1口の太刀 ― 1952年に国宝
太刀〈銘正恒〉は、東京国立博物館(東京都台東区上野公園13-9)にある平安時代の工芸品で、1931年(昭和6年)1月19日に重要文化財となり、1952年(昭和27年)3月29日に国宝に指定された。員数は1口、指定番号は00046、所有は国(文化庁)である。附指定はない。
1931年1月19日は、玳玻天目茶碗が重要文化財となった日と同じである。同じ日の二件が、1952年と1953年に別々に国宝へ進んでいる。
寸法は尺貫法で記される。長二尺六寸四厘、反り八分二厘、元幅一寸、先幅五分七厘、鋒長九分である。直前に扱った太刀〈銘久国〉も尺貫法だった。
銘があっても作者が一意に定まらない
解説に、際立った一文がある。
古備前正恒の作である。正恒は備前でも同名数あるが、この正恒は姿、銘振り良く、作風に古備前本来の面目を良く示し、健全な作である、とある。
正恒は備前でも同名数ある。同じ名を用いた刀工が複数いた、という指摘である。
ここまで刀の銘について、三つの段階を見てきた。刀〈金象嵌銘正宗本阿花押〉は茎を大摺上げしたため原銘が失われ、鑑定した人が金で名を入れていた。太刀〈銘久国〉は生ぶ茎に刀工の銘が残り、作者が定まっていた。
本件はその先にある。銘は残っている。それでも同名の刀工が複数いるため、銘だけでは誰かが決まらない。
そこで姿、銘振り、作風という三つの手がかりが挙げられる。銘振りは銘の書きぶりをいう。文字の内容ではなく、書き方から判断している。
同じ名の物件が並んでいる
関連作品を見ると、この事情がそのまま現れている。
太刀〈銘正恒/〉という名の物件が、いくつも並ぶ。附黒漆太刀拵の付くものもある。
絹本著色十二天像では、同名・同員数・同所有者の物件が二件あり、時代と所蔵館で分けるほかなかった。本件の周辺には、それよりも多くの同名物件がある。
刀剣の名称は銘文の転記であるため、同じ銘の刀は同じ名になる。名称だけでは物件を区別できない。
指定番号が手がかりになる。本件は00046である。番号は物件ごとに異なるため、名称が重なっても取り違えずに済む。
銘の位置が目釘孔で示される
品質・形状の欄に、銘の位置が記される。
茎は生ぶで、鑢目太刀、原目釘孔の下に「正恒」と銘がある、とある。
目釘孔は、柄と刀身を留める釘を通す穴をいう。原目釘孔は、当初から開いていた穴を指す。
その下に銘がある、と位置が示されている。太刀〈銘久国〉では「生ぶ茎の表に」とだけあり、面は示されても孔との関係までは記されていなかった。
茎が生ぶであることは本件も同じである。削られていないため、原目釘孔も銘も当初のまま残っている。
鑑賞
所在は東京国立博物館で、所有は国(文化庁)である。館が保管する刀であり、常設で公開される性格のものではない。
姿については、鎬造、庵棟、小鋒、腰反りやや浅く踏張りある立ち姿である、とされる。
波文については、中直に小乱交り、足、葉繁く入り、匂、小沸深く、帽子沸つく、と記される。
展示の予定は変わることがあるため、訪問前に館の案内で確認したい。
Q&A
- 太刀〈銘正恒〉はいつ指定されましたか。
- 1931年(昭和6年)1月19日に重要文化財、1952年(昭和27年)3月29日に国宝へ指定されました。員数は1口、指定番号は00046、所在は東京国立博物館、所有は国(文化庁)です。
- 銘があれば作者は決まるのですか。
- 決まらない場合があります。文化庁は「正恒は備前でも同名数ある」と記します。同じ名を用いた刀工が複数いたため、銘だけでは誰かが定まらず、姿、銘振り、作風という三つの手がかりが挙げられています。
- 同じ名前の物件は他にもありますか。
- あります。太刀〈銘正恒/〉という名の物件がいくつも並び、附黒漆太刀拵の付くものもあります。刀剣の名称は銘文の転記であるため同じ銘の刀は同じ名になり、指定番号で区別することになります。
- 銘はどこに刻まれていますか。
- 文化庁は「茎は生ぶで、鑢目太刀、原目釘孔の下に『正恒』と銘がある」と記します。目釘孔は柄と刀身を留める釘を通す穴で、その下に銘があると位置が示されています。
- 寸法はどう記録されていますか。
- 尺貫法で、長二尺六寸四厘、反り八分二厘、元幅一寸、先幅五分七厘、鋒長九分と記されます。太刀〈銘久国〉も同じ尺貫法ですが、刀〈金象嵌銘正宗本阿花押〉はメートル法でした。
基本情報
| 名称 | 太刀〈銘正恒〉(たち めいまさつね) |
|---|---|
| 所在地 | 東京国立博物館 東京都台東区上野公園13-9 |
| 指定区分 | 国宝(工芸品)/指定番号00046/附指定はない/同名の物件が複数ある |
| 指定年 | 1931年(昭和6年)1月19日 重要文化財/1952年(昭和27年)3月29日 国宝 |
| 員数 | 1口 |
| 寸法 | 文化庁は尺貫法で記す。長2尺6寸4厘、反り8分2厘、元幅1寸、先幅5分7厘、鋒長9分。鎬造、庵棟、小鋒で、茎は生ぶ、原目釘孔の下に「正恒」と銘がある。作者は正恒、時代は平安 |
| 所有者 | 国(文化庁) |
| 公開状況 | 館が保管する刀で、常設の公開ではない |
参考文献
- 文化庁 国指定文化財等データベース 太刀〈銘正恒/〉
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/201/333
- 文化遺産オンライン 太刀〈銘正恒/〉
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/203649
- 東京国立博物館 公式サイト
- https://www.tnm.jp/
- 文化庁 国指定文化財等データベース
- https://kunishitei.bunka.go.jp/
最終更新日: 2026.09.05