山を下りてきた農家

旧宮崎家住宅は、東京都青梅市駒木町の青梅市郷土博物館構内にある江戸時代末期の農家建築で、昭和53年(1978年)1月21日に国の重要文化財に指定された。ただし現在地は建てられた場所ではない。もとは北小曾木村、いまの青梅市成木8丁目夕倉地区にあった。多摩川べりの釜の淵公園に移ってきたのは、昭和52年(1977年)に所有者から青梅市へ寄贈されたあとのことである。

移築復元工事は昭和53年(1978年)4月から昭和54年(1979年)6月まで、1年2か月を要した。木造軸組の建物は継手と仕口で分解できるようにつくられているから、この種の移築は建物を持ち上げて運ぶのではなく、部材に還してから組み直す作業になる。

運ばれてきたのは、ごく普通の家である。城主の屋敷でも、僧坊でも、豪商の店構えでもない。文化庁の分類でも「近世以前/民家」に置かれている。価値はその普通さのほうにある。江戸の西の山あいで農家がどう暮らしていたか、この建物は後世の改変が少ないままに見せてくれる。

目立たない家がなぜ守られたのか

規模は小さい。桁行12.4メートル、梁間7.0メートル。屋根は入母屋造の茅葺で、東面に庇が付き、北面には杉皮葺の下屋が付属する。文化庁は年代を19世紀中頃、時代区分を江戸末期としている。

間取りは三間取広間型と呼ばれる形式である。土間に接した広間を生活の中心に据え、その奥や脇に小部屋を配する構成で、のちに広まる整然とした四間取りより古い層に属する。これが首都圏の内側にほぼ手つかずで残っていた点が評価された。指定にあたっての解説文は、東京都から埼玉県にかけての民家の分布を知るうえで重要な遺例だと述べている。

年代についてはひとつ注記が要る。青梅市は建築様式から19世紀初頭の建築と説明しているのに対し、文化庁のデータベースは19世紀中頃としている。棟札も墨書も確認されておらず、どちらも様式判断による推定である。見学の妨げになる違いではないが、調べ物で数字を引く場合は国のデータベースに拠るのが安全だろう。

屋根を見るための建物

南側から少し離れて葺き材を眺めてほしい。青梅周辺の職人は茅だけで葺かなかった。杉皮を茅のあいだに交互に差し込んで葺き上げる。この地方独特のやり方で、北面の下屋にいたっては杉皮葺が構造の記載事項として国の記録に別立てで載っている。杉皮は茅と水の切れ方が違い、経年で色も濃く沈むので、光が斜めに当たる時間帯には屋根面が縞に見える。

内部も公開されており、いろりに火が入っていることが多い。あれは演出ではない。煙は茅の裏側を燻して防虫と防腐に働く。この家が保存に値するだけの状態で残ったのも、火を絶やさない暮らしが続いたからである。室内には農具や民具が置かれている。

入館は無料。開館時間は夏季が午前10時から午後5時まで、冬季は午後4時まで。休館日は月曜日と年末年始で、月曜日が祝祭日にあたる場合は公開し、翌平日が休みになる。撮影は個人利用の範囲であればおおむね差し支えないが、案内の方が常駐していることが多いので一声かけたい。隣接する青梅市郷土博物館は館内設備の老朽化のため令和7年(2025年)4月1日から休館しているが、青梅市は旧宮崎家住宅を通常どおり公開すると案内している。

都心からは1時間半ほど。JR青梅線青梅駅から徒歩約15分、または都バス梅77系統「駒木町循環」で郷土博物館入口下車、徒歩約5分。釜の淵公園には無料駐車場がある。すぐ下を多摩川が流れ、秋には河畔の紅葉が色づくので、行き帰りの道もゆっくり歩きたい。

Q&A

Q旧宮崎家住宅は見学できますか。入館料と開館時間は。
A内部を含めて一般公開されており、入館は無料です。開館時間は夏季が午前10時から午後5時まで、冬季は午前10時から午後4時まで。休館日は月曜日と年末年始で、月曜日が祝祭日の場合は公開し翌平日が休館となります。
Q旧宮崎家住宅はもともとどこにあったのですか。
A青梅市北部の山あい、北小曾木村(現在の青梅市成木8丁目夕倉地区)にありました。昭和52年(1977年)に所有者から青梅市へ寄贈され、昭和53年(1978年)4月から昭和54年(1979年)6月にかけて現在地へ移築復元されています。
Q旧宮崎家住宅の屋根はどこが珍しいのですか。
Aこの地方特有の葺き方で、杉皮と茅を交互に混ぜて葺いています。北面に付く下屋は杉皮葺です。光の角度によっては、地上からでも屋根面が縞状に見えます。
Q旧宮崎家住宅へは青梅駅からどう行けばよいですか。
AJR青梅線青梅駅から徒歩約15分です。バスの場合は都バス梅77系統「駒木町循環」に乗り、郷土博物館入口バス停で下車して徒歩約5分。釜の淵公園内に無料駐車場があります。
Q旧宮崎家住宅の隣にある青梅市郷土博物館も見学できますか。
A現在は見学できません。館内設備の老朽化のため令和7年(2025年)4月1日から休館しています。青梅市は、休館中も旧宮崎家住宅などの古民家は通常どおり公開すると案内しています。

基本情報

名称旧宮崎家住宅(旧所在 東京都青梅市成木)
所在地東京都青梅市駒木町一丁目684番地 青梅市立郷土博物館構内
指定区分重要文化財(建造物) 指定番号02046
指定年昭和53年(1978年)1月21日
員数1棟
寸法桁行12.4メートル、梁間7.0メートル。入母屋造、東面庇付、茅葺、北面下屋附属、杉皮葺
所有者青梅市
公開状況公開(無料)。夏季は午前10時から午後5時、冬季は午後4時まで。月曜日・年末年始休館

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)— 旧宮崎家住宅(旧所在 東京都青梅市成木)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/102/568
文化遺産オンライン — 旧宮崎家住宅(旧所在 東京都青梅市成木)
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/144268
青梅市 — 旧宮崎家住宅(国指定重要文化財)
https://www.city.ome.tokyo.jp/site/provincial-history-museum/2729.html
青梅市 — 青梅市郷土博物館休館のお知らせ
https://www.city.ome.tokyo.jp/site/provincial-history-museum/82198.html

最終更新日: 2026.08.22