丈六寺三門 ― 徳島県下で最も古い建造物
徳島市南部、勝浦川の東岸に近い丈六町に、徳島県でいちばん古い建物が残っている。曹洞宗の名刹・丈六寺の三門である。三間三戸の二階二重門で、正面に三つの通路が開き、上下それぞれの階に屋根をいただく。建てられた正確な年は棟札や寺の記録にも見えないが、国指定文化財等データベースは室町後期、西暦でいえば1467年から1572年の間と記している。
門は東を向き、川の方角から伸びる参道に正面をひらく。上下の屋根はともに入母屋造で、丸瓦と平瓦を交互に葺く本瓦葺。総門、中門と二つの門をくぐった先に建つため、この三門は境内の入口というより、内庭への境目に立っている。
指定の理由
丈六寺三門が国の重要文化財に指定されたのは、昭和28年(1953年)3月31日。員数は1棟で、附(つけたり)として棟札1枚が同じ指定に含まれる。昭和32年(1957年)には解体修理が行われた。木造建築の傷んだ部材を取り替えながら、もとの形をできるだけ保つための、日本で標準的な保存の手法である。
価値の核にあるのは、古さと希少さだ。年代の判明する建物として県内最古であり、中世の寺院建築を伝える徳島の代表例といってよい。15世紀から16世紀にさかのぼるこれだけの規模の二重門は四国でも数が少なく、地方の禅寺にこうした門が残っている点に重みがある。丈六寺は室町中期の長享・延徳年間(1487〜1491年頃)、阿波・三河・讃岐の守護大名であった細川成之が曹洞宗の寺として中興したもので、三門もその時代の整備に連なる遺構と考えられている。
見どころ
三門の魅力は、見上げたところにある。中央の通路に立って上層を仰ぐと、軒を支える組物、あらわになった垂木、柱間を渡す太い梁が頭上に広がる。二重門は一般の楼門と違い、下層の屋根が裳階ではなく本来の屋根になっている。そのぶん建物に層を重ねたような縦の存在感が生まれる。
門までの道のりも見どころのうちだ。県道脇の総門(高麗門)をまず抜け、続いて中門をくぐると、参道の正面に三門が現れる。この道の両側にはモミジが植わる。晩秋には参道が赤く染まり、その色を背にした三門が最も写真に収められる季節になる。
瓦の表情にも目をとめたい。深い軒と、灰色に古びた本瓦葺の屋根は、朝と午後とで光の当たり方が変わる。東を向いた正面は、朝の早い日差しを受ける。
境内のほかの文化財と周辺
丈六寺は、ひとつの境内に指定建造物が集まることから「阿波の法隆寺」とも呼ばれる。門をくぐると、伽藍は中庭を囲むように配されている。三門と向かい合う本堂は、寛永6年(1629年)に徳島藩主・蜂須賀家政が方丈として再建したもので、本堂と呼ばれるようになったのは後年のこと。中庭の左手には、いずれも重要文化財の観音堂と経蔵が建つ。
寺の名は本尊に由来する。丈六の大きさにつくられた木造聖観音坐像で、平安後期の作、なだらかな定朝様の像高約3.1メートル。観音堂の覗き穴から拝むことができる。
もうひとつ、暗い歴史をもつ場所がある。天正9年(1581年)、四国統一を進める長宗我部元親が、和議を口実に地元の城主・新開道善をこの寺の酒宴に招き、主従を討ち取った。血のついた縁板はのちに徳雲院前の回廊の天井板として再利用され、寺はこの「血天井」で知られる。なお庭園は通常非公開である。
寺は勝浦川の東岸、小松島市との境に近い徳島市南部にある。市の中心部からは、阿波おどり会館や眉山ロープウェイのある一帯までおよそ7キロ。市内観光に半日ほど足し込むのにちょうどよい距離だ。
Q&A
- 三門はどのくらい古く、くぐって通れますか。
- 室町後期(1467〜1572年の間)の建立で、徳島県内で現存する最古の建物です。参道は門の真下を通るため、中央の通路をくぐって境内に入ります。上層は公開されていません。
- なぜ「丈六寺」という名前なのですか。
- 「丈六」は仏像の高さを表す伝統的な尺度です。この寺の本尊が、その大きさにつくられた木造聖観音坐像であることから、寺名となりました。
- 「血天井」とは何ですか。
- 天正9年(1581年)に地元の城主主従がこの寺で討たれた際、血のついた縁板を徳雲院前の回廊の天井板に転用したものです。手形や足形のような赤い跡が今も認められます。
- どうやって行けばよいですか。
- 徳島駅から島バスの丈六方面に乗り、「丈六北」「丈六寺南」「丈六団地」のいずれかで下車、徒歩5〜10分です。JR牟岐線・中田駅からは約3キロです。
- 拝観料はかかりますか。
- 門のそばに維持のための協力金箱があり、境内に入る際の目安は300円ほどです。拝観時間や各堂への立ち入りは変わることがあるので、事前に確認してください。
基本データ
| 名称 | 丈六寺三門(じょうろくじさんもん) |
|---|---|
| 所在地 | 徳島県徳島市丈六町 |
| 指定区分 | 重要文化財(昭和28年〈1953年〉3月31日指定) |
| 員数 | 1棟(附 棟札1枚) |
| 時代 | 室町後期(1467〜1572年) |
| 構造 | 三間三戸二階二重門、入母屋造、本瓦葺、東面 |
| 所有者 | 丈六寺 |
| アクセス | 徳島駅から島バスで丈六方面、各バス停より徒歩5〜10分 |
| 備考 | 昭和32年(1957年)解体修理。拝観は協力金制。庭園は通常非公開。 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/3246
- 文化遺産オンライン ― 丈六寺三門
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/191083
- 丈六寺(ウィキペディア日本語版)
- https://ja.wikipedia.org/wiki/丈六寺
最終更新日: 2026.06.04