中村家住宅主屋とは

中村家住宅主屋(なかむらけじゅうたくおもや)は、愛知県豊川市篠束町にある天保14年(1843年)建築の農家主屋で、令和4年(2022年)に国の登録有形文化財(建造物)に登録された。伊那街道に南面して建ち、街道沿いの家並みの中でもひときわ間口が広い。

構造は木造2階建の一部に地下を備える形で、屋根は瓦葺、建築面積は241平方メートル。ただし2階といっても居室を積み上げた総2階ではない。屋根裏を低く区切ったつし二階で、正面から見ると軒の下に細長い開口が並ぶ。屋根は切妻造桟瓦葺、四周に下屋をめぐらせ、深い影が壁面に落ちる。

建てられた天保14年(1843年)から85年ほど下った昭和3年(1928年)頃、座敷が増築されている。中村家住宅主屋は江戸期の骨格を保ちながら、近代の生活に合わせて手を入れられてきた建物である。

登録有形文化財としての評価

登録有形文化財の登録基準は3種類あり、中村家住宅主屋が該当したのは「国土の歴史的景観に寄与しているもの」である。個々の意匠の突出ではなく、伊那街道という道筋の風景を今も形づくっていることが評価された。文化審議会が答申したのは令和3年(2021年)11月で、翌年に登録番号23-0565として登録されている。

もうひとつ、建築史の側から注目されたのが技術の水準である。文化庁の解説は、成(せい)の高い小壁など、江戸期の農家としては発達した様相を示すと記す。小壁は鴨居と天井の間に立つ壁面で、ここが高くとれるということは、それだけ内部の天井が高く、大きな断面の材を扱えたことを意味する。屋根も当初から瓦葺だったとみられている。江戸後期の三河の在郷で、板葺や茅葺ではなく瓦を載せた農家は、その家の経済力を直接に示す。

登録有形文化財は指定制度とは別の枠組みで、届出制のゆるやかな保護によって、住み続けながら守ることを想定している。中村家住宅主屋のように今も個人が所有する建物には、この制度が合っている。

間取りと桑の地下貯蔵場

中村家住宅主屋の平面は、東西でくっきりと性格が分かれる。東半分は土間で、竈(かまど)が据えられ、床下には桑の地下貯蔵場が掘られている。桑は養蚕の飼料である。摘んだ葉は乾けば蚕が食べないため、涼しく湿った場所に置いて鮮度を保つ必要があった。地面を掘り下げた貯蔵場は、そのための設備である。三河の農家が米作の傍らで蚕を飼っていた時代の痕跡が、床下に残っている。

西半分は3列9室。田の字型の四間取りが一般的だった当時の農家としては、部屋数が多い。南西の一室には床(とこ)が設けられ、座敷として整えられている。客を通す部屋を家の南西に置くのは、日当たりと庭への眺めを優先した配置で、来客の多い家であったことをうかがわせる。

外からこの建物を見るとき、注目したいのは軒の高さと壁の分量の関係である。下屋が四周に回っているので、正面に立つと屋根が二段に重なって見える。上の段が主屋の切妻、下の段が下屋。この重なりが、中村家住宅主屋の横に長い外観をまとめている。

見学方法とアクセス

中村家住宅主屋は個人の所有で、現在も生活の場として使われている。豊川市の指定・登録文化財一覧でも所有者は「個人所有」と記載されており、内部の公開や見学の受け入れは行われていない。敷地に立ち入ることはできない。

見られるのは街道側からの外観だけである。撮影も、公道上から建物を写す範囲にとどめたい。門や生垣の内側にレンズを向けたり、敷地内に足を踏み入れたりすることは避けてほしい。所有者が日常を送っている建物であり、公開を前提とした施設ではない。

最寄り駅はJR飯田線の小坂井駅で、南西へ徒歩15分ほど。名鉄名古屋本線の伊奈駅からも徒歩20分前後で歩ける。周辺は住宅と田が混じる一帯で、専用の駐車場や案内板は用意されていない。豊川市内の登録有形文化財の一覧や所在の確認は、豊川市教育委員会生涯学習課が公開している資料で調べられる。

Q&A

Q中村家住宅主屋は見学できますか。内部は公開されていますか。
A中村家住宅主屋は個人所有の住宅で、内部は公開されていません。見学の受け入れもなく、敷地内に立ち入ることはできません。伊那街道側からの外観を公道上から眺める形になります。
Q中村家住宅主屋はいつ建てられ、いつ登録有形文化財になりましたか。
A建築は天保14年(1843年)で、昭和3年(1928年)頃に座敷が増築されています。国の登録有形文化財(建造物)に登録されたのは令和4年(2022年)、登録番号は23-0565です。
Q中村家住宅主屋への行き方と最寄り駅を教えてください。
A所在地は愛知県豊川市篠束町大堀63-1他です。JR飯田線の小坂井駅から南西へ徒歩15分ほど、名鉄名古屋本線の伊奈駅からは徒歩20分前後です。専用駐車場はありません。
Q中村家住宅主屋にある「桑の地下貯蔵場」とは何ですか。
A養蚕の飼料である桑の葉を貯えるために、土間の床下に掘られた設備です。桑の葉は乾くと蚕が食べないため、涼しく湿度の保たれる地下に置いて鮮度を保ちました。中村家住宅主屋が農業と養蚕を営んでいたことを示す痕跡です。
Q中村家住宅主屋はどのような規模と構造の建物ですか。
A木造2階建の一部に地下が付き、屋根は瓦葺、建築面積は241平方メートルです。屋根裏を低く使うつし二階建で、切妻造の桟瓦葺、四周に下屋をめぐらせています。東側が土間、西側が3列9室の構成です。

基本情報

名称中村家住宅主屋
所在地愛知県豊川市篠束町大堀63-1他
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年令和4年(2022年)登録
員数1棟
寸法木造2階建一部地下付、瓦葺、建築面積241平方メートル
所有者個人
公開状況非公開。外観のみ公道から見学可

参考文献

国指定文化財等データベース 中村家住宅主屋(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00014160
豊川市の指定文化財(豊川市教育委員会生涯学習課)
https://www.city.toyokawa.lg.jp/soshiki/kyoikuiinkai/shogaigakushu/2/5/3/1/4066.html
豊川市の指定・登録文化財一覧(豊川市)
https://www.city.toyokawa.lg.jp/material/files/group/47/shiteibunkazaiichiran20260423.pdf

最終更新日: 2026.09.02