昭和7年、世田谷の街路に建てられた家

鎌田家住宅主屋は、東京都世田谷区梅丘1-1473-5にある昭和7年(1932年)建築の木造平屋建住宅で、平成21年(2009年)11月2日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。

敷地のほぼ中央に、通りに東面して建つ。建築面積は104平方メートル。文化財としては決して大きな建物ではない。見どころは規模ではなく、この面積のなかにどれだけ変化を盛り込んだかという点にある。

小田急小田原線の開業は昭和2年(1927年)4月。この家が建てられたのは、それから5年後にあたる。最寄りの梅ヶ丘駅の開設は昭和9年(1934年)4月で、住宅のほうが2年早い。畑がまだ街区に変わりつつあった時期の建築である。

屋根が三種、外観が動く

通りから見上げると、複数の屋根形式が同時に目に入る。

中心となるのは東西棟の入母屋造。その東側に張り出すのが玄関で、こちらも入母屋造だが妻を正面に向けた妻入とする。訪れる者は三角形の妻面に向かって歩くことになり、小さな家でありながら正面性がはっきり出る。

南側には和室が置かれ、こちらの屋根は寄棟造。北側にはもと陸屋根の洋間が設けられていたことが、文化庁のデータベースに記録されている。

入母屋が二つ、寄棟が一つ、そこに陸屋根。歩く角度によって輪郭が変わっていく。この規模の住宅では珍しい構成といえる。

中廊下という設計の意味

内部は中廊下式。廊下が建物の中央を貫き、その両側に部屋が並ぶ。

いまでは当たり前に見える形式だが、昭和初期にはこれが新しい住まい方の指標だった。それ以前の日本の住宅は部屋を数珠つなぎに配し、奥へ行くには手前の部屋を襖を開けながら通り抜けるしかなかった。中廊下はその構造を断ち切る。日当たりのよい南側に座敷や居間を並べ、北側に台所や納戸などの水回りを寄せ、各室が独立した出入口を持つようになった。

北側の陸屋根の洋間も同じ時代の産物である。椅子と机を置き、絨毯を敷いた一室を来客用ないし書斎として構えることは、当時東京の郊外に移り住んだ俸給生活者層の暮らしぶりを示す要素だった。建築雑誌はこの種の住宅を文化住宅と呼んだ。

昭和47年(1972年)に改修が加えられている。登録有形文化財の制度は住み継がれるなかでの変更を許容しており、この改修も損傷ではなく履歴として記録されている。

指定ではなく登録であること

日本の建造物保護には二つの系統がある。国宝や重要文化財に適用される指定は現状変更を強く制限する。これに対し平成8年(1996年)に導入された登録制度は、届出を基本とする緩やかな仕組みで、おおむね建設後50年を経た建物を対象とする。

鎌田家住宅主屋の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」。登録番号は13-0249、第65回登録にあたり、登録告示は平成21年11月19日付である。

文化庁の解説は評価の理由を端的に記す。戦前の東京で私鉄沿線に建てられた郊外住宅の一例、というのがそれである。大正末から昭和初期にかけて、世田谷・杉並・大田といった区部西南部には同種の住宅が数え切れないほど建った。戦災、地価の高騰、建て替えの周期をくぐり抜けて残ったものは、そのうちごくわずかにすぎない。希少性はここにある。

同日には、敷地奥の離れと、通りに面する鉄筋コンクリート造の門及び塀も併せて登録されている。

実際に見られるもの

個人の住宅である。内部の公開はなく、見学の受付も公開日程の告知もない。廊下を歩かせてもらえる建物ではない。

公道から確認できるのは、門と脇の塀、そしてその奥に立ち上がる屋根である。門は道路境界から2メートルほど後退して構えられており、車道に立たずに全体を見渡せるだけの余地がある。

撮影は公道から。敷地に立ち入らず、塀の隙間から中を覗いたり、窓にレンズを向けたりはしないこと。数メートル先で人が生活している。東向きの玄関まわりを撮るなら、朝の早い時間帯が最も光が回る。

最寄りは小田急小田原線の梅ヶ丘駅で、徒歩5分ほど。近隣には約650本の梅が植えられた羽根木公園があり、2月には「せたがや梅まつり」が開かれる。晩冬に合わせて訪ねると、二つを一度に回れる。

Q&A

Q鎌田家住宅主屋の内部は見学できますか。
Aできません。鎌田家住宅主屋は現に住まわれている個人住宅で、内部公開・拝観料・公開時間のいずれも設定されていません。登録有形文化財であっても、所有者に公開の義務はありません。
Q鎌田家住宅主屋の所在地と行き方を教えてください。
A東京都世田谷区梅丘1-1473-5です。最寄り駅は小田急小田原線の梅ヶ丘駅で、徒歩5分ほど。新宿から同線で直通します。
Q鎌田家住宅主屋はいつ建てられ、いつ登録されましたか。
A昭和7年(1932年)の建築で、昭和47年(1972年)に改修されています。登録年月日は平成21年(2009年)11月2日、登録告示は同年11月19日、登録番号は13-0249です。
Q鎌田家住宅主屋は写真撮影できますか。
A公道からの撮影に制限はなく、門・塀・屋根まわりはそこから視認できます。敷地内に立ち入る、塀越しに内部を撮る、窓にレンズを向けるといった行為は避けてください。居住者の生活が最優先です。
Q鎌田家住宅主屋と一緒に登録された建物はありますか。
A同じ敷地の二件が同日登録されています。敷地西奥の離れ(登録番号13-0250、建築面積50平方メートル)と、通りに面する門及び塀(同13-0251、鉄筋コンクリート造)です。

基本データ

名称鎌田家住宅主屋(かまたけじゅうたくしゅおく)
所在地東京都世田谷区梅丘1-1473-5
指定区分登録有形文化財(建造物)/登録番号 13-0249
指定年平成21年(2009年)11月2日登録、同年11月19日告示
員数1棟
寸法木造平屋建、瓦葺、建築面積104平方メートル
所有者個人(文化庁データベースに所有者名の記載なし)
公開状況非公開。外観のみ公道から視認可

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 鎌田家住宅主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00007878
文化遺産オンライン 鎌田家住宅主屋
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/143638
文化庁 登録有形文化財(建造物)
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei.html
世田谷区 区内にある文化財の紹介
https://www.city.setagaya.lg.jp/02059/3397.html

最終更新日: 2026.07.27