木の顔をしたコンクリート

津雲家住宅塀は、東京都青梅市住江町にある鉄筋コンクリート造の塀で、年代は昭和9年頃とされ、令和2年(2020年)8月17日に登録有形文化財(建造物)となった。津雲家住宅の敷地西辺を画し、門の南北に延びる高い石垣の上に建つ。総延長は28メートルに及ぶ。

小路を歩いて最初に目に入るのは、瓦屋根を戴いた板塀のような姿である。近づくと材が判る。全体が鉄筋コンクリートで、布基礎を据え、木造の塀であれば柱が立つ位置に柱形を浮き上がらせている。内側には控柱が添えられる。

要はその柱間の処理にある。面に刻まれた目地は、下見板の割付そのままに引かれている。板を横に重ね張りした壁の陰影を、コンクリートの平滑な面に線だけで写し取ったかたちだ。

軒を支えるのは刳形付の腕木で、屋根は桟瓦葺。文化庁の解説は、この構成が表構えに端正な表情を与えていると評する。

塀が文化財になる理由

登録番号は13-0439、第96回登録。基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、門(13-0438)と同じである。主屋(13-0437)に適用されたのは「造形の規範となっているもの」であり、三件のうち二件が景観への寄与で評価されたことになる。

この区別は塀の立ち位置をよく示している。住江町は青梅街道の旧宿場筋から一段下がった段丘上にあり、延命寺の前を通る小路には、東京では珍しくなった街路の尺度が残る。石垣の上を28メートル走る塀は、その景観の相当部分を占める構成要素である。

昭和一桁の個人邸で境界の塀に鉄筋コンクリートを選んだ点は、少し立ち止まって考える価値がある。大正12年(1923年)の関東大震災を経て不燃構造への関心が高まり、コンクリートは土木の領域から一般の建築へ広がりつつあった。その材を用いながら、仕上げは木造の語彙で整える。材料が普及した一方、その素肌をそのまま見せる意匠が、この性格の住宅にはまだ受け入れられていなかった時期の産物といえる。

敷地内の呼応にも触れておきたい。地元の資料は主屋の外壁を押縁下見板張と説明している。それに従えば、コンクリート塀に刻まれた目地は、囲んでいる建物の壁面の割付を別の材で反復していることになる。

塀を見る

拝観券は要らない。塀は公道に面しており、時間を選ばず無料で観察・撮影ができる。三件の登録物件のうち最も見やすく、主屋が休館の週四日でも門とともに姿を見せている。

JR青梅線・青梅駅から徒歩5〜6分。青梅街道を400メートルほど進み、住江町の交差点で石柱の立つ小路に入って坂を下る。延命寺を過ぎた左手、門を中点として南北に塀が延びる。

ゆっくり見る値打ちのある箇所が二つある。ひとつは目地。正面から順光で見ると平面に沈むが、日が傾いて斜めの光が当たると割付が浮き上がる。もうひとつは軒下の腕木で、角材のまま留めず刳形を施した輪郭は、真下から仰ぐと読み取りやすい。

内側の控柱を確かめたい場合は、「青梅宿 津雲邸」の開館日に入館するとよい。金・土・日曜日と祝日のおおむね10時から16時、入館料は一般500円、中学生以下無料と案内されている。屋内撮影は原則不可。展示替えや夏季、年末年始の休館があるため、事前に電話で確認しておきたい。

Q&A

Q津雲家住宅塀は何でできていますか。
A鉄筋コンクリート造で、屋根は桟瓦葺です。高い石垣の上にコンクリート布基礎を据え、外面に柱形を見せ、内側に控柱を付します。総延長は28メートルです。
Q津雲家住宅塀が板塀のように見えるのはなぜですか。
A柱間の面に、下見板の割付に沿った目地が刻まれているためです。コンクリートを木造の見え方に寄せる処理で、材が住宅建築へ普及し始めた昭和初期には珍しくない手法でした。
Q津雲家住宅塀は無料で見学できますか。
Aできます。住江町の公道に面しており、時間を問わず無料で見られます。内側の控柱については、主屋の開館日に入館すれば敷地内から確認できます。
Q津雲家住宅塀はいつ登録有形文化財になりましたか。
A令和2年(2020年)8月17日、第96回登録で登録番号13-0439として登録されました。基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」です。同日、門(13-0438)と主屋(13-0437)も登録されています。
Q津雲家住宅塀へはJR青梅駅からどう行きますか。
A徒歩5〜6分です。青梅街道を400メートルほど東へ進み、住江町の交差点にある石柱の小路へ入って坂を下ります。延命寺の先、敷地西辺に沿って門の南北へ塀が延びています。

基本情報

名称津雲家住宅塀(つくもけじゅうたくへい)
所在地東京都青梅市住江町72-2他
指定区分登録有形文化財(建造物) 登録番号13-0439 基準「国土の歴史的景観に寄与しているもの」
指定年令和2年(2020年)8月17日登録(第96回登録)
員数1棟
寸法鉄筋コンクリート造、瓦葺、総延長28メートル/年代 昭和9年頃
所有者個人(国のデータベースに所有者名の記載なし)
公開状況公道から常時無料で見学可。内側は「青梅宿 津雲邸」の開館日(金・土・日曜日および祝日、おおむね10時〜16時)に敷地内から確認可能

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁)― 津雲家住宅塀
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00013361
国指定文化財等データベース(文化庁)― 津雲家住宅主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00013359
おうめ観光ガイド ― 津雲邸
https://www.omekanko.gr.jp/spot/30301/
伝統の日本紀行 ― 青梅宿・津雲邸
https://www.visiting-japan.com/ja/articles/tokyo2/j13ou-tsukumotei.htm
大多摩観光連盟 ― 青梅宿 津雲邸
https://www.ohtama.or.jp/sightseeing/1101.html

最終更新日: 2026.08.05