味噌蔵の並びに建つ白と黒の事務所

八丁味噌本社事務所は、愛知県岡崎市八帖町にある昭和2年(1927年)竣工の木造2階建の事務所建築で、平成8年(1996年)に国の登録有形文化財に登録された。所有するのは正保2年(1645年)創業の合資会社八丁味噌、屋号をカクキューという。

敷地に足を踏み入れると、黒い下見板を張った味噌蔵の列のなかに、白い柱型を見せる洋風の建物が現れる。南北に細長い2棟が中庭と土間、渡り廊下を介して接続し、全体でひとつの建物として扱われている。中央部を一段高く持ち上げ、頂部に棟飾りを載せる構えは、西欧のバシリカ式教会堂の立面に通じるものがある。屋根はトタン葺、建築面積は339平方メートル。

建てられた事情は記録に残っている。それまでカクキューの店舗は旧東海道に面していたが、国道1号線の開通で人と車の流れが変わり、旧店舗も手狭になっていた。そこへ大正12年(1923年)の関東大震災の報せが加わり、丈夫な建物を構える必要が強く意識される。工事は大正の末に始まり、昭和2年に完成した。

以来、ここで事務が執られている。会社は現在もこの建物を本社屋と呼び、建設当時からほとんど手を加えずに使い続けている。

愛知県で最初に登録された2件のうちの1件

八丁味噌本社事務所の登録基準は「造形の規範となっているもの」である。登録番号は23-0001。同じ平成8年(1996年)12月20日に登録された八丁味噌本社蔵(史料館)が23-0002で、この2件が愛知県で最初の国の登録有形文化財となった。文化財を登録して守る制度そのものが始まって間もない時期の登録である。

評価の中心にあるのは、和風の建物群のただなかに置かれた洋風建築でありながら、周囲と衝突していない点だろう。白い柱型と濃い茶色の下見板という配色は、黒板壁と白漆喰でできた味噌蔵の景色と響き合う。洋館を建てるにあたって、色だけは蔵の側に寄せたということになる。

内部が洋風の意匠でまとめられていることも、登録時の解説に記された。昭和のはじめ、地方の同族企業が自社の顔として何を選んだのか。八丁味噌本社事務所はその判断がそのまま残った建物である。

正面に立って見るべきところ

八丁味噌本社事務所は外観のみの公開なので、見どころは正面に集まっている。まず中央の一段高い部分と、その頂部の棟飾りを見上げたい。左右の低い屋根とのあいだに段差ができ、正面の輪郭に山型のリズムが生まれている。

次に壁面。白く塗られた柱型が等間隔に立ち、そのあいだを濃い茶色の下見板が水平に埋める。縦の白と横の茶が交差するこの割り付けが、遠目にも建物の性格を決めている。

南北2棟がどこでつながっているのかは、外からでは分かりにくい。屋根の連なりを目で追うと、途切れているように見えて実は渡り廊下と土間で結ばれていることに気づく。

建物の来歴には、事務所の枠を超えた話も含まれる。北側の棟の2階は社交の場として使われ、のちには日曜学校のような地域の集まりにも充てられた。応接室には桜や杉の太い銘木が使われており、事業が伸びていた時期の建築であることがうかがえる。内部は非公開だが、こうした記録を知って外から眺めると、窓の並びの意味が変わって見える。

前庭には、明治維新の廃城令で岡崎城天守が取り壊された際に譲り受けたと伝わるソテツが植えられている。竣工当時、この建物については「地震のときは外へ逃げるより、なかにいたほうが安全」と言われたとも伝えられる。

見学方法とアクセス

八丁味噌本社事務所の内部は公開されていない。見学できるのは外観だけである。ただし敷地は「八丁味噌の郷」として開かれており、事務所の建つ一角までは自由に入れる。

ガイド付きの見学は入場料無料。見学時間は午前10時から午後4時で、平日は毎時00分、土曜・日曜・祝日は毎時00分と30分に出発する。12時30分の回は当日店頭で確認したい。定員は各回50名、受付は開始5分前に締め切られる。個人は予約不要だが、団体は事前予約が必要になる。

コースは受付から史料館、熟成蔵、試食コーナーを経て売店に至る。建物のあいだは屋外を歩くため、夏の暑い時間帯は内容が変更されることがある。売店は午前9時から午後5時まで。年末年始の12月31日から1月2日までは休業する。

写真については、八丁味噌本社事務所は外観だけの公開なので、屋外から撮ることになる。見学コースには稼働中の製造の場が含まれるため、蔵の内部での撮影は案内係の指示に従いたい。

鉄道では名鉄名古屋本線の岡崎公園前駅、または愛知環状鉄道の中岡崎駅から徒歩5分。車なら東名高速道路の岡崎インターチェンジから15分、伊勢湾岸自動車道の豊田東インターチェンジから20分で、普通車40台とバス10台分の駐車場がある。

Q&A

Q八丁味噌本社事務所の内部は見学できますか?
A内部は公開されていません。公開されているのは外観のみで、応接室や2階の部屋に入ることはできません。同じ敷地の八丁味噌本社蔵(史料館)は内部が公開されており、ガイド付き見学のコースに含まれています。
Q八丁味噌本社事務所を見るのに予約や料金は必要ですか?
A入場料は無料で、個人での見学に予約は要りません。ガイド付きの見学は午前10時から午後4時の間に出発し、平日は毎時00分、土曜・日曜・祝日は毎時00分と30分の設定です。団体は事前予約が必要です。
Q八丁味噌本社事務所へ電車で行くにはどうすればよいですか?
A名鉄名古屋本線の岡崎公園前駅、または愛知環状鉄道の中岡崎駅から徒歩5分です。2つの駅は隣接しているので、どちらからでも同じ道順になります。車の場合は東名高速道路の岡崎インターチェンジから15分、駐車場は普通車40台分です。
Q八丁味噌本社事務所はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか?
A昭和2年(1927年)の竣工で、工事は大正の末に始まっています。国の登録有形文化財に登録されたのは平成8年(1996年)で、登録番号は23-0001。同時に登録された八丁味噌本社蔵(史料館)とあわせ、愛知県で最初の登録となりました。
Q八丁味噌本社事務所で写真を撮ってもよいですか?
A外観のみの公開ですので、写真は屋外から撮ることになります。正面が撮りやすいのは午前中です。見学コースには稼働中の製造の場が含まれるため、蔵の内部での撮影については案内係の指示に従ってください。

基本データ

名称八丁味噌本社事務所
所在地愛知県岡崎市八帖町字往還通69
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成8年(1996年)登録
員数1棟
寸法木造、2階建、トタン葺、建築面積339平方メートル
所有者合資会社八丁味噌
公開状況外観のみ公開、見学は無料

参考文献

国指定文化財等データベース 八丁味噌本社事務所(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00000050
文化遺産オンライン 八丁味噌本社事務所
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/184780
国登録:建造物 八丁味噌本社事務所・蔵(史料館)(岡崎市)
https://www.city.okazaki.lg.jp/1300/1304/1332/p021520.html
本社屋(合資会社八丁味噌)
https://www.kakukyu.jp/facilities_honsha.asp
工場見学/アクセスマップ(合資会社八丁味噌)
https://www.kakukyu.jp/facilities.asp
法人・団体・旅行会社の方へ(合資会社八丁味噌)
https://www.kakukyu.jp/facilities_tours.asp
会社概要/沿革(合資会社八丁味噌)
https://www.kakukyu.jp/company_outline.asp

最終更新日: 2026.09.02