高木会館:大正時代の石造銀行建築が蘇る黒磯のランドマーク
栃木県那須塩原市のJR黒磯駅近くに佇む高木会館は、大正7年(1918年)に建てられた重厚な二階建ての石造建築です。黒磯で初めて設立された銀行「黒磯銀行」の本店として建てられたこの建物は、現在は国の登録有形文化財として保護されており、地域を象徴するランドマークとして親しまれています。
堅牢な石壁、優美な半円アーチ、そして丁寧に造り込まれた内部の意匠は、急速に近代化が進んだ大正時代の地方都市の息吹を今に伝えています。現在は1階がレストランとして活用されており、どなたでも気軽に歴史的建築の内部を体験することができます。
歴史的背景
黒磯銀行は、日本全国で経済成長と都市化が進んだ大正時代の大正7年(1918年)9月に開業しました。頭取を務めたのは、黒磯駅前を拠点とする地元の実業家・高木慶三郎です。特筆すべきことに、この建物の設計も高木慶三郎自身が手掛けており、オーナーならではのこだわりが随所に見て取れます。
建物が石造りで建てられた背景には、切実な事情がありました。黒磯駅前一帯は明治時代から大火が相次いでおり、特に昭和6年(1931年)の大火では140戸もの建物が焼失するほどの被害を受けました。高木会館の石造りはまさにこうした火災への備えとして計画されたもので、実際に昭和6年の大火の際にも焼失を免れています。
黒磯銀行は昭和10年(1935年)に銀行業務を終了し、黒磯興業株式会社として昭和25年(1950年)まで営業しました。その後は高木一族の集会所として使用されるようになり、「高木会館」の名で呼ばれるようになりました。平成14年(2002年)6月25日、その建築的・歴史的価値が認められ、国の登録有形文化財に登録されています。
文化財指定の理由
高木会館は、黒磯初の銀行本店建築であり、地域の商業発展を物語る重要な建造物です。大正時代の石造建築として、和洋折衷の意匠を巧みに取り入れた点が高く評価されています。
正面に地元産の芦野石、その他の壁面に大谷石を使用した構造は、栃木県の石造建築の伝統を体現しています。一方、櫛形風のペディメントやアーチ型の装飾といった西洋的な意匠は、大正時代の国際的な志向を反映しています。重厚な石積みを基調としながらも軽快な装飾を備えたこの建物は、黒磯の町並みにおけるシンボル的存在として評価されています。
建築の見どころ
高木会館の外観は、堂々とした石壁がまず目を引きます。正面の外壁には那須の芦野地区で産出される芦野石(凝灰岩)が、側面と背面の壁には宇都宮近郊で採れる大谷石が使われています。これらの石材が醸し出す重厚感は、栃木県の石造建築の伝統を象徴するものです。
ファサードで最も目を引くのは、2階の窓の上部に並ぶ4つの半円アーチです。そのさらに上方には黒磯銀行の社章が浮き彫りにされ、「THE KUROISO BANK LTD.」の英文字が刻まれています。大正時代の地方銀行が国際的な志を持っていたことを伝える、趣深いディテールです。屋根のラインには櫛形風ペディメントが設けられ、重厚な石造外観に軽やかなアクセントを添えています。
内部に入ると、格調高い格天井(ごうてんじょう)を鑑賞することができます。格天井は格式の高い日本建築に見られる天井様式で、建物の品格を際立たせています。また、幅約90センチメートルの回り階段も当時のまま残されており、大正時代の金融機関にふさわしい威厳ある空間を今に伝えています。
屋根はもともと瓦葺きでしたが、平成23年(2011年)3月の東日本大震災で被災したため、ガルバリウム鋼板に葺き替えられました。屋根材は変更されましたが、建物全体の佇まいや均整のとれたプロポーションは創建当時の姿を忠実に伝えています。
訪問のご案内
現在、高木会館の1階は「カフェ・ド・グランボワ」というレストランとして営業しており、どなたでも気軽に入店して歴史的建築の内部を体験することができます。かつての銀行の石壁と大正時代の意匠に囲まれた空間でのお食事は、建築愛好家だけでなく、グルメを楽しむ方にとっても格別の体験となるでしょう。
