七棟で最も新しい、書物を守る蔵

敷地の他の蔵が白漆喰をまとうのに対し、この一棟はモルタル塗の洗出し仕上げである。大正13年(1924)に建てられた文庫蔵は、敷地に登録された附属屋七棟のうち最も新しく、その素材が年代を告げている。主屋の西に東面して建つ。桁行四間、梁間三間、建築面積はおよそ50平方メートルの木造二階建で、屋根は寄棟造の銅板葺とする。

文庫蔵は、家が最も守りたいもの、すなわち記録・証文・貴重品を納めるための蔵である。この建物の造りはすべてその役目から形づくられている。南面東寄りに設けた戸口には、両開きの鉄扉を構え、その内に片引きの格子戸を備える。防備は意図的に幾重にも重ねられている。

大正の刻印

窓の造作も同じく防護を語る。両側面の窓は、一階が片開き、二階が上げ下げ窓で、外側にそれぞれシャッターが付く。隣り合う土蔵造の蔵の中でモルタルの外壁は異質であり、それがこの建物の年代を指し示している。大正期には、豪農の家も、蔵の形式を保ちながら新しい素材を用いて防火と近代化を図ることができた。

その年代の幅こそ、平成18年(2006)の登録が評価したものである。附属屋七棟は明治7年の味噌蔵からこの大正13年の文庫蔵まで及び、あわせて一家の敷地における半世紀の建築の歩みをたどる。文庫蔵はその弧の遅い端に立つ。古い漆喰の蔵と並べて読めば、敷地の建築が時代とともにいかに歩みを合わせたかが見えてくる。

訪ねて見るべきところ

旧奈良家住宅は秋田県立博物館の分館として公開され、入館は無料である。文庫蔵では、まず壁面そのものを見たい。洗出しのモルタルを目でたどり、近くの味噌蔵や米蔵の滑らかな白漆喰と見比べるとよい。次に開口部、両開きの鉄扉と、シャッターの付く二階窓を見れば、火と侵入に抗うために造られた建物の理屈が明らかになる。学芸職員による解説もあり、文庫蔵を敷地の附属屋の全系列、古いものから新しいものへと、一度の散策の中に位置づけられる。

Q&A

Q文庫蔵とは何ですか。
A書物や貴重品を納める蔵です。家の記録・証文・大切な所持品を火や盗難から守るために建てられました。
Qなぜ漆喰でなくモルタル仕上げなのですか。
Aモルタル塗の洗出し仕上げは大正13年(1924)という建築年代を反映しています。七棟のうち最も新しく、敷地の古い土蔵造の蔵とは素材を異にします。
Q開口部はどのように守られていますか。
A南面の戸口は両開きの鉄扉に片引き格子戸を添えます。二階の上げ下げ窓には、それぞれ外側にシャッターが付きます。
Q入館料はかかりますか。
A分館の入館は無料です。本館の特別展は別料金となる場合があります。
Qどう行けばよいですか。
A秋田市金足小泉の小泉潟公園内にあり、奥羽本線・男鹿線の追分駅が最寄りです。

基本情報

名称旧奈良家住宅文庫蔵(きゅうならけじゅうたくぶんこぐら)
所在地秋田県秋田市金足小泉字上前8
指定区分登録有形文化財(登録年月日 2006年3月2日)
建築年代大正13年(1924)
構造木造2階建、銅板葺、建築面積約50平方メートル
員数1棟
所有者秋田県
公開・アクセス秋田県立博物館分館として公開、入館無料。開館はおおむね9:30〜16:30(4〜10月)、9:30〜16:00(11〜3月)、月曜・年末年始休館。開館情報は事前にご確認ください。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁) — 旧奈良家住宅文庫蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005229
秋田県立博物館 — 分館 旧奈良家住宅
https://www.akihaku.jp/exhibition/permanent/narake/
秋田県立博物館 — 旧奈良家住宅
https://www.akita-museum.com/page.php?serial_no=169
美の国あきたネット(秋田県) — 平成17年度国登録 旧奈良家住宅
https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/1625

最終更新日: 2026.07.04