土戸とは
土戸は、木の骨組に土を塗り重ね、漆喰で仕上げた厚い扉である。木の扉と違って燃えにくく、土蔵造の戸口や城郭の門に用いられる。
土蔵では戸口と窓の両方に用いる。愛知県の髙木家住宅蔵は大正初期の建築で、「外壁は白漆喰仕上で、腰を海鼠壁とする。西妻に瓦葺庇をつけて戸口を開き、両開の黒漆喰塗土戸を釣込む。2階窓は片開の漆喰塗土戸を釣込み、瓦庇をつける」と解説されている。1階の戸口は両開き、2階の窓は片開きと使い分けている。
宮城県の三事堂ささ木土蔵は大正中期の建築で、「南面中央、店舗内部に戸口を開き、漆喰塗の両開き土戸を釣り込む」と解説されている。愛知県の西蓮寺蔵は明治期の建築で、「1階には庇を設け、北寄りに両開土戸を構え」と記される。
黒漆喰で仕上げる例があるのは、汚れが目立ちにくく、白漆喰との対比が意匠になるためである。髙木家住宅蔵の記述がその例にあたる。
城郭での用法
城郭でも同じ目的で用いられる。愛媛県の松山城筋鉄門は昭和42年の復元で、「上層は渡廊下とし、両側出入口に両開きの土戸を備える」と解説されている。同じ松山城の内門も同じ構成である。
松山城多聞櫓は「内部は一室で、小天守側の上り階段上の出入口に両開きの土戸を備える」と解説されている。天守群の建物どうしをつなぐ位置に土戸を置き、一棟で火が出ても他へ回らないようにしている。
土戸は戸前庇と組で用いられることが多い。扉が重く雨に弱いため、上に庇を掛けて保護する。髙木家住宅蔵の「瓦葺庇をつけて戸口を開き」という記述がこの関係を示している。
現地では扉の厚みと縁の断面を見るとよい。板戸より明らかに厚く、縁が段状に塗り重ねられていれば土戸である。段状の仕上げは掛子塗と呼ばれ、閉めたときの隙間を塞ぐ。
参考文献
- 文化庁 文化財の紹介 登録有形文化財(建造物)
- https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkazai/shokai/yukei_kenzobutsu/toroku_yukei.html
- 国指定文化財等データベース(文化庁)髙木家住宅蔵/両開の黒漆喰塗土戸を釣込み、2階窓は片開の漆喰塗土戸
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00004246
- 国指定文化財等データベース(文化庁)三事堂ささ木土蔵/店舗内部に戸口を開き、漆喰塗の両開き土戸を釣り込む
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005220
- 国指定文化財等データベース(文化庁)西蓮寺蔵/1階には庇を設け、北寄りに両開土戸を構える
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00006609
- 国指定文化財等データベース(文化庁)松山城筋鉄門/一重櫓門、柱の角など要所に筋鉄を打ち、天守南側の枡形を構成する
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013001
- 国指定文化財等データベース(文化庁)松山城多聞櫓/小天守と南隅櫓をつなぐ一重多聞櫓、両下造本瓦葺
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00013000
最終更新: 2026.09.03