和歌山城の北東に鎮まる式内社、志磨神社
志磨神社は、和歌山県和歌山市中之島に鎮座する式内社で、昭和19年(1944年)に建てられた拝殿・手水舎・神門及び袖塀の3件が、令和6年(2024年)3月6日に国の登録有形文化財に登録された。
読みは「しまじんじゃ」。文化庁のデータベースは、この神社を和歌山城の北東に位置する式内社と紹介している。式内社は、平安時代にまとめられた延喜式の神名帳に名が見える神社をいう。いまの境内はJR紀和駅のすぐ南、市街地の通りに面した一画にある。
紀伊民報が和歌山県教育委員会の発表として伝えたところでは、志磨神社はもともと国津大明神と呼ばれていた。現在の社名を名乗るのは江戸時代に入ってからである。
志磨神社の歩み―戦乱からの再興と空襲
和歌山県の文化財解説によれば、志磨神社は天正13年(1585年)、羽柴秀吉の紀州攻めにともなう戦乱で社殿を失った。再興は寛永5年(1628年)で、いまの本殿は延宝6年(1678年)に建てられた。元禄元年(1688年)には紀伊藩の命によって志磨神社を称するようになり、藩とのかかわりが深まった。
本殿は一間社春日造の銅板葺(もとは檜皮葺)で、間口は1.8メートル。春日造としては大きめで、正面の梁を省いて唐破風を設けるという、県内では珍しい形をとる。各所に鳥や獣の彫刻を置き、漆と絵具で彩った華やかな社殿で、令和4年(2022年)に和歌山県の県指定文化財となった。
昭和20年(1945年)の和歌山大空襲で市の中心部は大きな被害を受けたが、志磨神社はその戦禍を免れている。17世紀の本殿と、その前年に完成したばかりの昭和の社殿が、そろって焼け残った。
昭和19年の社殿と3件の登録
拝殿・手水舎・神門及び袖塀は、いずれも戦時下の昭和19年(1944年)に建てられた。和歌山県の解説は、良材を使い細部まで整えた拝殿と、同じ時期の手水舎、神門及び袖塀がともに境内の歴史的景観をつくっていると述べる。そのうえで、空襲の被害を受けた和歌山市中心部に残る数少ない良質な近代和風建築として貴重だと評価している。
3件は令和5年(2023年)11月24日の文化審議会の答申を経て、令和6年(2024年)3月6日に第106回の登録を受けた。登録番号は拝殿が30-0344、手水舎が30-0345、神門及び袖塀が30-0346と続く。登録基準は拝殿が「造形の規範となっているもの」、手水舎と神門及び袖塀が「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。
規模にはかなりの差がある。文化庁のデータベースでは、拝殿は建築面積93平方メートルで、昭和42年(1967年)に改修された。手水舎は建築面積5.8平方メートル。神門は間口2.7メートルで、左右の袖塀は総延長16メートルに及ぶ。
志磨神社の境内の歩き方
参道は南の北大通りの側から北へ延びる。その正面、境内の南端に神門が建ち、左右に袖塀が続いて境内の南の縁を区切る。神門をくぐって進むと、参道の脇に西を向いて手水舎が立つ。
参道の突き当たりが拝殿である。文化庁のデータベースは拝殿を本殿の南側に建つと記し、答申の資料は境内の北東に位置すると書く。拝殿の背後には祝詞殿が、北西には神饌所が付属し、本殿はさらにその奥に控える。
南から北へ、神門、手水舎、拝殿、本殿の順に並ぶので、参道を一度歩けば登録された3件をすべて見て回れる。それぞれの建物の細部と見る位置は、各棟のページで紹介している。
志磨神社の参拝と行き方
志磨神社には公式のウェブサイトが見当たらず、参拝時間や拝観料を示した公的な案内も確認できない。登録された3件はいずれも境内の参道沿いにあり、外観は参道から見られる。拝殿の内部は祭事や祈祷の場で、一般公開の案内は出ていない。撮影の決まりも公表されていないので、祭事の最中は控え、現地の掲示に従いたい。
最寄り駅はJR紀勢本線の紀和駅で、境内は駅の南、直線でおよそ200メートルの位置にある。ただし駅は境内の北側にあり、参道の入口は南の北大通りに面しているため、正面から入るには境内を回り込むことになる。南海本線の和歌山市駅からは東へ約1.6キロメートル、歩いて20分ほどである。
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁):志磨神社拝殿
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014909
- 国指定文化財等データベース(文化庁):志磨神社手水舎
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014910
- 国指定文化財等データベース(文化庁):志磨神社神門及び袖塀
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00014911
- 文化遺産オンライン:志磨神社拝殿
- https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/609179
- 文化庁:文化審議会の答申(登録有形文化財(建造物)の登録)令和5年11月24日
- https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/93969901.html
- 文化庁:同 答申 別紙(PDF)
- https://www.bunka.go.jp/koho_hodo_oshirase/hodohappyo/pdf/93969901_01.pdf
- 和歌山県教育委員会:国登録有形文化財
- https://www.pref.wakayama.lg.jp/prefg/500700/mokuroku/d00155458.html
- わかやまの文化財(和歌山県教育庁文化遺産課):志磨神社
- https://wakayama-bunkazai.jp/bunkazai/bunkazai-spot-1029/
- わかやまの文化財(和歌山県教育庁文化遺産課):志磨神社本殿
- https://wakayama-bunkazai.jp/bunkazai/bunkazai-spot-963/
- 紀伊民報AGARA:和歌山県文化財に志磨神社本殿など5件指定
- https://www.agara.co.jp/article/180761
最終更新日: 2026.10.05
基本情報
| 名称 | 志磨神社 |
|---|---|
| 所在地 | 和歌山県和歌山市中之島677 |
| 所有者 | 宗教法人志磨神社 |
| 指定 | 登録有形文化財 3件 |
| 座標 | 34.24008, 135.18082 |