タイガービルヂング:蔵前に佇む昭和初期の名建築

東京都台東区蔵前の国際通りに東面して建つタイガービルヂングは、昭和9年(1934年)に竣工した鉄筋コンクリート造5階建ての歴史的建造物です。台東区内で最も古いビルとして知られ、東京大空襲の戦火をくぐり抜けてきた震災復興建築の貴重な一例でもあります。平成20年(2008年)に国の登録有形文化財(建造物)に登録され、昭和初期の建築意匠と構造技術を今日に伝えるかけがえのない存在となっています。

歴史的背景

タイガービルヂングは、大正12年(1923年)の関東大震災からの復興期に計画・建設された建物です。震災後、東京では耐火性に優れた鉄筋コンクリート造の建築が急速に普及し、本建物もその流れの中で誕生しました。いわゆる「震災復興建築」の一つに数えられます。

建設当時の用途は、エレベーターを備えた高級賃貸集合住宅でした。当時としてはエレベーター付きの住宅は極めて先進的であり、近代的な都市生活を志向する人々に向けた住まいとして建てられました。昭和20年(1945年)の東京大空襲では、周辺地域が甚大な被害を受ける中、本建物は焼け落ちることなく持ちこたえ、戦災を生き延びました。

昭和30年(1955年)に改修が行われ、住居から商業テナントビルへと用途が転換されました。現在はタイガービルヂング株式会社が所有・管理し、オフィスやアトリエなどとして活用されています。

文化財としての価値

タイガービルヂングは平成20年(2008年)3月7日、「造形の規範となっているもの」という登録基準により、国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。

本建物はラーメン構造(剛接合骨組構造)を採用しており、昭和初期における鉄筋コンクリート造の構造技術を知る上で極めて貴重な資料とされています。震災復興期から戦前にかけての建築技術の発展過程を具体的に示す遺構であり、関東大震災後の東京がいかにして近代都市へと変貌を遂げたかを物語る建物でもあります。

また、東京大空襲という壊滅的な戦災を経てなお現存する建物として、その歴史的証言としての価値も計り知れません。

建築的な見どころ

タイガービルヂングの外観は、昭和初期の建築意匠を色濃く残しています。外壁にはスクラッチタイルが貼られており、その温かみのある色合いと表面に刻まれた細かな線模様が、建物に風格と趣を与えています。スクラッチタイルは、フランク・ロイド・ライト設計の帝国ホテル(旧館)にも使用されたことで知られる素材であり、大正末期から昭和初期にかけて日本の近代建築を象徴するタイルとして広く使用されました。

正面外壁の両端には円窓(丸窓)が配されており、船舶の舷窓を思わせるアール・デコ風の装飾的なアクセントとなっています。また、外壁の頂部にはレリーフ装飾が施されており、当時の職人たちの高い技術力と美意識がうかがえます。

地上5階・地下1階の構造に加え、屋上には塔屋(とうや)が2か所設けられており、建築面積は301平方メートルです。国際通りに面した堂々とした佇まいは、蔵前の街並みにおいてひときわ存在感を放っています。

訪問のご案内

タイガービルヂングは現在も商業テナントビルとして使用されているため、建物内部の一般公開は行われていません。しかし、スクラッチタイル貼りの外壁、特徴的な円窓、頂部のレリーフ装飾といった見どころは、国際通りから存分にご鑑賞いただけます。

建物が所在する蔵前地区は、近年「東京のブルックリン」とも称される注目のエリアです。古い倉庫や建物をリノベーションしたおしゃれなカフェ、手作りの雑貨店、クリエイターのアトリエなどが点在し、下町の風情と現代のセンスが見事に融合しています。タイガービルヂングの見学と合わせて、蔵前の街歩きをお楽しみいただくのがおすすめです。

周辺の見どころ

タイガービルヂングの周辺には、魅力的なスポットが数多くあります。

  • 藏前神社 — 江戸時代に由来する歴史ある神社。建物からも徒歩圏内です。
  • ダンデライオン・チョコレート ファクトリー&カフェ蔵前 — サンフランシスコ発のBean to Barチョコレートブランドの海外1号店。カカオからチョコレートになるまでの工程を見学できます。
  • カキモリ — オリジナルノートを一冊ずつ手作りできる人気の文具店。インク工房も併設しています。
  • 浅草寺 — 東京最古の寺院として知られる浅草の名刹。タイガービルヂングから徒歩約15分です。
  • 隅田川テラス — 隅田川沿いの遊歩道からは、東京スカイツリーや歴史ある橋梁群の眺望が楽しめます。

Q&A

Qタイガービルヂングの内部は見学できますか?
Aタイガービルヂングは現在も商業テナントビルとして使用されており、内部の一般公開は行われていません。ただし、スクラッチタイル貼りの外壁、円窓、レリーフ装飾などの建築的な見どころは、国際通りから外観をご鑑賞いただけます。
Qタイガービルヂングへのアクセス方法は?
A最寄り駅は都営大江戸線・都営浅草線の蔵前駅で、徒歩約2〜3分です。つくばエクスプレスの新御徒町駅からは徒歩約6分、東京メトロ銀座線の田原町駅からは徒歩約12分でアクセスできます。
Qいつ文化財に登録されましたか?
A平成20年(2008年)3月7日に、「造形の規範となっているもの」という基準に基づき、国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。
Qスクラッチタイルとは何ですか?
Aスクラッチタイルとは、焼成前のタイル表面に櫛状の工具で線を引いて模様をつけた外装用タイルのことです。フランク・ロイド・ライト設計の旧帝国ホテルにも使用されたことで知られ、大正末期から昭和初期の日本の近代建築を象徴する素材として広く用いられました。
Q蔵前地区にはほかにどのような見どころがありますか?
A蔵前は「東京のブルックリン」とも称される注目エリアで、職人の工房やクラフト系の雑貨店、スペシャルティコーヒーの焙煎所、チョコレートファクトリーなどが多数あります。隣接する浅草エリアへも徒歩圏内のため、歴史建築の散策とあわせて一日を通して楽しむことができます。

基本情報

名称 タイガービルヂング(TIGER BUILDING)
文化財区分 登録有形文化財(建造物)
登録年月日 平成20年(2008年)3月7日
登録基準 造形の規範となっているもの
竣工年 昭和9年(1934年)/昭和30年(1955年)改修
構造 鉄筋コンクリート造5階地下1階建、塔屋2か所付
建築面積 301 m²
所在地 東京都台東区蔵前4-13
所有者 タイガービルヂング株式会社
アクセス 都営大江戸線・都営浅草線 蔵前駅より徒歩約2〜3分

参考文献

タイガービルヂング — 文化遺産オンライン(文化庁)
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/197799
タイガービルヂング — Wikipedia
https://ja.wikipedia.org/wiki/タイガービルヂング
国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00006807

最終更新日: 2026.03.29