ハワイ島ヒロから移された日本人移民の教会
明治村ハワイ移民集会所は、愛知県犬山市の博物館明治村にある明治22年(1889年)頃の木造建築で、平成16年(2004年)2月17日に登録有形文化財(建造物)に登録された。
建てられた場所は日本ではない。ハワイ島ヒロのケヤベ街、ワイルック川のほとりである。基督教組合派の牧師だった岡部次郎が、島で暮らす日本人のための教会として建てた。
日本から最初の移民153人がハワイへ渡ったのは明治元年(1868年)にさかのぼる。正規の許可を得ない渡航だったが、この一団がハワイ開拓の先駆けとなった。その後もサトウキビ耕地の労働力として多くの日本人が海を渡り、ヒロの周辺には日本人の暮らす一角ができていく。明治村ハワイ移民集会所は、その只中に建った建物である。
教会としての務めを終えたあと、建物は周辺に住む日本人の集会所になった。次に地元の新聞社が使い、最後は倉庫として残った。用途が三度も変わりながら壊されずに済んだことが、この建物を今日まで残した。昭和43年(1968年)に解体され、翌昭和44年(1969年)に明治村へ移築されている。
登録の理由となったバルーン・フレーム構造
明治村ハワイ移民集会所が登録有形文化財となった理由は、造形の規範となっていると評価されたことにある。文化庁の国指定文化財等データベースは、バルーン・フレーム構造の平屋建であること、下見板張に上げ下げ窓を開くこと、そして正面の意匠を反復する三角形でまとめていることを挙げている。
バルーン・フレームは19世紀のアメリカで広まった木造の骨組みである。断面の揃った規格材を釘で留めて壁を組み上げる方式で、太い柱と梁を刻んで組む在来の工法にくらべ、熟練の度合いが低くても短期間で建てられる。現在広く使われる2×4工法は、この方式から発展したものにあたる。つまりこの建物は、2×4が現れる前の段階のアメリカ木造建築が、日本人の手で日本人のために使われた例である。
日本国内にある移民関係の建造物は数が少ない。渡った先で建てられた建物は現地に残るのが普通で、解体して日本へ運び戻す例はほとんどない。愛知県の文化財ナビ愛知も、ハワイ移民の歴史を伝える建物としてこの集会所を取り上げている。建築の系譜と移民史の両方から価値を認められた点が、明治村ハワイ移民集会所の位置を決めている。
員数は1棟。木造平屋建、鉄板葺で、建築面積は88平方メートルである。
反復する三角形と、太鼓橋のような入口
中心軸に並ぶ三角形
明治村ハワイ移民集会所の正面に立つと、三角形が何度も現れることに気づく。屋根の破風がつくる鋭い角、その下の換気口、入口の上に載るペディメント。大きさを変えた同じ形が、建物の中心軸に沿って上から下へ並んでいる。愛知県の解説は、この配置を教会らしい雰囲気を意識して整えたものと説明する。
屋根そのものも見どころになる。大波の鉄板を葺いた切妻屋根は、棟の近くではほぼ60度という急勾配で立ち上がり、下のほうで一度折れて軒先だけ緩やかになる。遠くから見ると尖って見え、近づくと軒が水平に近づく。この折れが、正面の三角形の連なりに最後の一段を加えている。
湿地に建てるための高床
建物は床を高く上げて建てられている。周囲が湿地帯だったためで、床下の四周は板で疎らに囲われ、さらに建物のまわりを板塀が巡っていた。高くなった床へ上がるための入口は、緩いアーチを描く橋の形をとる。太鼓橋を渡って堂に入るような通路で、これも中心軸の意匠に組み込まれている。
扉を入ると、左右に玄関間のような狭い空間がある。壁は隅柱付きの下見板張、窓は上げ下げ窓で、材の見え方はアメリカの小さな教会そのものである。現在の内部にはハワイへ渡った日本人の歩みを扱う展示が置かれ、建物と移民史を並べて見られるようになっている。
見学方法とアクセス
明治村ハワイ移民集会所は博物館明治村の4丁目40番地に建ち、入村料だけで見学できる。建物ごとの追加料金はない。内部に入って見学できるが、安全確保や修理のため立ち入りを制限する箇所が生じることがあるので、当日の掲示に従ってほしい。
入村料は大人2500円、高校生1500円、中学生と小学生が700円で、未就学児は無料である(2026年9月確認)。20名以上の団体割引と年間パスポートもある。
開村時間は季節で変わる。3月と4月から7月、9月と10月は午前9時30分から午後5時まで。8月は午前10時から午後5時まで。11月は午前9時30分から午後4時までで、土曜日と休日は午後5時まで延びる。12月から2月は午前10時から午後4時まで。入村は閉村の30分前までである。休村日は夏と冬にまとまって設定されるため、出発前に開村カレンダーを見ておきたい。
