摩尼山の西麓に建つ天台宗の古刹、摩尼寺
摩尼寺は、鳥取県鳥取市覚寺にある天台宗の寺院で、承和年間(834〜848年)に円仁が開いたと伝わり、境内の本堂・山門・鐘楼の3棟が平成26年(2014年)12月19日に国の登録有形文化財に登録された。
読みは「まにじ」。山号を喜見山といい、地元では「摩尼さん」の愛称で呼ばれる。寺の公式サイトは天台宗安楽律法流の寺と名乗り、本尊を帝釈天としている。鳥取市観光サイトは千手観音菩薩もあわせてまつる寺として紹介している。
背後の摩尼山(標高357メートル)は、因幡の人々が亡くなったあと魂がいったんとどまる場所として信仰されてきた山である。文化庁の解説によれば、この山そのものが摩尼寺の境内を成しており、平成28年(2016年)10月3日には「摩尼山」の名で登録記念物となった。山頂近くの巨岩と岩窟から成る奥の院、日本海と鳥取砂丘を見渡す立岩(鷲が峰)がその中心にある。
山上から山麓へ移った摩尼寺の歩み
天和3年(1683年)の『因州喜見山摩尼寺縁起』は、比叡山の第3代座主円仁による開山を伝える。ただし鳥取環境大学が2010年に行った奥の院遺跡の発掘では、山上に境内が営まれたのは10世紀後半以降と判明した。開山伝承と考古学の年代には開きがある。
縁起は、天正9年(1581年)の羽柴秀吉による鳥取城攻めで摩尼山が焼かれ、元和3年(1617年)に池田光政が再興したと記す。江戸時代の地誌『因幡志』(1795年)は、焼かれたのは今の境内ではなく東の奥の院の谷にあった寺だとみている。
伽藍が山上から現在の山裾へ下りたのは、1688年から1795年の間とされる。鳥取環境大学の調査報告(2015年)は、比叡山安楽院の末寺となった享保3年(1718年)前後をその有力な時期に挙げている。安政5年(1858年)の『稲葉佳景 無駄安留記』には、すでに山麓の境内が描かれている。
いまの堂宇はそのあと順に整えられた。庫裡が文政6年(1823年)、本堂が万延元年(1860年)、山門が明治中期(調査報告は明治22年=1889年とする)、鐘楼が明治25年(1892年)、善光寺如来堂が明治45年(1912年)である。2013年に始まった鳥取環境大学の建造物調査が、本堂・山門・鐘楼の登録につながった。
摩尼寺の境内の配置と歩く順序
門前から本堂までは303段の石段が続く。石段のほぼ中ほどに建つ二重の楼門が仁王門で、平成17年(2005年)11月29日に鳥取県の保護文化財に指定されている。桃山時代に隠岐の焼火山雲上寺から移したという寺伝をもつが、調査報告は18世紀の建築と推定している。
仁王門をくぐってさらに石段を上ると、最上段の手前で道がL字に折れ、正面に山門が現れる。山門の左右に延びる袖塀は、曲がった石段を翼のように囲い込む。山門の東、石段を上がり切った角地に鐘楼が立ち、山門と鐘楼が並んで境内の表構えをつくっている。
山門をくぐった北側の奥が本堂である。本堂の西には園池の上を渡る廊下でつながる庫裡があり、東の一段高い造成地には善光寺如来堂が建つ。本堂と如来堂の間に伝教大師・弘法大師・慈覚大師をまつる三祖堂、鐘楼の脇に閻魔堂がある。三祖堂と閻魔堂は、もとは山上にあった堂を昭和戦後に山麓へ移して建て直したものである。
境内の奥からは、立岩、奥の院、賽の河原へ向かう山道が整えられている。登録記念物「摩尼山」の見どころはこの山道の先にある。
摩尼寺の参拝時間と行き方
摩尼寺の公式サイトによれば、参拝できるのは午前9時から午後4時30分まで。鳥取市観光サイトは午前9時30分からとしているので、早い時間に訪れるときは寺に確かめておきたい。戒壇巡りは300円。問い合わせは摩尼寺(電話0857-23-5300)。
車ならJR鳥取駅から約20分、鳥取西インターチェンジからも約20分で、門前に駐車場がある。鳥取市観光サイトは駐車台数を10台としている。公共交通では、JR鳥取駅から路線バスで約20分の「摩尼寺口」で降り、そこから約3.1キロの坂道を50分ほど歩く。帰りのバスの時刻は事前に調べておくとよい。
303段の石段は傾斜がきつい所もあるので、歩きやすい靴で上りたい。行事の日は境内がにぎわう。毎月1日に護摩焚き、7月26日から28日に帝釈天会式、4月と10月の第3日曜日に位牌供養と施餓鬼会が行われる。建物を落ち着いて見たいなら、こうした日を外すとよい。
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁):摩尼寺本堂
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010339
- 国指定文化財等データベース(文化庁):摩尼寺鐘楼
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010340
- 国指定文化財等データベース(文化庁):摩尼寺山門
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010341
- 文化遺産オンライン:摩尼山
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/273892
- 鳥取環境大学紀要 第13号(2015年):摩尼寺建造物の調査(PDF)
- https://www.kankyo-u.ac.jp/f/introduction/publication/bulletin/013/079-097.pdf
- 天台宗安楽律法流 喜見山 摩尼寺(公式サイト)
- https://kikennzan-mani.com/
- 鳥取市観光サイト:摩尼寺
- https://www.torican.jp/spot/detail_1109.html
最終更新日: 2026.10.04
基本情報
| 名称 | 摩尼寺 |
|---|---|
| 所在地 | 鳥取県鳥取市覚寺624 |
| 所有者 | 宗教法人摩尼寺 |
| 指定 | 登録有形文化財 3件・登録記念物 1件 |
| 座標 | 35.52966, 134.26338 |