摩尼寺本堂とは
摩尼寺本堂は、鳥取県鳥取市覚寺の摩尼寺境内に建つ万延元年(1860年)の仏堂で、平成26年(2014年)12月19日に国の登録有形文化財に登録された。
読みは「まにじほんどう」。南を向き、正面3間・奥行4間の入母屋造、桟瓦葺の屋根を架ける。文化庁のデータベースによる建築面積は151平方メートルで、境内で登録された3棟のうち最も大きい。303段の石段を上り、山門をくぐった正面奥に建つ。
建築年を確かめる手がかりは屋根裏にあった。2013年、鳥取環境大学の調査で「奉上棟帝釈天堂一宇」と書かれた棟札が見つかった。表に安政7年(1860年)3月、裏に万延元年6月の日付がある。同じ年の3月に改元があったため、2つの元号が1枚に並んでいる。棟札の文言どおり、この堂は本尊の帝釈天をまつる堂として建てられた。
摩尼寺本堂が登録された理由
摩尼寺本堂は第79回登録で、登録番号は31-0195。登録基準は「造形の規範となっているもの」である。同じ日に登録された山門と鐘楼が景観への寄与で登録されたのに対し、本堂は建物そのものの造形が評価された。
文化庁の解説が挙げるのは装飾の密度である。正面に千鳥破風を飾り、軒唐破風を付けた1間の向拝を張り出す。その向拝、外陣と内陣の境、仏壇のまわりを、龍や鳥獣、雲や波をかたどった彫刻で埋めている。文化庁はこれを幕末の時代的な特徴をよく示すものと評価した。
平面にも特徴がある。正面の1間分を外陣にあて、仏壇を堂の後ろ寄りに据えて内陣を広くとる。鳥取環境大学の調査報告(2015年)によれば、内陣は30畳の1室で、上に格天井を張り、厨子の両脇以外に柱を立てない。堂内の丸柱16本はすべてケヤキで、太いものは直径約40センチに達する。柱には上下を絞った粽(ちまき)があり、柱上に板状の台輪を回す。いずれも禅宗様の要素である。
摩尼寺本堂は前身の堂とも比べられる。安政5年(1858年)の『稲葉佳景 無駄安留記』は、ほぼ同じ位置にこれとよく似た堂を描く。ただしその絵には千鳥破風がなく、向拝も唐破風ではない単純な切妻屋根である。調査報告は、これを18世紀に境内が山上から下りた当初の本堂とみている。2年後の再建で、正面の構えが一段と華やかになったことになる。
摩尼寺本堂の見どころ
まず向拝を見上げたい。柱をつなぐ虹梁形の頭貫には雲や波の彫りが一面に入り、その中央を雲龍の彫刻が占める。柱の外へ突き出た木鼻は、頭貫の先が獏の頭、海老虹梁の先が獅子の頭に彫られている。調査報告によれば、海老虹梁には渦と若葉の絵様もあるが、高い位置にあるため細部は下からでは見にくい。
次に、少し離れて屋根の重なりを見る。入母屋の大屋根の正面に三角の千鳥破風、その下に弧を描く軒唐破風と、形の違う破風が上下に重なる。前身の堂にはなかったこの組み合わせが、万延元年の再建で加わった意匠である。
石段と山門の軸線に対して、摩尼寺本堂の向きはわずかにずれている。山門をくぐってすぐ立ち止まると、本堂の正面がほんの少し斜めに見えることに気づく。調査報告は、絵図の時代から本堂が同じ位置にあったことを指摘しており、石段と門が後から整えられた経緯をうかがわせる。
縁にも目を向けたい。正面と両側面には幅半間の切目縁が回り、擬宝珠を載せた高欄が付く。調査報告によれば、この擬宝珠には万延元年の銘がある。背面には庫裡へ渡る廊下が付く。
摩尼寺本堂の見学
摩尼寺本堂は境内の正面奥にあり、山門をくぐれば正面から全体を見渡せる。参拝できる時間は寺の公式サイトで午前9時から午後4時30分まで。外観は向拝の前と、東西の側面から見るのがよい。側面に回ると、正面1間の外陣と奥の内陣という奥行きの構成が屋根の長さから読み取れる。
堂内のどこまで上がれるか、撮影ができるかについては、寺の公式サイトにも鳥取市の案内にも記載が見当たらない。内陣の須弥壇や彫刻欄間を見たい場合は、寺務所で確かめてからにしたい。法要の最中は堂内の撮影を控えるのが礼儀である。境内への行き方と参拝の条件は摩尼寺のページにまとめてある。
Q&A
- 摩尼寺本堂はいつ建てられたのですか?
- 万延元年(1860年)の建築です。2013年に屋根裏で見つかった棟札に、安政7年3月と万延元年6月の日付が記されています。同じ年に改元があったため、元号が2つあります。
- 摩尼寺本堂はいつ登録有形文化財になりましたか?
- 平成26年(2014年)12月19日に、第79回登録として登録されました。登録番号は31-0195、登録基準は「造形の規範となっているもの」です。山門と鐘楼も同じ日に登録されています。
- 摩尼寺本堂の建築の特徴は何ですか?
- 正面3間・奥行4間の入母屋造桟瓦葺で、正面に千鳥破風と軒唐破風付きの向拝を備えます。向拝や内外陣境、仏壇まわりを龍・鳥獣・雲・波の彫刻で密に飾り、内陣は30畳の広い1室です。
- 摩尼寺本堂には何がまつられていますか?
- 棟札に「帝釈天堂」とあり、帝釈天をまつる堂として建てられました。寺の公式サイトは本尊を帝釈天としています。内陣の両脇の仏壇には四天王像が2体ずつ安置されています。
- 摩尼寺本堂は見学できますか?撮影はできますか?
- 境内は午前9時から午後4時30分まで参拝でき、外観は山門をくぐった正面から見られます。堂内に上がれる範囲と撮影の可否は公式の案内に記載がないため、寺務所で確かめてください。
基本情報
| 名称 | 摩尼寺本堂 |
|---|---|
| 所在地 | 鳥取県鳥取市覚寺624 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 平成26年(2014年)12月19日登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 建築面積151平方メートル(正面3間、奥行4間) |
| 所有者 | 宗教法人摩尼寺 |
| 公開状況 | 境内は午前9時〜午後4時30分に参拝可。堂内の拝観範囲は寺に要確認 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁):摩尼寺本堂
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010339
- 文化遺産オンライン:摩尼寺本堂
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/263432
- 鳥取環境大学紀要 第13号(2015年):摩尼寺建造物の調査(PDF)
- https://www.kankyo-u.ac.jp/f/introduction/publication/bulletin/013/079-097.pdf
- 天台宗安楽律法流 喜見山 摩尼寺(公式サイト)
- https://kikennzan-mani.com/
最終更新日: 2026.10.04