個人での写真撮影に手続きは要らない。ただし建物内での三脚使用と、山林に立ち入っての撮影は禁じられている。乗物の運転手にフラッシュを向ける行為も避けること。
交通は、名鉄犬山駅東口から明治村行きの岐阜バスに乗るのが基本になる。名古屋駅と栄からは名鉄バスの直行便がある。車の場合は中央自動車道の小牧東インターチェンジから3キロメートル、北口を出てすぐの駐車場は普通車1000円である。明治村ハワイ移民集会所のある4丁目は正門から見て奥まった位置にあるため、村内バスを使うか、北口側から入る順路を組むと歩く距離を抑えられる。
Q&A
- 明治村ハワイ移民集会所は見学できますか。拝観料と開いている時間は。
- 見学できます。博物館明治村の入村料に含まれ、建物単独の料金はありません。入村料は大人2500円、高校生1500円、中学生と小学生が700円です。開村時間は季節で変わり、春と秋はおおむね午前9時30分から午後5時まで、冬は午前10時から午後4時までです。入村は閉村の30分前で締め切られます。
- 明治村ハワイ移民集会所はどこに建っていた建物ですか。
- アメリカのハワイ島ヒロ市です。ケヤベ街のワイルック川のほとりに、明治22年(1889年)頃、日本人向けの教会として建てられました。昭和43年(1968年)に解体され、昭和44年(1969年)に愛知県犬山市の明治村へ移築されています。
- 明治村ハワイ移民集会所の中には入れますか。写真は撮れますか。
- 内部に入って見学できます。個人での撮影に許可は要りませんが、建物内での三脚使用は禁止されています。安全確保や修理のため一部が見られない日もあるため、現地の掲示を確認してください。
- 明治村ハワイ移民集会所のバルーン・フレーム構造とは何ですか。
- 断面の揃った規格材を釘で留めて壁を組む、19世紀のアメリカで広まった木造の工法です。太い柱と梁を刻んで組む在来工法にくらべて短期間で建てられます。現在の2×4工法はこの方式から発展したもので、この集会所は2×4が現れる前の段階を示す建物にあたります。
- 明治村ハワイ移民集会所へは犬山駅からどう行きますか。
- 名鉄犬山駅の東口から明治村行きの岐阜バスが出ています。名古屋駅と栄からは名鉄バスの直行便があります。車では中央自動車道の小牧東インターチェンジから3キロメートルで、駐車料金は普通車1000円です。集会所は村内の4丁目40番地にあり、正門からは距離があるため村内バスの利用が便利です。
基本情報
| 名称 | 明治村ハワイ移民集会所 |
|---|---|
| 所在地 | 愛知県犬山市内山1 博物館明治村内 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(建造物) |
| 指定年 | 2004年(平成16年)登録 |
| 員数 | 1棟 |
| 寸法 | 木造平屋建、鉄板葺、建築面積88平方メートル |
| 所有者 | 公益財団法人明治村 |
| 公開状況 | 公開(博物館明治村の入村料に含まれる。内部見学可) |
参考文献
- 国指定文化財等データベース 明治村ハワイ移民集会所 — 文化庁
- https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00003863
- 明治村ハワイ移民集会所 — 文化遺産オンライン
- https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/183773
- 明治村ハワイ移民集会所 — 文化財ナビ愛知(愛知県)
- https://jmapps.ne.jp/aichi_bunkazai/det.html?data_id=1909
- ハワイ移民集会所 — 博物館明治村
- https://www.meijimura.com/sight/ハワイ移民集会所/
- 各種料金 — 博物館明治村
- https://www.meijimura.com/guide/price/
- 開村スケジュール — 博物館明治村
- https://www.meijimura.com/guide/open/
- アクセス — 博物館明治村
- https://www.meijimura.com/guide/access/
最終更新日: 2026.09.03