芝生の下に沈む配水池
緑町配水場配水池は、栃木県足利市緑町1-3780にある鉄筋コンクリート造の配水池で、昭和5年(1930年)12月に竣工し、平成18年(2006年)3月2日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。登録番号は09-0134である。
広さは約60m×27m、面積1,606.73㎡。それだけの規模がありながら、足利公園の頂部の地中に埋設され、上部は芝生で緑化されている。公園の景観に合わせた処置で、訪れた人の多くは構造物の上を歩いていることに気づかない。地表に現れるのは、東側にほぼ左右対称に配された2棟の小さなコンクリート建築だけである。
通水は翌昭和6年(1931年)4月。仕組みは当時からほとんど変わっていない。西側の低地にある今福浄水場が集水埋渠で地下水を集め、ポンプで丘の上まで圧送する。水はこの池に溜められ、そこから先はポンプを使わない。水位標高72.4mから76.0mという高低差による自然流下だけで各家庭へ届く。動力を担っているのは丘そのものである。
3池に区切られた内部と、増築の経緯
内部は3池に区切られる。この数は当初からのものではない。創設時の容量は120,000立方尺、約3,340㎥だった。着工当時の足利市の人口はおよそ43,000人、第1期の予定給水人口は55,000人である。戦後の需要はこれを上回った。旧配水池の北東側に隣接してもう1基が増築され、現在は1,700㎥×3池の全容量5,100㎥、水深3.6mとなっている。
増築時期については資料に幅がある。文化庁のデータベースは「昭和30頃増築」と記し、足利市は水道部資料に基づき昭和28年から31年にかけてと説明する。市はまたこの工事を昭和28年から33年の第1次拡張事業のうちに位置づけている。いずれも昭和20年代末から30年代初頭という点では一致しており、幅は数年である。
芝生の上に頭を出す2棟は、水位計室と保守・点検入口棟。ともに重厚な意匠をもち、日本の建築記述では一般にゼツェッション風と呼ばれる。ウィーン分離派の造形語彙が大正期に流入し、公共土木の分野では欧州で流行が去った後も長く残った、その系譜にある。6角の平面をとり、各隅に柱形をつくる。軒蛇腹より上には目地を見せたパラペットが立ち上がる。用途からいえば計測と点検のための小屋にすぎないが、扱いは記念碑のそれに近い。昭和5年の地方都市が水道に何を託していたかが、この過剰さに出ている。
2枚の石版と、見学の実際
保守・点検入口棟の西側には『源泉混々』と刻んだ石版がある。水源から水が尽きることなく湧く様を表した言葉で、水道創設事業の竣工にあたり当時の市長・大給新が題した。水位計室の西側にはもう1枚、『清澄無比』。地下水を水源とする足利の水の清らかさを讃えた語で、第1次拡張事業の竣工に伴い当時の市長・木村浅七が書いている。創設と拡張、四半世紀を隔てた2つの節目の記録が、30mほどの間隔をおいて並ぶ。
見学については注意が必要である。緑町配水場は稼働中の水道施設で、足利市は通常非公開としている。立ち入りを伴う見学は市が実施する特別公開の機会に限られ、開催情報は市の文化財関連ページで告知される。問い合わせ先は足利市教育委員会事務局文化課、施設そのものについては上下水道部の担当課である。撮影可否の規定は公表されていないため、公開日に現地で確認したい。
丘は古墳を含む足利公園と連続しており、JR足利駅・東武足利市駅のいずれからも徒歩30分ほど、タクシーで10分足らず。渡良瀬川と渡良瀬橋を望む東側の眺望は、丘まで登れば誰でも得られる。同じ敷地には登録有形文化財の旧事務所(水道山記念館)、接合井、わずか4㎡の計量室が残り、今福浄水場ポンプ室を加えた5棟が同日付で登録された。
Q&A
- 緑町配水場配水池は見学できますか。
- 配水池自体は地中に埋設され上部が芝生になっているため、内部に入る形の見学はできません。緑町配水場は現役施設のため足利市も通常非公開としており、地上の2棟を近くで見られるのは市の特別公開の機会に限られます。
- 緑町配水場配水池の規模と貯水量はどれくらいですか。
- 面積1,606.73㎡、広さは約60m×27mです。内部は3池に区切られ、1,700㎥×3池で全容量5,100㎥、水深3.6m。昭和5年(1930年)の創設時は約3,340㎥でした。
- 緑町配水場配水池はいつ造られ、いつ登録されましたか。
- 昭和5年(1930年)12月竣工、翌6年4月から配水を開始しました。登録有形文化財としての登録は平成18年(2006年)3月2日、告示は同年3月23日、登録番号は09-0134です。
- 緑町配水場配水池の上に建つ2棟は何ですか。
- 水位計室と保守・点検入口棟で、配水池の東側にほぼ左右対称に配されています。6角平面の各隅に柱形をつくり、軒蛇腹より上に目地付のパラペットを立ち上げた、ゼツェッション風の意匠です。
- 緑町配水場配水池から水はどのように各家庭へ届きますか。
- 今福浄水場で集水した地下水をポンプで丘の上のこの池まで送り、そこから先は高低差による自然流下で市内に配水します。昭和6年(1931年)の通水以来続く方式です。
基本データ
| 名称 | 緑町配水場配水池 |
|---|---|
| 所在地 | 栃木県足利市緑町1-3780 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物)/登録番号 09-0134 |
| 指定年 | 平成18年(2006年)3月2日登録、同年3月23日告示 |
| 員数 | 1基 |
| 寸法 | 鉄筋コンクリート造、面積1,606.73㎡(約60m×27m)、水位計室及び保守点検入口棟付。昭和5年12月竣工、昭和20年代末から30年代初頭に増築 |
| 所有者 | 足利市水道事業者 |
| 公開状況 | 通常非公開(特別公開日のみ) |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「緑町配水場配水池」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00005239
- 足利市「水道施設の国登録有形文化財について」
- https://www.city.ashikaga.tochigi.jp/urban/000070/000943/p003271.html
- 足利市「緑町配水場 水道山記念館(旧事務所)・配水池・接合井・計量室」
- https://www.city.ashikaga.tochigi.jp/education/000029/000169/000627/p000937.html
- 足利市「水道施設の概要」
- https://www.city.ashikaga.tochigi.jp/living/000021/000142/000585/p003291.html
最終更新日: 2026.08.05