尾根の上に残された山岳民家

東京都西多摩郡檜原村、標高およそ750メートルの尾根の上に小林家住宅は建つ。本州側で東京都に属する唯一の村の、さらに山深い一角である。平成20年(2008年)まで人が暮らしていた茅葺の民家で、建てられたのは18世紀前半とみられる。年代を記した棟札のような記録は残っておらず、骨組みや部材を調べた結果から推定された年代である。

檜原村では、谷筋ではなく尾根筋に家を構える例が多かった。沢沿いは増水の危険があり、行き来には尾根の上のほうが安全だったためである。小林家住宅が建つのは三つの尾根が出合う地点で、田畑や山、近隣との往来に都合がよかったと考えられている。

小林家は村の組頭を勤めた家柄と伝わる。建物の規模や仕上げにも、その立場がうかがえる。

重要文化財に指定された理由

国が重要文化財に指定したのは昭和53年(1978年)1月21日。理由はおおむね二つある。後世の改変が少なく当初の姿をよく保っていたこと、そして山間にありながら造りが比較的良質だったことである。これらが重なり、東京都西部から隣接する山梨県にかけての民家のつながりを知るうえで確かな手がかりとなる建物と評価された。

屋根にその特徴がはっきり出ている。上部を切妻、下部を寄棟とする入母屋造の茅葺で、破風が大きく、中央を一段高くした形は地元で兜造りと呼ばれる。武士の兜の形に由来する呼び名である。間取りは三間取広間型で、広い座敷(広間)を中心に構成され、その広間には隅納戸が付く。

建物は桁行14.8メートル、梁間9.3メートル。西側に突出部が付き、員数は1棟と数えられる。

見どころ

平成23年(2011年)から3年をかけた保存修理を経て、建物は創建当時の姿に復原された。この工事にはひとつの課題があった。幕末ごろ、現金収入を得るための養蚕を行うために、内部が大きく改装されていたのである。修理にあたっての調査でその経緯がたどられ、改装部分を取り除いて古い間取りが取り戻された。

内部に入ると、囲炉裏の煙を長年浴びて黒光りした柱や梁が目に入る。太い大黒柱や重い梁を見れば、建物が重ねてきた歳月がわかる。室内は自由に見学できる。

母屋の裏手、かつて畑だった斜面は、いまはつつじ公園として整えられている。赤紫の花をつける野生種のミツバツツジが、3月下旬から4月中旬にかけて咲く。

行き方と周辺

建物まで車道は通じていない。都心からはJR五日市線の武蔵五日市駅まで行き、藤倉行きの西東京バスに乗り換える。終点の藤倉バス停までおよそ50分。そこから1.5キロほど、ゆるやかな坂を登った先に入口がある。入口からは、急な坂を20分ほど歩く登山ルートと、小型のモノレールの二つに道が分かれる。

話題になりやすいのはモノレールのほうである。もとは修理工事の資材を運ぶために敷かれ、完了後に村へ移管されて旅客用に転用された。定員は6名、最大傾斜は43度、乗車時間は約15分。利用には電話での事前予約が必要になる。

車で20分ほどの払沢の滝は、4段あわせて落差60メートル。東京都で唯一、日本の滝百選に選ばれている。モノレール乗り場からは、徒歩5分ほどの雨乞いの滝も近い。

Q&A

Q予約は必要ですか。
Aモノレールを利用する場合は、電話での事前予約が必要です。前日までの連絡が確実です。見学そのものは無料ですが、場所が山間にあり開館時間も季節で変わるため、事前の連絡をおすすめします。
Q入館料はかかりますか。
A見学は無料です。モノレールは村が別に運行しています。
Q開館日と時間を教えてください。
A日中の開館で、おおむね10時から16時、11月から3月は閉館が早まります。火曜定休(火曜が祝日の場合は翌日)、年末年始は休みです。最新の情報は公式サイトでご確認ください。
Q中に入れますか。撮影はできますか。
A室内は自由に見学できます。黒光りした柱や梁を間近に見ることができます。
Qいつ訪れるのがよいですか。
A裏手のつつじが咲く3月下旬から4月中旬、そして尾根に新緑が広がる初夏が見頃です。

基本データ

名称小林家住宅(こばやしけじゅうたく)
所在地東京都西多摩郡檜原村藤原4994番地
種別重要文化財(建造物)
指定年月日昭和53年(1978年)1月21日
時代江戸中期(18世紀前半)
構造・規模入母屋造、茅葺、西面突出部附属/桁行14.8メートル、梁間9.3メートル
員数1棟
入館料無料
管理藤倉大杉の会

参考文献

文化遺産オンライン(文化庁)
https://bunka.nii.ac.jp/db/heritages/detail/188413
国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/573
重要文化財小林家住宅 公式サイト
https://kobayashike.tokyo/
檜原村観光協会
https://hinohara-kankou.jp/spot/kobayashike/

最終更新日: 2026.06.04