磨丸太が予告するもの

津雲家住宅門は、東京都青梅市住江町72-2にある木造の表門で、年代は昭和9年頃とされ、令和2年(2020年)8月17日に登録有形文化財(建造物)となった。敷地の西辺中央に開かれた入口であり、その先には衆議院議員・津雲國利(1893〜1972)が迎賓のために設けた主屋が控える。

形式は棟門。二本の柱が直接に屋根を受ける簡素な構えで、四脚門のような控柱を持たない。間口は2.0メートル、左右に袖壁を伴い、自然石の基壇の上に建つ。小路が多摩川の段丘へ向かって下る地形にあって、この基壇が水平の基準を与えている。

目を引くのは材の選び方である。門柱は節を出した磨丸太。角材に挽かず、丸太の表面を磨き、節をあえて残した。冠木の鼻には柱を立て、脇壁は中塗仕上とする。梁より上の小屋組にも磨丸太が用いられており、通りすがりの視線が届かない部分まで同じ論理で通されている。

数寄屋の感覚を門という敷居の位置に据えた例といえる。文化庁の解説は、趣味性の強い迎賓施設への導入を演出するもの、と評した。訪ねる者は主屋を見る前に、その建物の性格を材から知らされる。

「歴史的景観に寄与」という基準

登録番号は13-0438、第96回登録。適用された基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。同日、主屋が13-0437、塀が13-0439として登録された。

基準の違いに注意したい。主屋に適用されたのは「造形の規範となっているもの」で、これは建物そのものの完成度に対する評価である。門に与えられたのは、通りに対して果たす役割への評価だった。住江町は青梅街道の旧宿場筋から一段下がった段丘上にあり、延命寺の前を通る小路には、都内の多くの地区が失った尺度と肌合いが残っている。門と塀は、敷地の一部であると同時に、この街路の構成要素でもある。

屋根まわりの仕様も記録に残る。切妻造桟瓦葺とし、軒先と螻羽(けらば)を銅板で葺く。瓦の下端と妻側の縁だけを金属で押さえる処理で、雨仕舞いと輪郭の締まりを同時に得ている。脇壁の中塗仕上は、上塗りを掛けずに中塗りの土肌を見せる仕上げであり、茶室建築に通じる抑制がある。

登録有形文化財の制度は平成8年(1996年)に始まり、築およそ50年以上の建造物を対象として、外観の変更に届出を求める。門や塀といった小規模な工作物が数多く登録されているのはこの制度の特徴で、主屋が建て替えられた敷地では門だけが往時の姿を残す例も少なくない。津雲家の場合は三者が揃って残った。

門を見る

門は公道に面しているため、時間を選ばず、費用もかからずに観察できる。三件の登録物件のうち最も見学しやすく、主屋が休館となる週の四日間でも足を運ぶ価値がある。

撮影に制限はない。屋内撮影が原則不可とされる主屋とは事情が異なる。西面が正面にあたるので、午前の光が柱の丸みと節の陰影を拾う。

JR青梅線・青梅駅から徒歩5〜6分。青梅街道を400メートルほど進み、住江町の交差点で石柱の立つ小路へ入る。坂を下って延命寺の前を過ぎると、左手に門が現れ、そこから南北へ石垣上の塀が延びる。

主屋が開いている日、すなわち金・土・日曜日と祝日のおおむね10時から16時であれば、門は眺める対象ではなく通り抜ける対象になる。入館料は一般500円、中学生以下無料と案内されている。展示替え期間や夏季、年末年始の休館があるため、事前確認をおすすめする。

Q&A

Q津雲家住宅門は入館料を払わなくても見られますか。
A見られます。門は住江町の公道に面しており、時間帯を問わず無料で観察・撮影ができます。開館日に入館すれば、門をくぐって敷地内へ入ることも可能です。
Q津雲家住宅門はどのような形式の門ですか。
A棟門です。二本の門柱が直接に屋根を受ける形式で、間口は2.0メートル、左右に袖壁が付きます。自然石の基壇に建ち、屋根は切妻造桟瓦葺、軒先と螻羽を銅板で葺いています。
Q津雲家住宅門の柱に丸太が使われているのはなぜですか。
A節を出した磨丸太は数寄屋・茶室系の建築に用いられる材で、入口にこれを据えることで奥の迎賓空間の性格を予告しています。梁より上の小屋組にも同じ磨丸太が使われています。
Q津雲家住宅門はいつ、どの基準で登録されましたか。
A令和2年(2020年)8月17日、第96回登録で登録番号13-0438として登録されました。基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」です。同日に主屋(13-0437)と塀(13-0439)も登録されています。
Q津雲家住宅門へはJR青梅駅からどう行きますか。
A徒歩5〜6分です。青梅街道を400メートルほど東へ進み、住江町の交差点にある石柱の小路に入って坂を下ります。延命寺の前を過ぎた左手、敷地西辺の中央に門があります。

基本情報

名称津雲家住宅門(つくもけじゅうたくもん)
所在地東京都青梅市住江町72-2
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号13-0438 基準「国土の歴史的景観に寄与しているもの」
指定年令和2年(2020年)8月17日登録(第96回登録)
員数1棟
寸法木造、瓦葺、間口2.0メートル、左右袖壁付/年代 昭和9年頃
所有者個人(国のデータベースに所有者名の記載なし)
公開状況公道から常時無料で見学可。門をくぐる場合は「青梅宿 津雲邸」の開館日(金・土・日曜日および祝日、おおむね10時〜16時)に入館

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)― 津雲家住宅門
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00013360
国指定文化財等データベース(文化庁)― 津雲家住宅主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00013359
おうめ観光ガイド ― 津雲邸
https://www.omekanko.gr.jp/spot/30301/
伝統の日本紀行 ― 青梅宿・津雲邸
https://www.visiting-japan.com/ja/articles/tokyo2/j13ou-tsukumotei.htm
TOKYO WESTSIDE ― 青梅宿 津雲邸
https://tokyo-westside.jp/spot/tsukumotei/

最終更新日: 2026.08.05