明治村でいちばん小さい登録建造物

明治村日本赤十字社中央病院付属便所は、愛知県犬山市の博物館明治村にある明治23年(1890年)建設の木造平屋建の便所棟で、平成16年(2004年)に登録有形文化財に登録された。

建築面積は10平方メートル。それで建物の全部である。桟瓦葺寄棟造の下に低い一室があるだけの構えで、東京・渋谷の広尾にあった日本赤十字社中央病院のために建てられ、木造病棟の端部に接続していた。

図面を引いたのは宮内省技師の片山東熊。のちに赤坂離宮を設計する人物である。便所という付属屋に設計の手間をかける義理はどこにもなかった。それでも手をかけた痕跡が、この建物には残っている。

病院は敷地の再開発にともない昭和48年(1973年)に解体された。接続していた病棟が犬山へ移されるとき、便所棟も一緒に運ばれ、東京にあったときと同じ位置関係で昭和49年(1974年)に建て直されている。

便所が単独で登録された理由

明治村日本赤十字社中央病院付属便所の登録は平成16年(2004年)2月17日、登録番号は23-0093で、病棟の23-0092のすぐ次にあたる。登録基準は「造形の規範となっているもの」。指定ではなく登録有形文化財への登録という位置づけになる。

便所を別棟にしたのは空気をめぐる判断だった。分棟式の病院は病棟を離して建て、廊下でつなぐ。当時の衛生観に沿った配置で、衛生設備はその末端に押し出され、独立した屋根と換気の仕掛けを与えられた。棟の上に載る小さな切妻造の換気塔は、その仕組みが外から見える形になったものである。

理屈は実用一辺倒である。それでも粗末には見えない。そこが登録の理由になっている。病棟と並べてみると違いは意図的で、病棟が煉瓦を高く積んだ基礎に載るのに対し、この建物は切石の基礎に据わる。外壁はどちらもドイツ下見に張り、その上から平たい柱形を打ってハーフティンバー風に見せているが、小壁に山形模様を刻んでいるのは小さいほうだけである。

立ち止まって見たい細部

屋根は二つのことを同時にやっている。主体は寄棟に瓦を葺き、その棟の上に切妻屋根の換気塔が載る。寄棟の上に切妻を置いた形で、遠目に明治村日本赤十字社中央病院付属便所を見分けるならこの輪郭になる。

窓は面ごとに使い分けてある。妻側には上げ下げ窓、平側には引違窓。この決まりに気づくと、同じ律義さが建物のあちこちに見えてくる。

それから軒の下をのぞいてほしい。小壁に山形の模様が浅く刻まれ、繰り返されている。使える壁面がほとんどない建物なので、模様もそれに合わせて小さい。三歩離れると見落とす。一歩近づくと、宮内省技師の名が便所に付いている理由が分かる。

隣の病棟と合わせて読むといい。病棟の長いガラス張りの廊下を端まで歩けば、その廊下が向かっていた先がこの建物である。

見学の方法

明治村日本赤十字社中央病院付属便所は、入鹿池のほとりの起伏に富んだ敷地に広がる博物館明治村の4丁目35番地に、病棟に接続する形で建っている。村内は1丁目の正門から5丁目の北口まで5つのエリアに分かれ、北口から歩くほうが近い。

鉄道の最寄りは名鉄犬山駅。東口から岐阜バスの明治村線で約20分。名古屋駅・栄からの高速バスもある。車なら中央自動車道の小牧東インターチェンジから3キロ、駐車料金は普通車1,000円。

入村料に含まれるので単独の見学料はかからない。大人2,500円、高校生1,500円、中学生と小学生700円、未就学児は無料。開村時間は春と秋がおおむね午前9時30分から午後5時、冬季は午前10時から午後4時で、入村は閉村の30分前まで。休村日は年間を通じて不定期に設定され、公式の開村日カレンダーに掲載される。

現役の設備ではなく展示建造物として保存されている建物で、明治村では安全のために立入りを制限している建物や部屋がある。現地の掲示を確認してほしい。個人の撮影に許可は要らないが、建物内での三脚・一脚の使用は禁止されている。

Q&A

Q明治村日本赤十字社中央病院付属便所とはどんな建物ですか?
A建築面積10平方メートルの木造の便所棟です。明治23年(1890年)に東京・広尾の日本赤十字社中央病院のために建てられ、病棟の端部に接続していました。昭和49年(1974年)にその病棟とともに博物館明治村へ移築され、平成16年(2004年)に国の登録有形文化財となりました。
Q明治村日本赤十字社中央病院付属便所は中に入れますか?
A現役の設備ではなく展示建造物として保存されており、明治村では安全のために立入りを制限している建物や部屋があります。当日の掲示を確認してください。外観は病棟の端から間近に見られ、細部の意匠を味わうならその位置がいちばん適しています。
Q明治村日本赤十字社中央病院付属便所は隣の病棟と何が違いますか?
A主に基礎と小壁です。病棟は煉瓦を高く積んだ基礎に載りますが、この便所棟は切石の基礎に据わります。外壁はどちらもドイツ下見に柱形を打った意匠ですが、小壁に山形模様を刻むのは便所棟だけで、寄棟の棟上に切妻屋根の換気塔を載せる点も便所棟の特徴です。
Q明治村日本赤十字社中央病院付属便所を設計したのは誰ですか?
A宮内省技師の片山東熊です。のちに赤坂離宮を手がけた建築家で、明治23年(1890年)に広尾で完成した日本赤十字社中央病院を設計しました。この小さな付属屋も同じ設計によります。
Q明治村日本赤十字社中央病院付属便所はどこにあり、見学料はいくらですか?
A愛知県犬山市の博物館明治村、4丁目35番地です。入村料に含まれ、大人2,500円、高校生1,500円、中学生・小学生700円。最寄りの名鉄犬山駅東口から岐阜バスで約20分です。

基本情報

名称明治村日本赤十字社中央病院付属便所
所在地愛知県犬山市内山1 博物館明治村内(4丁目35番地)
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成16年(2004年)登録
員数1棟
寸法木造平屋建、瓦葺、建築面積10平方メートル
所有者公益財団法人明治村
公開状況博物館明治村の展示建造物として公開(外観見学)。入村料が必要

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「明治村日本赤十字社中央病院付属便所」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003859
文化遺産オンライン「明治村日本赤十字社中央病院付属便所」
https://online.bunka.go.jp/heritages/detail/194859
文化庁 国指定文化財等データベース「明治村日本赤十字社中央病院病棟」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003858
博物館明治村「日本赤十字社中央病院病棟」
https://www.meijimura.com/sight/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E8%B5%A4%E5%8D%81%E5%AD%97%E7%A4%BE%E4%B8%AD%E5%A4%AE%E7%97%85%E9%99%A2%E7%97%85%E6%A3%9F/
博物館明治村「開村時間・休村日」
https://www.meijimura.com/guide/open/
博物館明治村「チケット・料金」
https://www.meijimura.com/guide/price/
博物館明治村「アクセス」
https://www.meijimura.com/guide/access/
博物館明治村「村内での撮影について」
https://www.meijimura.com/photography/

最終更新日: 2026.09.03