中国寺院風という説明も見えるが、文化庁の解説にその表現はない。様式の呼び名を一つに定めにくい建物だと理解しておくのがよい。
近づいて組物を見上げてほしい。コンクリートで型取られた斗栱は、木造であれば一材ずつ刻み合わせる部分をひと続きに写し取っており、稜線のわずかな丸みに材料の違いが出ている。
境内は開かれており、日中は自由に歩ける。堂内は寺の法要にあわせて開かれることが多く、年間行事のうち1月1日の修正会、2月3日の節分会、7月9日の清水寺観音大祭、大晦日の除夜の鐘が一般に開放されている。それ以外の日に堂内を見たい場合は、住職不在のこともあるため、054-246-9333へ事前に連絡するとよい。外観の撮影は特に制限されていないが、法要中は控えたい。
交通は静岡鉄道音羽町駅から北へ徒歩約2分。東名高速静岡インターチェンジからは約5キロメートルだが、駐車場は2台分しかないため公共交通機関の利用が現実的である。北隣の清水山公園は桜の名所として知られ、境内には慶長7年(1602年)に徳川家康の寄進によって建立されたと伝わる観音堂(静岡県指定有形文化財)も建つ。
Q&A
- 静岡の清水寺本堂は、京都の清水寺と同じ寺院ですか。
- 別の寺院です。静岡市葵区音羽町にある高野山真言宗の寺院で、地形が京都の清水寺に似ていたことから同じ寺号が付けられたと伝わります。本堂は昭和6年(1931年)建築の鉄筋コンクリート造で、京都の懸造の本堂とは構造も年代も異なります。
- 清水寺本堂は拝観できますか。拝観料は必要ですか。
- 境内は自由に入ることができ、拝観料も予約も不要です。堂内は法要にあわせて開かれ、1月1日、2月3日、7月9日、大晦日が一般開放にあたります。それ以外の日に堂内を希望する場合は054-246-9333へ事前にご連絡ください。
- 清水寺本堂へはどのように行けばよいですか。
- 静岡鉄道音羽町駅から北へ徒歩約2分です。自動車の場合は東名高速静岡インターチェンジから約5キロメートルですが、駐車場は2台分のみのため、公共交通機関の利用が推奨されています。
- 清水寺本堂の設計者は誰ですか。
- 当時神戸高等工業学校長であった古宇田実です。施工は東京の島藤が請け負いました。古宇田は同じ境内の鐘楼(大正8年)と庫裏(昭和6年)も設計しており、鐘楼の設計時は東京美術学校に在職していました。
- 清水寺本堂の写真撮影はできますか。
- 外観の撮影について特段の制限は設けられていません。ただし法要中や参拝者が多い時間帯は配慮が必要です。堂内の撮影可否については、その都度寺務所へお尋ねください。
基本情報
| 名称 | 清水寺本堂(きよみずでらほんどう) |
|---|---|
| 所在地 | 静岡県静岡市葵区音羽町27-8 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号22-0040 |
| 指定年 | 平成11年(1999年)6月7日登録、同年7月19日告示 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 鉄筋コンクリート造平屋建、建築面積186平方メートル(昭和6年建築) |
| 所有者 | 清水寺 |
| 公開状況 | 境内は自由。堂内は法要時に開扉。問い合わせは054-246-9333 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁) 清水寺本堂
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00001112
- 文化遺産オンライン 清水寺本堂
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/166422
- 国指定文化財等データベース(文化庁) 清水寺庫裏
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00002546
- しずおか文化財ナビ 清水寺観音堂(静岡県)
- https://www.pref.shizuoka.jp/kankosports/bunkageijutsu/bunkazai/1002825/1041003/1041886/1004975/1021042.html
最終更新日: 2026.08.04