旧丸中横仲商店 ― 長井・あら町に残る5棟の商家の蔵
旧丸中横仲商店は、山形県長井市あら町にある商家の蔵群で、江戸時代末期から昭和前期にかけて建てられた5棟の蔵が、平成27年(2015年)8月4日にそろって登録有形文化財(建造物)に登録された。
登録されたのは砂糖蔵・土蔵・質蔵・粉蔵・江戸蔵の5棟で、登録番号は06-0154から06-0158までの連番になっている。読みは「きゅうまるなかよこなかしょうてん」。山形県観光物産協会の観光案内では「旧丸中横仲商店蔵群」の名で紹介されている。
所在地の表記は資料によって異なる。文化庁のデータベースは棟ごとに地番を載せ、砂糖蔵があら町2459-2他、土蔵と質蔵が2460他、粉蔵と江戸蔵が2461他となっている。山形県の文化財データベースは5棟とも2459-2他で、県の観光案内は住居表示のあら町6-49を載せる。いずれも同じ一つの敷地を指している。
最上川の舟運で栄えた長井と旧丸中横仲商店
長井市の市勢要覧によると、長井に最上川の舟運が開かれたのは元禄7年(1694年)で、西村久左衛門の手による。酒田を経て京や大坂と結ばれると、長井の舟場は米沢藩の物資を積み出す起点となり、商取引の町として多くの豪商を生んだ。舟運は、のちのフラワー長井線につながる軽便鉄道が大正3年(1914年)に開通する頃まで、200年以上続いたという。
あら町はその商人町の一角で、県の観光案内は、かつて小麦・砂糖・食品・酒の卸や質屋が営まれた通りとして紹介している。旧丸中横仲商店も小麦・砂糖・食品などの卸売を営んだ店で、砂糖蔵・粉蔵といった5棟の名称からは、扱う品ごとに蔵を使い分けていた様子がうかがえる。質蔵については、質屋を営んでいた時期に質物を納めたと伝わる、と文化庁の解説は記す。
店の創業や屋号の由来を記した公開資料は見当たらない。蔵の年代から分かるのは、江戸時代の末にはすでにこの敷地で蔵を構えていたこと、そして明治初めに蔵を相次いで建て増し、昭和に入ってからも木造の粉蔵を加えていることである。
旧丸中横仲商店の配置 ― 3列に並ぶ蔵
旧丸中横仲商店の敷地は東西に長い。文化審議会の答申(平成27年3月13日)によると、敷地の中央南寄りに大型の砂糖蔵が建ち、その北東側に土蔵と質蔵、さらに北に粉蔵と江戸蔵がそれぞれ2棟ずつ並んで、全体が3列の構成になっている。県の観光案内が書くとおり、5棟は長手方向をそろえて建つ。
- 南の列:砂糖蔵(明治7年・1874年、土蔵造平屋建)
- 中央の列:西に土蔵(明治7年・1874年)、東に質蔵(明治8年・1875年)。どちらも土蔵造2階建
- 北の列:西に粉蔵(昭和前期、木造平屋建)、東に江戸蔵(江戸末期、土蔵造2階建)
文化庁のデータベースは、江戸蔵の年代を江戸末期(1830〜1868年)、粉蔵を昭和前期(1926〜1945年)としている。5棟のうち4棟が土蔵造で、粉蔵だけが木造である。規模は桁行4間から6間半、梁間2間から3間とまちまちで(1間は約1.8メートル)、なかでも砂糖蔵は桁行約12メートルと群のなかで最も長い。
仕上げには共通点がある。外壁は白い漆喰を基調とし、土蔵と質蔵では要所に漆喰を用いて白黒の対比をつける。開口部の土戸には、戸と枠の合わせ目を段状に塗り重ねる掛子塗が見られ、答申は江戸蔵などについて高い左官技術を示すものと評している。砂糖蔵・土蔵・質蔵の3棟は、蔵本体の上に別の屋根をのせる置屋根の形式をとる。
各棟の構造や細部は、それぞれのページで詳しく扱っている。
旧丸中横仲商店が登録された理由
5棟の登録基準はいずれも「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。文化庁の答申は、最上川の舟運で栄えた長井市街地に残る商家の土蔵群として5棟をまとめて取り上げ、3列に整然と並ぶ配置と、黒漆喰や掛子塗に見る左官の仕事を特徴に挙げた。
年代の幅も見逃せない。幕末の江戸蔵、明治初めの土蔵3棟、昭和前期の粉蔵が一つの敷地にそろい、商いの移り変わりに合わせて蔵が増えていった過程をたどることができる。県の観光案内は、実用本位の蔵でありながら一部に黒漆喰を用いている点と、東側から見ると隣の敷地の蔵もあわせて多くの蔵が群をなす眺めになる点を、当地では珍しい風景として紹介している。
