座敷を内に抱えた蔵
蔵の多くは物を納める。この蔵は部屋を納めている。明治23年(1890)に建てられた旧奈良家住宅座敷蔵は、二階に八畳の座敷を抱える土蔵造二階建である。敷地は秋田市金足小泉、味噌蔵の西に東西棟で建ち、棟を建物の長手方向に通す。
平面を見れば用途の二重性は明らかである。一階は一間幅の前室から広間へと続き、二階は二間半幅の前室に八畳座敷と板間を配す。物を蓄える蔵が客をも迎える。ここではそれは矛盾ではなく、身代の表明である。県内屈指の豪農であった奈良家は、実用の建物を座敷並みに仕上げるだけの力を持っていた。
壁を読む
建築面積はおよそ114平方メートル。桁行七間、梁間三間半で、両妻面に下屋が付く。外壁は白漆喰塗、腰には切石を張る。戸口は東妻面に設け、下屋がこれを覆う。屋根は銅板葺の置屋根で、全体を切妻造とする。
これらは、長く保ち、かつ見せることを意図した蔵の徴である。切石の腰は地面からの湿気を防ぎ、漆喰の箱に引き締まった足元を与える。土蔵の上に別構えの外殻として掛けた銅板の屋根は、その下の壁を守った。平成18年(2006)に敷地の附属屋七棟が登録有形文化財となったとき、評価されたのは歴史的景観への寄与であり、座敷蔵はその理由をよく示す。働く蔵であると同時に、住まいの格を示す一棟でもある。
訪ねて見るべきところ
旧奈良家住宅は秋田県立博物館の分館として公開され、入館は無料である。宝暦年間の主屋(重要文化財)が敷地の要をなし、附属屋はその周囲に広がる。座敷蔵では、白漆喰と切石の腰が接する線を目で追い、東妻面で戸口が下屋の下に収まる納まりを確かめたい。飾らない一階の広間と、仕上げられた二階の座敷とを順に見れば、この建物の二重の顔が読み取れる。学芸職員による解説もあり、保護された附属屋の一群を一度の来訪で歩ける。
Q&A
- 座敷蔵とは何ですか。
- 座敷を内部に設けた蔵をいいます。ここでは二階に八畳座敷を配し、貯蔵と接客の双方を担いました。
- いつ建てられましたか。
- 明治23年(1890)の建築です。平成18年(2006)に旧奈良家住宅の附属屋六棟とともに登録有形文化財となりました。
- 腰の切石にはどんな意味がありますか。
- 切石の腰は漆喰壁を地面の湿気や跳ね返りから守るとともに、豪農の建物にふさわしい引き締まった足元を与えています。
- 入館料はかかりますか。
- 分館の入館は無料です。本館の特別展は別料金となる場合があります。
- どう行けばよいですか。
- 秋田市金足小泉の小泉潟公園内にあり、奥羽本線・男鹿線の追分駅が最寄りです。
基本情報
| 名称 | 旧奈良家住宅座敷蔵(きゅうならけじゅうたくざしきぐら) |
|---|---|
| 所在地 | 秋田県秋田市金足小泉字上前8 |
| 指定区分 | 登録有形文化財(登録年月日 2006年3月2日) |
| 建築年代 | 明治23年(1890) |
| 構造 | 土蔵造2階建、銅板葺、建築面積約114平方メートル |
| 員数 | 1棟 |
| 所有者 | 秋田県 |
| 公開・アクセス | 秋田県立博物館分館として公開、入館無料。開館はおおむね9:30〜16:30(4〜10月)、9:30〜16:00(11〜3月)、月曜・年末年始休館。開館情報は事前にご確認ください。 |
参考文献
- 国指定文化財等データベース(文化庁) — 旧奈良家住宅座敷蔵
- https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005230
- 秋田県立博物館 — 分館 旧奈良家住宅
- https://www.akihaku.jp/exhibition/permanent/narake/
- 秋田県立博物館 — 旧奈良家住宅
- https://www.akita-museum.com/page.php?serial_no=169
- 美の国あきたネット(秋田県) — 平成17年度国登録 旧奈良家住宅
- https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/1625
最終更新日: 2026.07.04