1口の太刀 ― 1951年に国宝
太刀〈銘久国〉は、東京国立博物館(東京都台東区上野公園13-9)にある鎌倉時代の工芸品で、1931年(昭和6年)12月14日に重要文化財となり、1951年(昭和26年)6月9日に国宝に指定された。員数は1口、所有は国(文化庁)である。
作者は久国と記録されている。文化庁は、山城国粟田口派を代表する刀工である藤次郎久国は、後鳥羽院番鍛冶の一人とも伝えられる、と記す。
所有が国(文化庁)である物件は、これで6件目になる。
「生ぶ茎」と「大摺上げ」が対になっている
この太刀の茎について、文化庁は次のように記す。
生ぶ茎の表に「久国」と細鏨の二字銘がある、とある。生ぶ茎は、作られたときのまま削られていない茎をいう。
直前に扱った刀〈金象嵌銘正宗本阿花押〉は逆だった。茎は大摺上げ、とあり、大きく削り詰められていた。そのため原銘が失われ、鑑定した人が金象嵌で名を入れている。
本件は削られていない。だから刀工が刻んだ銘がそのまま残る。細鏨は細い鏨、二字銘は二文字の銘をいう。
削るか削らないかで、銘が残るか失われるかが決まる。二件を並べると、その分かれ目がはっきりする。
寸法が尺貫法で記されている
寸法の書き方にも違いがある。
長二尺六寸五分五厘、反一寸、元幅九分、先幅五分五厘、鋒長九分、とある。尺貫法である。
刀〈金象嵌銘正宗本阿花押〉の寸法は、刃長67.0センチメートル、反り1.7センチメートルとメートル法で記されていた。
同じ東京国立博物館にあり、同じ国(文化庁)が所有し、同じ工芸品である。それでも寸法の単位系が違う。
記録が作られた時期や担当によって、単位の選び方が変わることになる。文化庁は理由を記していない。
銘があること自体が希少とされる
評価の一文にも、独特の観点がある。
有銘作の遺例は少なく、ほぼうぶな状態を保つ完存品として貴重である、とある。
有銘作は銘のある作品をいう。その遺例が少ない、と述べている。作品の質ではなく、銘が残っていること自体が希少だという評価である。
うぶな状態は、手が加わっていない状態をいう。完存品は欠けのないものをいう。削られず、失われず、そのまま残っている点が評価されている。
玳玻天目茶碗では、出土したものと伝わったものが区別されていた。本件は、銘が残るか失われるかで区別されている。何が残ったかを、記録は細かく分けている。
鑑賞
所在は東京国立博物館で、所有は国(文化庁)である。館が保管する刀であり、常設で公開される性格のものではない。
姿についても記録がある。鎬造、庵棟、小切先、反高く踏張りのある姿は時代の特色を示し、とある。
地がねについては、小板目の約った地沸の深い映りの立った地がねは、この工と系統の特色である、とされる。作者と流派の特徴が地の質に現れるという見方である。
展示の予定は変わることがあるため、訪問前に館の案内で確認したい。
Q&A
- 太刀〈銘久国〉はいつ指定されましたか。
- 1931年(昭和6年)12月14日に重要文化財、1951年(昭和26年)6月9日に国宝へ指定されました。員数は1口、所在は東京国立博物館、所有は国(文化庁)です。
- 「生ぶ茎」とは何ですか。
- 作られたときのまま削られていない茎をいいます。刀工が刻んだ銘がそのまま残るため、文化庁は「生ぶ茎の表に『久国』と細鏨の二字銘がある」と記します。
- 中務正宗との違いは何ですか。
- 中務正宗は「茎は大摺上げ」で大きく削り詰められ、原銘が失われて鑑定者が金象嵌で名を入れています。本件は削られていないため、刀工の銘が残ります。削るか削らないかで、銘が残るか失われるかが決まります。
- 寸法の単位が違うのはなぜですか。
- 本件は尺貫法で「長二尺六寸五分五厘」などと記され、中務正宗はメートル法で「刃長67.0センチメートル」などと記されています。同じ館、同じ所有者、同じ工芸品でも単位系が違い、文化庁は理由を記していません。
- 何が評価されているのですか。
- 文化庁は「有銘作の遺例は少なく、ほぼうぶな状態を保つ完存品として貴重である」と記します。作品の質だけでなく、銘が残っていること自体が希少だとされています。
基本情報
| 名称 | 太刀〈銘久国〉(たち めいひさくに) |
|---|---|
| 所在地 | 東京国立博物館 東京都台東区上野公園13-9 |
| 指定区分 | 国宝(工芸品) |
| 指定年 | 1931年(昭和6年)12月14日 重要文化財/1951年(昭和26年)6月9日 国宝 |
| 員数 | 1口 |
| 寸法 | 文化庁は尺貫法で記す。長2尺6寸5分5厘、反り1寸、元幅9分、先幅5分5厘、鋒長9分。鎬造、庵棟、小切先で、生ぶ茎の表に「久国」と細鏨の二字銘がある。作者は久国、時代は鎌倉 |
| 所有者 | 国(文化庁) |
| 公開状況 | 館が保管する刀で、常設の公開ではない |
参考文献
- 文化遺産オンライン 太刀〈銘久国/〉
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/149881
- 東京国立博物館 公式サイト
- https://www.tnm.jp/
- 文化庁 国指定文化財等データベース
- https://kunishitei.bunka.go.jp/
- 文化庁 文化財の紹介 美術工芸品
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/bijutsu_kogei/
最終更新日: 2026.09.05