高層ビルの再開発に、昭和7年の庁舎が残された
旧文部省庁舎(きゅうもんぶしょうちょうしゃ)は、東京都千代田区霞が関三丁目にある昭和7年(1932年)建築の鉄骨鉄筋コンクリート造6階建の官公庁舎で、平成19年(2007年)10月2日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。所有は現在も文部科学省で、中央合同庁舎第7号館の保存棟にあたる。
霞が関の建物の多くは平成以降に建て替えられている。この庁舎は違う。大正12年(1923年)の関東大震災のあと、焼失した各官庁の建物を復興する事業のなかで、霞が関官庁街整備計画の第2期にあわせて建てられた一棟である。警視庁庁舎や旧内務省庁舎も同じ流れのなかで生まれた。設計はいずれも大蔵省営繕管財局。戦前の国の営繕を一手に引き受けた組織で、施工は大林組が担当した。
建設年代の根拠がはっきりしている点も、この建物の特徴である。文化庁は建設年代を「棟札の『昭和七年三月十六日』による」と明記している。一方、文部科学省の来館者向け資料は昭和8年(1933年)創建と説明しており、こちらは竣工の年を指しているとみられる。二つの年が併存しているが、国のデータベースは棟札に従っている。
平成20年(2008年)1月、文部科学省の主要部局は隣接する新築の東館(霞が関コモンゲート東館)へ移転した。再開発にあたって旧庁舎は取り壊されず、高層棟に囲まれる形で残された。現在は文化庁やその関連団体などが入居し、内部の一部が一般公開されている。
登録が評価しているのは、立面である
適用された登録基準は「造形の規範となっているもの」。文化庁の登録説明は、この建物を「霞が関官庁街における震災復興庁舎の好例」と位置づけている。
正面に立って立面を見上げると、評価の理由が読み取れる。外壁はスクラッチタイル貼。表面に縦の筋を入れた焼き物のタイルで、戦間期の日本の公共建築を席巻した材料である。艶のないざらついた面が、低い角度の光を拾う。
その面に、正方形に近い大きな窓が規則正しく並ぶ。昭和初期の事務所建築としてはかなり大きな開口で、柱と梁の骨組みが外壁を通して読み取れるように配されている。ところが正面玄関の上だけは扱いが変わり、開口部がまとめられて垂直性を強調する意匠となる。視線が建物の高さ方向へ引き上げられる仕掛けである。細部にはアール・デコ調の装飾も見られる。
登録対象は1棟。鉄骨鉄筋コンクリート造6階建、塔屋付、建築面積3,043平方メートル。内部の仕上げはモルタル吹付けやリノリウム床など簡素で実用的なもので、儀礼のための建物ではなく執務のための建物だという性格がそのまま出ている。登録番号は13-0216、第56回登録で、官報告示は同年10月22日付である。
訪問前に、公開状況の確認を
建物の一部は「文部科学省 情報ひろば」として一般に開放されている。平成20年の庁舎移転を機に整備された展示・情報発信スペースで、目玉は3階の旧大臣室。創建当時の姿に復原され、歴代大臣が実際に執務に使った椅子や机が置かれている。ほかに教育、科学技術・学術、スポーツ、文化の各展示室があり、入館料は無料である。
ただし、本稿執筆時点で重要な注意がある。「情報ひろば」の3階展示室および1階ラウンジは当分の間、臨時休館となっており、再開の時期は公表されていない。休館中もエントランスでの企画展示は継続して行われている。旧大臣室を目当てに足を運ぶ場合は、出発直前に文部科学省の「情報ひろば」のページで最新の状況を確認してほしい。
通常時の開館時間は月曜日から金曜日の10時から18時で、入館は閉館の30分前まで。土曜・日曜・祝日と年末年始は休館となる。入構のための特別な手続きは不要で、展示室内の写真撮影は個人利用の範囲であれば可能だが、撮影した画像を営利目的で複写・配布することは禁じられている。バスを含め、来館者用の駐車場は用意されていない。
アクセスは東京メトロ銀座線・虎ノ門駅の11番出口が建物に直結している。千代田線・霞ケ関駅のA13出口からは徒歩約5分。展示室が閉まっていても外観はいつでも公道から見られる。スクラッチタイルの塊と背後のガラスの高層棟が並ぶ対比が、この場所で最も撮りやすい構図だろう。徒歩圏には法務省法務史料展示室など、他省庁の展示施設も点在している。
Q&A
- 旧文部省庁舎の内部は見学できますか。入館料はかかりますか。
- 建物の一部が「文部科学省 情報ひろば」として無料公開されています。通常は平日10時から18時の開館で、入構手続きは不要です。ただし本稿執筆時点で3階展示室と1階ラウンジは臨時休館中であり、再開時期は未公表です。訪問前に文部科学省の公式ページで確認してください。
- 旧文部省庁舎はいつ建てられ、誰が設計したのですか。
- 文化庁は建設年代を昭和7年(1932年)とし、その根拠を棟札の「昭和七年三月十六日」としています。文部科学省の資料は昭和8年(1933年)創建と説明しており、こちらは竣工年を指すとみられます。設計は大蔵省営繕管財局、施工は大林組です。
- 旧文部省庁舎の旧大臣室は見られますか。
- 3階の旧大臣室は創建当時の姿に復原され、歴代大臣が使用した椅子や机とともに保存されており、通常は「情報ひろば」の一部として公開されています。現在は臨時休館の対象区域に含まれます。なお事前申込の団体見学では、大臣が実際に使った椅子に座れる場合があります。
- 旧文部省庁舎へのアクセス方法を教えてください。
- 東京メトロ銀座線・虎ノ門駅の11番出口が建物に直結しています。千代田線・霞ケ関駅のA13出口からは徒歩約5分です。バスを含め来館者用の駐車場はありません。
- 旧文部省庁舎の外観で注目すべき点はどこですか。
- スクラッチタイル貼の外壁、正方形に近い大きな窓が規則的に並ぶ立面構成、そして正面玄関の上部で垂直性を強調した意匠の三点です。柱梁の骨組みが外壁を通して読み取れる点も見どころで、細部にはアール・デコ調の装飾が見られます。外観の撮影は公道からであれば自由です。
基本情報
| 名称 | 旧文部省庁舎(きゅうもんぶしょうちょうしゃ) |
|---|---|
| 所在地 | 東京都千代田区霞が関3-2-2 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) 登録番号 13-0216 |
| 指定年 | 平成19年(2007年)10月2日登録(第56回) 官報告示は同年10月22日 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 鉄骨鉄筋コンクリート造6階建、建築面積3,043平方メートル、塔屋付 |
| 所有者 | 文部科学省 |
| 公開状況 | 一部が「文部科学省 情報ひろば」として無料公開。通常は平日10時〜18時(入館は30分前まで)、土日祝・年末年始休館。本稿執筆時点で3階展示室と1階ラウンジは臨時休館中のため、訪問前に確認が必要 |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース「旧文部省庁舎」
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00006238
- 文化庁「登録有形文化財『旧文部省庁舎』の御案内」
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/kyu_monbusho_chosha.html
- 文化遺産オンライン「旧文部省庁舎」
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/171542
- 文部科学省 情報ひろば「御利用・交通案内」
- https://www.mext.go.jp/joho-hiroba/access/index.htm
- 文部科学省 情報ひろば「常設展示」
- https://www.mext.go.jp/joho-hiroba/regular/index.htm
最終更新日: 2026.08.22