御岳の神代ケヤキ ― 御岳山の参道にそびえる巨樹
東京都青梅市、御岳山の標高およそ840メートルの斜面に、一本のケヤキが立っている。武蔵御嶽神社へ向かう参道のかたわら、宿坊が並ぶ一画である。幹まわりは約8.2メートル、樹高は30メートル近く、長い枝は23メートルほども左右に伸びて、参道の頭上を覆う。地元では「神代ケヤキ」と呼ばれ、昭和3年(1928年)2月18日に国の天然記念物に指定された。
樹種はケヤキ(Zelkova serrata)。古くは「ツキ(槻)」と呼ばれ、神の依りつく木として神社の境内に大切にされてきた。この木はすでに周囲の森から離れ、人家や道に囲まれて立つが、枝ぶりはなお勢いがあり、太い幹からは多くの瘤が育っている。
指定の理由と価値
天然記念物は、自然界のなかで国として守るべき価値をもつものに与えられる区分で、巨樹や老樹も、めずらしい動植物や地形とならんで対象になる。神代ケヤキは「名木、巨樹、老樹」などを定めた基準によって指定された。ケヤキは日本の巨樹のなかでも数が多い種だが、それだけに飛びぬけて大きな個体は際立つ。この木は東京を代表する巨樹のケヤキの一つに数えられている。
指定当時の調査によれば、地上およそ1.5メートルの位置で幹まわりは約8.2メートル。地上2.4メートルほどのところで幹は四本の枝に分かれ、ならんで立ち上がる。この分かれ方が、燭台のように大きく開いた樹形をつくっている。同じ調査では樹高をおよそ30メートルとし、ケヤキの代表的な巨樹と記している。
「神代」という名は、樹齢への問いを誘う。神々の時代を思わせる呼び名であり、日本武尊(やまとたけるのみこと)が東征の折に植えたという伝説も残る。一方で植物としての推定は、より控えめである。東京都教育委員会は樹齢を約600年とみており、これに従えば、この木は神世の昔ではなく中世のものということになる。看板や古い記述では1000年とすることもある。数字は一致しておらず、いずれにせよ確かな記録がさかのぼれる以前から、この木が立っていたことは間違いない。
見どころ
斜面の下から数歩離れて見上げると、大きさがよくわかる。低い位置で四本に分かれた幹には、長い年月をかけて盛り上がった瘤がいくつもつき、ツタが幹を這い、シダやコケが粗い樹皮にとりついている。樹冠は小さな生きものの場所にもなっていて、季節ごとに野鳥が集まり、夜行性のムササビが近くにすみつくことも知られる。
森のなかではなく開けた場所に立つため、木には直接光が当たり、枝の構造が空を背にはっきりと読みとれる。秋には木自身と周囲の木々が色づき、神社への登りのなかで足を止めるのにちょうどよい場所になる。幹の周囲は柵で囲われ、参道から眺める形になっている。
御岳山のまわり
この木が立つのは、標高929メートルの御岳山頂に鎮座する武蔵御嶽神社への参道である。古くから山岳信仰の場で、狼を神の使いとしてまつることでも知られる。神社の手前には宿坊の町が広がる。代々この地で参拝者を案内してきた御師(おし)たちが営む宿で、馬場家住宅をはじめ古い御師の家が今も残る。
多くの人は御岳登山鉄道のケーブルカーで御岳山駅まで上り、そこから神社へ向かって10分ほど歩く。途中でこのケヤキの前を通る。山頂の先には、苔むした飛び石をたどるロックガーデンや、七代の滝・綾広の滝へ続く道がある。御岳ビジターセンターでは一帯の自然を知ることができ、同じ山には樹齢およそ500年の神代イチョウもある。山のふもとでは、多摩川沿いの御岳渓谷が散策や川遊びの人を集めている。
Q&A
- 神代ケヤキへはどう行きますか。
- 御岳登山鉄道のケーブルカーで御岳山駅まで上り、武蔵御嶽神社へ向かう参道を10分ほど歩きます。木は宿坊の並ぶ参道のかたわらに立っているので、すぐにわかります。
- 樹齢は実際どのくらいですか。
- 推定に幅があります。東京都教育委員会は約600年とし、地元では1000年ともいわれます。名前と伝説は日本武尊と結びつきますが、植物としての評価では600年ほどとされています。
- 「神代」とはどういう意味ですか。
- 日本の古い書物に描かれる神々の時代を指します。記録された植樹年というより、この木がきわめて古いとされてきたことを表す呼び名です。
- 木にさわったり、近くまで寄ったりできますか。
- できません。幹の周囲は保護のため柵で囲われており、参道から眺める形です。枝は頭上に張り出しているので、神社へ進む途中、枝の下をくぐる形になります。
- 同じ場所でほかに見られるものはありますか。
- 山頂の武蔵御嶽神社、今も残る御師の住宅、ロックガーデンや滝、御岳ビジターセンター、そして別の老樹である神代イチョウなどが、一日でめぐれる範囲にあります。
基本データ
| 名称 | 御岳の神代ケヤキ(みたけのじんだいけやき) |
|---|---|
| 樹種 | ケヤキ(Zelkova serrata) |
| 所在地 | 東京都青梅市御岳山 |
| 指定区分 | 国指定天然記念物 |
| 指定年月日 | 昭和3年(1928年)2月18日 |
| 幹まわり | 約8.2メートル |
| 樹高 | 約30メートル |
| 枝張り | 約23メートル |
| 推定樹齢 | 約600年(東京都教育委員会)。地元では1000年ともいわれる |
| 所有者 | 青梅市 |
| アクセス | 御岳登山鉄道ケーブルカー御岳山駅から徒歩約10分 |
| 見学 | 参道沿いで常時見学可。幹は柵で囲われ、参道から眺める |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)― 御岳の神代ケヤキ
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/401/697
- 青梅市公式ホームページ ― 御岳の神代ケヤキ
- https://www.city.ome.tokyo.jp/site/provincial-history-museum/2958.html
- 御岳ノ神代欅(ウィキペディア日本語版)
- https://ja.wikipedia.org/wiki/御岳ノ神代欅
最終更新日: 2026.05.28