旧石原家住宅主屋とは

旧石原家住宅主屋は、愛知県岡崎市六供町にある安政6年(1859年)建築の商家住宅で、平成23年(2011年)7月25日に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。

道が交わる角地に建ち、北面を正面とする。間口18メートル、奥行9.1メートル、建築面積は163平方メートル。切妻造の大屋根に桟瓦葺を載せ、南・北・東の三面には一階の外側に下屋がまわる。文化庁の国指定文化財等データベースは、登録番号を23-0338、第70回の登録として記録している。

正面に立つと、視線はまず土間をふさぐ大戸に向かう。その左右に太格子と出格子が並び、通りに対して町家らしい面をつくっている。

石原家と安政6年の普請

石原家は米穀と金融を本業とした商家で、江戸時代には六供杉本村の庄屋を、明治維新の後には戸長を務めた。岡崎市の文化財解説は、当時の庄屋の住まいが市街地に残る貴重な例だと述べている。旧石原家住宅主屋はその住まいそのものである。

建築年は安政6年(1859年)。所有者が公開している家の記録によれば、建てたのは当時の当主・石原東十郎で、米穀のほか薪や炭も扱い、京都の公家衆と交わりがあったと伝えられる。同じ記録は、商家でありながら間取りに農家の方式が採られている点を珍しいとしている。

昭和期には当主の娘・石原愛子が近隣の学校で音楽を教えるかたわら、この家でピアノを教えて生計を立てた。昭和50年ごろ、昭和風に改装されていた部分が外され、建設当時に近い姿へ戻されている。その後は江戸期の料理を供する店や民芸店、喫茶として使われた時期もあった。

登録有形文化財としての価値

旧石原家住宅主屋の登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。同じ屋敷地に建つ土蔵と庭門も同じ日に登録されており、三棟がひとまとまりの屋敷構えとして評価された。平成25年(2013年)8月には、岡崎市の景観重要建造物にも指定されている。

評価の中心にあるのは平面である。東寄りに土間を通し、西側には2列各3室を並べ、その西端に仏間と座敷を置く。街路に面した側は町家の構えを取り、内側の間取りには農家の方式が混じる。庄屋という立場と米穀商という生業が、一軒の平面の上でそのまま重なっている。

なお構造の記載には資料間の差がある。文化庁データベースの「構造及び形式等」欄は木造平屋建とするが、同じデータベースの解説文はつし二階建、岡崎市の解説は木造2階建てとしている。屋根裏に低い階を持つ、いわゆるつし二階と理解するのが実際の姿に近い。

見どころ

通りに向いた顔

大戸、太格子、出格子。この三つが北面に横一列に並ぶ。太格子は角材を密に立てたもので、内からは外がよく見え、外からは中が見えにくい。米や金銭を扱う家が通りとの間に置いた仕切りであり、装飾ではない。両妻側の外壁は大壁の漆喰塗の上に下見板を張り、雨の当たる下半分を板で守っている。

土間から座敷へ

大戸をくぐると土間が奥へ伸びる。ここは荷を運び入れ、人が出入りし、火を使う場所だった。土間の西側に部屋が二列に並び、突き当たりに仏間と座敷が来る。表から奥へ進むほど床が改まり、天井が整い、客の格が上がる。順路をたどるだけで、この家がどう使われていたかが読み取れる。

直しの跡を見る

旧石原家住宅主屋は補修を重ねながら現役を保ってきた建物である。平成26年(2014年)には主屋の瓦屋根を160年ぶりに葺き替えた。平成30年から翌年にかけては犬走りの土間を直している。令和7年(2025年)には、車両の衝突で生じた表側の破損を、建物を引いて歪みを戻す曳家の手法で復旧する工事が11月初旬に完了した。中庭に面した板戸に残る黒い点を、家では戦時の焼夷弾の痕と語り継いでいる。

見学方法とアクセス

旧石原家住宅主屋は個人が受け継ぐ住まいであり、通常は公開されていない。年に一度、秋に愛知県内の登録有形文化財を一斉に公開する「あいちのたてもの博覧会」に合わせて所有者が独自の催しを開き、その日に内部を見学できる。令和7年(2025年)は11月8日に「夜まで文化財」と題した催しが開かれ、昼から夜まで建物が開かれた。

公開日は毎年変わる。所有者の公式サイトが例年9月ごろに更新されるので、秋の予定を立てる前に確認したい。年によっては自由見学の時間帯に加えて、所有者や専門家による建物解説が定員つきの予約制で行われる。入場料の有無や飲食の提供も催しごとに異なる。

最寄り駅は名鉄名古屋本線の東岡崎駅。旧石原家住宅主屋までは北へおよそ1.1キロ、徒歩15分ほどである。岡崎城のある岡崎公園からは東へ約1キロで、城下を歩いてつなぐこともできる。周辺は静かな住宅地で、駐車場の案内は催しごとに確認が必要になる。

撮影の可否は公開ごとに所有者が案内する。屋敷は生活と管理の続く私有地なので、公開日以外は道路から外観を眺めるにとどめたい。

Q&A

Q旧石原家住宅主屋は見学できますか。公開日はいつですか。
A通常は非公開です。毎年秋の「あいちのたてもの博覧会」に合わせて所有者が催しを開き、その日に内部を見学できます。令和7年(2025年)は11月8日でした。日程は毎年変わるため、所有者の公式サイトで確認してください。
Q旧石原家住宅主屋へのアクセスは。最寄り駅からどのくらいですか。
A名鉄名古屋本線の東岡崎駅から北へ約1.1キロ、徒歩15分ほどです。岡崎城のある岡崎公園からは東へ約1キロ。所在地は岡崎市六供町字杉本70です。
Q旧石原家住宅主屋はいつ、誰によって建てられたのですか。
A安政6年(1859年)の建築です。所有者が公開している家の記録によれば、当時の当主・石原東十郎が建てたと伝えられます。昭和40年と昭和53年に改修を受けています。
Q旧石原家住宅主屋はどの制度で保護されていますか。
A平成23年(2011年)7月25日に国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。登録番号は23-0338、登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」です。平成25年(2013年)には岡崎市の景観重要建造物にも指定されています。
Q旧石原家住宅主屋で写真を撮ってもよいですか。
A撮影の可否は公開日ごとに所有者が案内します。事前に確かめたい場合は公式サイトの問い合わせ先へ。公開日以外は私有地に立ち入らず、道路から外観を眺めてください。

基本情報

名称旧石原家住宅主屋
所在地愛知県岡崎市六供町字杉本70
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成23年(2011年)
員数1棟
寸法間口18メートル、奥行9.1メートル、建築面積163平方メートル
所有者有限会社いしはら
公開状況通常非公開。毎秋の特別公開日のみ公開

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース 旧石原家住宅主屋
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008701
文化遺産オンライン 旧石原家住宅主屋
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/213742
岡崎市 国登録:建造物 旧石原家住宅主屋・土蔵・庭門
https://www.city.okazaki.lg.jp/bunka/torikumi_bunka/1004568/1004592/1004595/1004613.html
文化財ナビ愛知 旧石原家住宅主屋
https://jmapps.ne.jp/aichi_bunkazai/det.html?data_id=2150
国登録有形文化財「旧石原家住宅」(所有者公式サイト)
https://www.orieotsuji.com/%E6%97%A7%E7%9F%B3%E5%8E%9F%E5%AE%B6%E4%BD%8F%E5%AE%85/

最終更新日: 2026.08.30