中学校として建てられた、4棟の木造校舎

旧鮎川小学校(きゅうあゆかわしょうがっこう)は、秋田県由利本荘市町村にある昭和28年から29年(1953年から1954年)建築の木造校舎群で、屋内運動場・北校舎棟・中央校舎棟・南校舎棟の4棟が平成24年(2012年)2月23日に登録有形文化財として登録された。

所在地は由利本荘市の由利地区、合併前の旧由利町にあたる。字鳴瀬台の敷地に、教室棟3棟と屋内運動場が平行に並んでいる。所有は由利本荘市である。

名称は「小学校」だが、はじめは中学校の校舎として建てられた。現在は市の木育施設「鳥海山 木のおもちゃ館」として4棟すべてが使われており、館内を歩くことがそのまま旧鮎川小学校の見学になる。開館は2018年7月で、当初の名称は鳥海山木のおもちゃ美術館だった。2023年4月1日に現在の館名へ改められている。

村の予算の7割を注いだ校舎と、その50年

昭和22年(1947年)に創立した鮎川中学校は、自前の校舎を持たず、鮎川小学校に併設されていた。旧鮎川村はこの中学校のために、昭和28年と29年の2か年をかけて新しい校舎を建てた。完成した1954年に、中学校は独立してこの地へ移っている。

由利本荘市教育委員会の資料によると、総事業費は29,959,494円で、当時の村の2年分の総予算(40,186,000円)の74%にあたった。国庫補助は受けていない。小さな村がどれほどの覚悟でこの校舎を建てたかが、数字からうかがえる。

中学校としての時代は長くなかった。1970年4月1日に鮎川中学校は由利中学校へ統合され、空いた校舎には鮎川小学校が移ってきた。以後34年間は小学校の校舎として使われ、2004年4月1日に由利小学校へ統合されて閉校した。中学校の時代と合わせると、およそ50年にわたって子どもたちが通ったことになる。

閉校後は、地域の住民や県外に住む卒業生らが手入れを続けた。2008年7月には保存と活用の母体として「鮎の風実行委員会」が発足し、2010年4月には旧鮎川小学校を会場に「第2回よみがえる廃校全国サミット」が開かれている。2022年には秋田県の「未来に伝えたい秋田のインフラ50選」にも選ばれた。

左右対称の配置と、校庭へ向く四つの切妻

旧鮎川小学校の4棟は、いずれも東西に長い平屋である。校長室のある中央校舎棟を軸に、北校舎棟と南校舎棟がほぼ同じ間隔で両側に並び、北の端に屋内運動場が置かれている。4棟とも切妻の妻面を東の校庭に向けており、校庭に立つと、同じ形の妻が縦に四つ連なって見える。

棟と棟のあいだには昇降口が3か所、ほぼ同じ間隔と大きさで設けられた。このうち中央の昇降口だけは、教職員と来客を意識した玄関のつくりになっている。

どの校舎棟も南側に教室、北側に廊下を置く。教室に日が入るよう、校舎を東西方向に伸ばした配置である。

市の資料は、木造・切妻造・桟瓦葺・外壁横板張りというこの校舎の形式が、旧西滝沢村が明治41年(1908年)に建てた西滝沢小学校の初期校舎や、旧鮎川村が大正4年(1915年)に建てた鮎川小学校の初期校舎と同じであることを、残された写真から確認している。明治・大正の校舎形式が、戦後の昭和20年代まで受け継がれていた例ということになる。

4棟に共通するつくり

構造は4棟とも木造平屋建、切妻造、桟瓦葺である。外壁は焼杉の南京下見張りで、一部をモルタル目地切とする。濃い茶色に塗った壁に対し、柱・窓枠・換気口を白く縁取っており、遠目にも二色の対比がはっきりしている。

小屋組は洋小屋のキングポストトラスで、教室と廊下を合わせた梁間を柱を立てずに1スパンで架けている。教室と廊下がひとまとまりの単位になっているのはこのためで、屋内運動場の屋根も同じ形式で組まれている。

内部は徹底した和風の造作である。床は杉板張り、腰壁は縦板張り、天井は竿縁天井とする。平成2年から3年(1990年から1991年)にかけて床板の研磨や屋内運動場の外壁塗装が行われ、平成8年から9年(1996年から1997年)には校舎棟の外まわりの窓がサッシに替えられた。天井は全面が塗装されている。それ以外の床、腰壁、建具は建築当時のままと市は説明しており、秋田杉の木目がそのまま残る。

