銀銅蛭巻太刀拵とは:丹生都比売神社に伝わる平安の太刀外装

銀銅蛭巻太刀拵は、和歌山県伊都郡かつらぎ町の丹生都比売神社に伝わる平安時代の太刀の外装で、昭和30年(1955年)に国宝に指定された。

読みは「ぎんどうひるまきたちこしらえ」。拵(こしらえ)とは、刀身を納める鞘・柄・鐔・金具などの外装一式を指す。この拵は刀身を失っており、外装だけが伝わっている。所有者は丹生都比売神社(にうつひめじんじゃ)で、長く東京国立博物館に管理が委ねられてきた。

明治30年(1897年)12月18日に当時の制度で指定を受け、この日付が重要文化財としての指定年月日になっている。昭和30年(1955年)2月2日に国宝に指定された。

伝来と国宝指定の理由:元寇ののちの奉納と伝わる

丹生都比売神社は、弘安4年(1281年)の蒙古襲来(弘安の役)の直前に神の託宣があったと朝廷と幕府の記録に記され、戦ののち鎌倉幕府が神領を寄進し、太刀や弓矢を奉納したと伝えている。神社は、銀銅蛭巻太刀拵と重要文化財の5振りの太刀が、このとき幕府から奉納されたものとしている。

一方、拵そのものの姿からは平安時代後期の製作とする見方がある。柄頭が大きく張り、足金物のあたりで反りが強く、鞘の先へ向かって反りが浅くなる姿が平安時代の太刀に合うためである。ただし足金物の形は鎌倉時代に多い形式でもあり、研究者は製作年代に幅を持たせて考えるべきだと指摘している。奉納の時期と製作の時期は、分けて考える必要がある。

神社に伝わる太刀外装のなかで唯一の国宝であり、堅牢さと優美さを兼ね備えた平安の太刀拵の姿をよく残していることが、その評価の中心にある。

見どころ:蛭巻の銀と、花菱亀甲紋の金

「蛭巻」とは、柄や鞘に細い金属板を螺旋状に巻き付ける技法をいう。補強と装飾を兼ねる手法で、この拵では銀を鍍した帯状の山銅(やまがね)の板を鞘と柄の両方に蛭巻にし、そのすき間を黒漆で埋めている。

兜金・足金物・責金・石突・俵鋲など金具はすべて、花菱亀甲紋を鋤出彫にして鍍金している。鐔も鍍金地の木瓜形で、縁に同じ文様を刻む。現在は巻き板の銀が黒く変色し、黒と金の取り合わせに見えるが、作られた当初は全体が金と銀に輝く華やかな太刀拵だったと考えられている。

実物を見る機会があれば、柄頭の大きさと鞘の反りの変化に注目したい。本来付いていた帯執と七ツ金は失われており、神社に伝わるほかの太刀と同様、兵庫鎖が付いていたとみられている。神社のご神宝の案内には、研究者による復元品も紹介されている。

見学方法:公開の機会と神社への参拝

銀銅蛭巻太刀拵は常設で公開されているものではない。東京国立博物館で展示されるかどうかは展覧会ごとに異なるため、見学を希望する場合は、博物館の展示予定を確認してほしい。

所有者の丹生都比売神社は、和歌山県伊都郡かつらぎ町上天野の天野盆地にある。神社のご神宝の案内には、この拵の復元品が掲載されている。神社で復元品や資料が公開されているかどうかは時期によって異なる可能性があるので、訪問前に神社へ確認したい。

展示されている場合の撮影の可否は、展示施設の掲示に従う。

Q&A

Q銀銅蛭巻太刀拵はどこで見られますか?
A常設公開はされていません。長く東京国立博物館に管理が委ねられており、展示されるかどうかは展覧会ごとに異なります。博物館の展示予定を確認してください。
Q銀銅蛭巻太刀拵の「蛭巻」とは何ですか?
A柄や鞘に細い金属板を螺旋状に巻き付ける技法です。この拵では銀を鍍した山銅の板を巻き、すき間を黒漆で埋めています。
Q銀銅蛭巻太刀拵はいつ作られましたか?
A姿から平安時代後期の製作とする見方がありますが、金具の形式から年代に幅を持たせるべきだという指摘もあります。神社は、弘安4年(1281年)の元寇ののちに鎌倉幕府が奉納したものとしています。
Q銀銅蛭巻太刀拵に刀身はありますか?
A刀身は失われており、外装(拵)だけが伝わっています。
Q銀銅蛭巻太刀拵はいつ国宝に指定されましたか?
A昭和30年(1955年)2月2日です。重要文化財としての指定年月日は明治30年(1897年)12月18日です。

基本情報

名称銀銅蛭巻太刀拵
所在地東京国立博物館(東京都台東区上野公園13-9)
指定区分国宝(工芸品)
指定年昭和30年(1955年)2月2日国宝指定(重要文化財指定は明治30年(1897年)12月18日)
員数1口
寸法不明(文化庁データベースで未確認)
所有者丹生都比売神社
公開状況常設公開なし。東京国立博物館の展示予定を確認

参考文献

丹生都比売神社「ご神宝」
https://niutsuhime.or.jp/about/shahou/
丹生都比売神社「丹生都比売神社の伝承」
https://niutsuhime.or.jp/about/tradition/
星野欣也ほか「丹生都比売神社所蔵、国宝“銀銅蛭巻太刀拵”と太刀の復元による鎌倉時代初期の作刀技術の実証的再現研究」(JFE21世紀財団)
https://www.jfe-21st-cf.or.jp/furtherance/pdf_hokoku/2013/07.pdf
文化庁 国指定文化財等データベース
https://kunishitei.bunka.go.jp/

最終更新日: 2026.09.27