足利の水道で最も小さな要

緑町配水場接合井は、栃木県足利市緑町1-3780にある昭和5年(1930年)築の鉄筋コンクリート造工作物で、平成18年(2006年)3月2日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。登録番号は09-0135である。

位置は敷地の西南隅、配水池のすぐ南に隣接する。面積43.47㎡。足利市に5棟ある登録水道施設のうち最も小さく、写真に撮られることも少ないが、系統上はここが要になる。

接合井とは、圧送されてきた水を受け、次の施設へ渡すための槽をいう。西の低地にある今福浄水場では、集水埋渠が河床砂礫層の地下水を集める。登録有形文化財のポンプ室に据えられた7台のポンプが24時間の交互自動運転でこれを汲み上げ、丘の上へ圧送する。その圧送はこの建物で終わる。受けた水は数メートル北の配水池へ送られ、そこから先は自然流下で市街へ下っていく。上流側は機械が動かし、下流側は動かさない。その切り替え点に立つのが接合井である。

四周に巡らされた半円アーチ

上屋は鉄筋コンクリート造の平屋、陸屋根で、外壁は細石の洗い出し仕上げとする。同じ敷地の水位計室や計量室と共通の仕様である。四周には半円アーチが配される。足利市はこの意匠をゼツェッション風と説明する。ウィーン分離派に由来する幾何学的でやや硬質な造形は、戦間期の日本の公共土木建築に広く影響を残した。

丘の上の小構造物をまとめて眺めると、共通点はすぐに分かる。陸屋根、洗い出しの壁面、隅の柱形、階段状に張り出す軒蛇腹。設計は明らかに一体で扱われている。中継槽も、水位計の小屋も、わずか4㎡の計量室も、同じ語彙で組み立てるという判断が下されていた。土木施設としては珍しい選択で、この施設群が登録に値するとされた理由の一つでもある。

接合井には一室が接続する。ただし呼称は資料によって割れる。文化庁のデータベースは東側に接続する塩素滅菌室と記す。足利市上下水道部のページは左側に接続する残塩計室とし、市教育委員会文化課のページは旧塩素殺菌室と表記する。消毒方式の変遷にともなって室の役割と呼び名が読み替えられてきた結果とみられ、この地点で処理関係の作業が行われていた点については各資料とも一致する。

中継槽が文化財になった理由

登録の基準は第一、国土の歴史的景観に寄与しているものである。足利は織物の町で、清浄な水の確保は産業と生活の双方を支える条件だった。全国的にみても早い時期の敷設で、今福浄水場とともに昭和5年に竣工し、以来止まることなく稼働を続けている。令和7年(2025年)の地元紙の報道は稼働期間を約95年と伝えた。

見学について。緑町配水場は現役の水道施設であり、足利市は通常非公開としている。接合井は内部に立ち入れる建物ではない。公開は市が随時実施する特別公開の機会に限られ、文化財としての見学に関する問い合わせ先は足利市教育委員会事務局文化課である。撮影可否の規定は公表されていないので、公開日に現地で尋ねるのが確実である。所在地は足利公園の北側の丘の上。JR足利駅・東武足利市駅から徒歩30分ほど、タクシーなら10分足らずで、丘の東側には渡良瀬川を望む視界が開ける。

隣接するのは北の配水池、敷地東北隅にある昭和5年築の旧事務所(現・水道山記念館)、そして4㎡の計量室。これに今福浄水場ポンプ室を加えた5棟が同日付で登録されている。

Q&A

Q緑町配水場接合井はどのような役割を果たす施設ですか。
A今福浄水場から圧送されてきた水を受け、隣接する配水池へ送る中継施設です。ポンプによる送水はここで終わり、配水池から先は高低差による自然流下で各家庭へ届きます。
Q緑町配水場接合井は見学できますか。
A通常は見学できません。緑町配水場が稼働中の施設のため、足利市は通常非公開としています。市が実施する特別公開の機会に限られ、問い合わせ先は足利市教育委員会事務局文化課です。
Q緑町配水場接合井はいつ造られ、いつ登録されましたか。
A北隣の配水池と同じ昭和5年(1930年)の築造です。登録有形文化財としての登録年月日は平成18年(2006年)3月2日、告示は同年3月23日、登録番号は09-0135です。
Q緑町配水場接合井の意匠にはどのような特徴がありますか。
A鉄筋コンクリート造の平屋、陸屋根、細石洗い出し仕上げで、四周に半円アーチを配します。足利市はゼツェッション風と説明しており、同じ敷地の水位計室や計量室とも共通した扱いです。
Q緑町配水場接合井に接続している部屋は何ですか。
A資料により呼称が分かれます。文化庁は東側に接続する塩素滅菌室とし、足利市は残塩計室、あるいは旧塩素殺菌室と記しています。消毒に関わる作業がこの地点で行われていた点は各資料に共通します。

基本データ

名称緑町配水場接合井
所在地栃木県足利市緑町1-3780
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録番号 09-0135
指定年平成18年(2006年)3月2日登録、同年3月23日告示
員数1基
寸法鉄筋コンクリート造、面積43㎡(足利市資料では43.47㎡)、塩素滅菌室付。昭和5年築
所有者足利市水道事業者
公開状況通常非公開(特別公開日のみ)

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「緑町配水場接合井」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00005240
文化遺産オンライン「緑町配水場接合井」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/141008
足利市「水道施設の国登録有形文化財について」
https://www.city.ashikaga.tochigi.jp/urban/000070/000943/p003271.html
足利市「緑町配水場 水道山記念館(旧事務所)・配水池・接合井・計量室」
https://www.city.ashikaga.tochigi.jp/education/000029/000169/000627/p000937.html

最終更新日: 2026.08.05