由利本荘市は旧鮎川小学校を、建築当時の規模をほぼ保った昭和20年代の数少ない木造校舎とし、現存する木造校舎としては秋田県で最大級の規模としている。

館内の歩き方

旧鮎川小学校の4棟は渡り廊下と昇降口でつながっており、靴を脱いで上がれば、屋根の下を通って全棟を歩ける。

鳥海山 木のおもちゃ館の館内は、入館料のかかる有料ゾーンと、誰でも入れる無料ゾーンに分かれている。受付と有料ゾーンは北校舎棟と屋内運動場にあり、中央校舎棟と南校舎棟は主に無料ゾーンとして使われている。カフェや売店、休憩室として開放された教室は、入館券がなくても利用できる。

校舎の中庭には令和3年(2021年)から木製の遊具が置かれている。雨の日と12月から3月の冬期間は使えない。

おもちゃ館は、床板のささくれや節穴もある古い木造校舎をそのまま使っていることから、上履きの持参を求めている。受付では子ども用の上履き(1足500円)と大人用のスリッパ(1足300円)も販売している。敷地内は木造の文化財であるため全面禁煙である。

旧鮎川小学校への行き方と開館時間

鉄道では、JR秋田駅から羽後本荘駅まで約45分、そこから由利高原鉄道鳥海山ろく線に乗り換えて鮎川駅まで約12分。鮎川駅から旧鮎川小学校までは専用のシャトルバスで約5分である。シャトルバスは土日祝日に無料で運行し、平日の送迎は事前予約制となっている(電話0184-74-9070)。

車の場合は、日本海東北自動車道の本荘インターチェンジから約10分、秋田空港から約1時間。駐車場は無料で、グラウンド奥に110台、鮎川河川広場に70台(大型5台)、校舎裏に20台と案内されている。

開館時間は3月から11月が午前9時から午後4時まで、12月から2月が午前10時から午後4時までで、最終入館はいずれも午後3時30分。休館日は3月から11月が毎週木曜日(祝日の場合は前日の水曜日)、12月から2月が毎週水曜日と木曜日で、ほかに年末年始と、2月・9月の保守点検による特別休館がある。

入館料は2026年4月1日に改定され、おとな(中学生以上)810円、こども(1歳から小学生まで)610円である。15名以上の団体は1人100円引き、障害者手帳を持つ本人と介助者1名は半額になる。滞在は3時間程度が目安とされている。料金や時間は変わることがあるため、訪問前に公式サイトで確かめたい。

館内での写真・動画の撮影はできる。フラッシュの使用と、三脚を長時間据えての撮影は控えるよう求められている。

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「旧鮎川小学校屋内運動場」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009118
文化庁 国指定文化財等データベース「旧鮎川小学校北校舎棟」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009119
文化庁 国指定文化財等データベース「旧鮎川小学校中央校舎棟」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009120
文化庁 国指定文化財等データベース「旧鮎川小学校南校舎棟」
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00009121
由利本荘市「旧鮎川小学校(きゅうあゆかわしょうがっこう)」
https://www.city.yurihonjo.lg.jp/1001503/1002098/1002113/1002126/1003562.html
由利本荘市教育委員会「(資料)旧鮎川小学校」(PDF)
https://www.city.yurihonjo.lg.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/003/562/1003562_003.pdf
由利本荘市「鳥海山 木のおもちゃ館の利用案内」
https://www.city.yurihonjo.lg.jp/1001503/1002097/1002111/1006939.html
鳥海山 木のおもちゃ館「アクセス」
https://chokaisan-wtm.jp/access/
鳥海山 木のおもちゃ館「よくある質問」
https://chokaisan-wtm.jp/info/qanda/
鳥海山 木のおもちゃ館「旧鮎川小学校について」
https://chokaisan-wtm.jp/floorguide/ayukawaes/

最終更新日: 2026.09.24

基本情報

名称旧鮎川小学校
所在地秋田県由利本荘市町村字鳴瀬台65-1
所有者由利本荘市
指定登録有形文化財 4件
座標39.33374, 140.06588