長井市内には、このほか齋藤家住宅や山一醤油店など、舟運の時代の商家の建物が登録有形文化財として残っている。旧丸中横仲商店の5棟は、その中で蔵だけがまとまって登録された例である。
旧丸中横仲商店の見学案内 ― 公開状況とアクセス
旧丸中横仲商店の5棟は個人が所有しており、一般公開はされていない。山形県の文化財データベースも公開の有無を「無」としている。敷地や蔵の中には入れないので、見学は敷地の外から外観を眺める形になる。私有地に立ち入らないよう注意したい。
県の観光案内によれば、表の店舗は改装されてカフェとして使われ、地域の催しにも活用されている。店の営業日や催しの予定は変わることがあるため、立ち寄る場合は事前に確かめておくとよい。問い合わせ先として、県の観光案内は一般社団法人やまがたアルカディア観光局(電話0238-88-1831)を挙げている。
鉄道なら、東京から山形新幹線で赤湯駅まで約2時間30分、赤湯駅から山形鉄道フラワー長井線に乗り換えて長井駅まで約35分かかる。長井駅から旧丸中横仲商店のあるあら町までは南東へ地図上でおよそ1キロメートルで、歩いて15分前後を見ておけばよい。車の場合、長井市の観光案内は東北中央自動車道の南陽高畠ICから国道113号・287号を経て約25分としている。見学者向けの駐車場の案内は見当たらない。
蔵群の全体像をつかむなら、県の観光案内が勧めるとおり敷地の東側から眺めるのがよい。撮影の可否について公式の案内は見当たらない。公道から外観を撮る場合も、住まいや店の利用者が写り込まないよう配慮したい。
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁)旧丸中横仲商店砂糖蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010550
- 国指定文化財等データベース(文化庁)旧丸中横仲商店土蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010551
- 国指定文化財等データベース(文化庁)旧丸中横仲商店質蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010552
- 国指定文化財等データベース(文化庁)旧丸中横仲商店粉蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010553
- 国指定文化財等データベース(文化庁)旧丸中横仲商店江戸蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00010554
- 文化庁 登録有形文化財(建造物)の登録について(平成27年3月13日 文化審議会答申)
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/pdf/bunkashingi_toshin_150313.pdf
- 山形の宝 検索navi(山形県)旧丸中横仲商店質蔵
- https://www.pref.yamagata.jp/cgi-bin/yamagata-takara/?m=detail&id=1869
- やまがたへの旅(山形県観光物産協会)旧丸中横仲商店蔵群
- https://yamagatakanko.com/attractions/detail_11292.html
- やまがたへの旅(山形県観光物産協会)あら町通りエリア
- https://yamagatakanko.com/attractions/detail_10295.html
- 長井市 市勢要覧 令和2年版
- https://www.city.nagai.yamagata.jp/material/files/group/7/R2_aromashi.pdf
- 長井市観光ポータルサイト アクセス
- https://kankou-nagai.jp/access/
最終更新日: 2026.09.26
基本情報
| 名称 | 旧丸中横仲商店 |
|---|---|
| 所在地 | 山形県長井市あら町2460他 |
| 所有者 | 個人 |
| 指定 | 登録有形文化財 5件 |
| 座標 | 38.10095, 140.03852 |