建物はJR東北本線(宇都宮線)黒磯駅から徒歩圏内にあります。東京方面からは、東北新幹線で那須塩原駅まで約75分、そこからJR在来線で一駅の黒磯駅で下車します。黒磯駅周辺は近年おしゃれなカフェやベーカリー、雑貨店が次々とオープンし、注目を集めるエリアとなっています。高木会館はそうした散策の起点としても最適です。
周辺情報
黒磯エリアには、高木会館の見学と合わせて楽しめるスポットが数多くあります。駅から徒歩約10分の高砂町エリアには、この地のカフェブームの火付け役となった「SHOZO COFFEE 黒磯本店」をはじめ、アンティークショップや雑貨店、ニットアトリエなど個性豊かな店舗が集まっています。
黒磯駅の目の前には、建築的にも注目される「那須塩原市図書館 みるる」があり、カフェやギャラリーを併設した市民交流の場として誰でも利用できます。近くの黒磯神社は緑豊かな境内で静かに参拝でき、黒磯公園は桜の名所として知られ、階段を下ると那珂川河畔公園へとつながっています。
さらに足を延ばせば、板室温泉での湯治、明治時代の洋館として国の重要文化財に指定されている旧青木家那須別邸の見学、那須高原でのハイキングや温泉巡りなど、豊かな自然と歴史に触れる体験が待っています。
Q&A
- 高木会館はもともと何の建物だったのですか?
- 大正7年(1918年)に、黒磯で初めて設立された「黒磯銀行」の本店として建てられました。頭取であり設計者でもある高木慶三郎が自ら手掛けた建物です。
- なぜ石造りで建てられたのですか?
- 黒磯駅前一帯は明治時代から大火が相次いでおり、耐火性に優れた石造建築として計画されました。正面には芦野石、その他の壁面には大谷石が使われています。昭和6年(1931年)に140戸を焼失した大火の際にもこの建物は無事でした。
- 建物の内部を見学できますか?
- はい。現在1階は「カフェ・ド・グランボワ」というレストランとして営業しているため、どなたでも入店可能です。食事をしながら、格天井や幅90センチメートルの回り階段など大正時代の意匠をご覧いただけます。
- 東京からのアクセスを教えてください。
- 東京駅から東北新幹線で那須塩原駅まで約75分、そこからJR東北本線(宇都宮線)で1駅の黒磯駅で下車してください。高木会館は黒磯駅から徒歩圏内にあります。
- どのような文化財指定を受けていますか?
- 平成14年(2002年)6月25日に、国の登録有形文化財(建造物)に登録されています。大正時代の石造商業建築として、また黒磯の町並みを象徴するランドマークとしての価値が認められたものです。
基本情報
| 名称 | 高木会館(たかぎかいかん) |
|---|---|
| 旧称 | 黒磯銀行本店 |
| 所在地 | 栃木県那須塩原市本町5-19 |
| 竣工 | 大正7年(1918年) |
| 設計 | 高木慶三郎(オーナー・頭取) |
| 構造 | 石造2階建、切妻造、建築面積約116㎡ |
| 使用石材 | 正面:芦野石、その他:大谷石 |
| 文化財指定 | 国登録有形文化財(建造物)/平成14年(2002年)6月25日登録 |
| 現在の用途 | レストラン(カフェ・ド・グランボワ)※1階 |
| アクセス | JR東北本線(宇都宮線)黒磯駅より徒歩すぐ |
参考文献
- 高木会館 – 那須塩原市公式ウェブサイト
- https://www.city.nasushiobara.tochigi.jp/soshikikarasagasu/shogaigakushuka/bunkazai/2/6/2588.html
- 高木会館 – 文化遺産オンライン
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/115634
- 高木会館(旧黒磯銀行本店)– ニッポン旅マガジン
- https://tabi-mag.jp/tg0181/
- 高木会館 – ココシル那須塩原
- https://nasushiobara.kokosil.net/ja/place/00001c000000000000020000002901ab
- 国指定文化財等データベース – 文化庁
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00002754
最終更新日: 2026.04.02