層ごとに様式が変わる三重塔

豊川駅から歩いてすぐ、豊川弁財天の名で親しまれる寺の境内に、高さ14.5メートルの小ぶりな塔が建つ。寺の正式な名は三明寺、曹洞宗の寺院である。この三重塔は境内で最も古い建物で、室町時代の享禄4年(1531年)に再建された。

塔は下から順にゆっくり見上げる価値がある。一つの様式で通していないからである。初層と二層は和様、つまり日本の寺院に定着した様式で、軒は穏やかで水平に近い。ところが三層になると禅宗様、中国から伝わった禅の様式に切り替わり、軒の隅が下の二層よりもずっと強く反り上がる。途中から建築の言葉を変える塔は、全国を見渡しても珍しい。この対比が、小さな塔にどこか落ち着かない、生き生きとした輪郭を与えている。

三明寺は寺伝では大宝2年(702年)にさかのぼる。文武天皇がこの地で病を得たのち弁財天の霊験で快復したことから創建されたと伝わる。のちに荒廃したが、15世紀の初めに禅僧の無文元遷が再興した。伝承では、その際に塔の初層へ大日如来像を安置したという。

指定の理由

三重塔が重要文化財に指定されたのは明治40年(1907年)で、県内では早い時期の指定にあたる。形式は三間三重塔婆、屋根は薄い板を重ねたこけら葺きである。

評価の核心は、その折衷の様式にある。和様と禅宗様を組み合わせた建物は他にもあるが、最上層だけに禅宗様をあてがい、しかも全体を破綻なくまとめた塔はまれである。三層の屋根の強い反りは、下の落ち着いた線と対になって、修理の偶然ではなく意図された設計として読める。高さこそ控えめだが、その造形の野心がこの塔を際立たせている。

訪れる際の見どころ

入り口の石鳥居のそばに立つと、鳥居と三重塔を一つの画面におさめることができる。神社と寺をきっちり分けて考えてきた人には意外な取り合わせである。境内は広くなく、塔も近くに建つので、首を痛めるほど見上げなくても組物や高欄をじっくり眺められる。それが魅力でもある。手の届く尺度で、塔のすべてが見渡せるのだ。

同じ境内には、もう一つの国指定の建造物である本堂内宮殿があり、正徳2年(1712年)の本堂は格子天井に極彩色の絵を備える。春には枝垂れ桜をはじめとする桜が境内を埋め、塔は写真の好対象となる。寺は豊川駅から徒歩でおよそ5分、駐車場もある。

Q&A

Qこの塔のどこが珍しいのですか。
A初層と二層が和様、三層だけが軒を強く反らせた禅宗様です。一つの塔で様式が変わる例は全国的にもまれです。
Q高さや建立年は。
A高さ14.5メートル、享禄4年(1531年)の再建で、境内最古の建物です。明治40年(1907年)に重要文化財に指定されました。
Q塔の中に入れますか。
Aいいえ、境内から眺める形です。伝承では、初層にかつて大日如来像が安置されていたとされます。
Q寺なのに鳥居があるのはなぜですか。
A三明寺は弁財天を祀り、弁財天は仏教でも神道でも信仰される存在のため、境内に鳥居が立ちます。鳥居と塔を一緒に見られます。
Qアクセスは。
AJR・名鉄の豊川駅から徒歩でおよそ5分です。駐車場もあります。

基本情報

名称三明寺三重塔
所在地愛知県豊川市豊川町
指定区分重要文化財(明治40年〔1907年〕5月27日指定)
年代享禄4年(1531年)、室町後期
構造形式三間三重塔婆、こけら葺、高さ約14.5メートル、1基
所有者三明寺
公開状況境内から見学可。豊川駅から徒歩約5分

References

国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/102/1227
ぐるっと豊川(豊川市観光協会)
https://www.toyokawa-map.net/spot/000213.html
愛知県観光・文化情報
https://aichi.mytabi.net/sanmyoji-temple-toyokawa-benzaiten.php

最終更新日: 2026.06.24