棟木が伝える明治七年、七棟のうち最古の蔵

棟木に明治7年(1874)5月17日の棟上げが記される。旧奈良家住宅の敷地に建つ附属屋七棟のうち、年代の判明するものとしては最も古い。大工は笠岡郷の藤原和助。主屋の北、敷地北辺の東寄りに位置する。桁行五間、梁間三間半の土蔵造平屋建で、南正面に一間半の下屋が付く。建築面積はおよそ88平方メートル。

奈良家は秋田県内でも屈指の豪農であり、その家が仕込み蓄える味噌の量は、一般の農家とは桁が違った。この蔵はその貯蔵を担う実用の建物である。金足小泉の敷地は主屋を中心に附属屋が配され、味噌蔵はその一翼を占める。

実用の蔵が登録に至った理由

平成18年(2006)3月2日、この蔵は他の附属屋六棟とともに登録有形文化財となった。登録有形文化財は、傑出した一棟よりも国土の歴史的景観への寄与を評価する制度で、ここでの価値は建物群の一体性にある。県内に重要文化財の民家は複数あるが、これほど多くの附属屋を残す例はない。七棟がそろって、豪農の暮らしの全体を今日に残している。

味噌蔵は、その中でも最も飾り気のない実用的な一棟に属し、そこにこそ意味がある。屋根は北から二間の位置を棟とする招き屋根形の置屋根で、銅板葺とする。外壁は白漆喰塗、腰を下見板張とする。小屋組には曲がりの強い登り梁を用いており、直材ではなく自然の反りをそのまま生かした材の選び方に、当時の大工の判断が見て取れる。

訪ねて見るべきところ

敷地は秋田県立博物館の分館として公開され、入館は無料である。附属屋七棟は個々よりも群として捉えると理解が深まる。まず宝暦年間造営の主屋(重要文化財)に立ち、そこから外へと視線を移すとよい。味噌蔵では、頭上の登り梁と銅板の招き屋根の稜線に目を留めたい。実用のために大工が選んだ架構であり、見上げれば構造がそのまま読み取れる。敷地全体が県有で学芸職員による解説もあるため、保護された農家建築の一群の中を歩ける稀な場所となっている。

Q&A

Q味噌蔵はいつ建てられましたか。
A明治7年(1874)の棟上げが棟木に記されており、旧奈良家住宅の附属屋七棟のうち最も古い建物です。
Q招き屋根とは何ですか。
A棟の位置を屋根の中央からずらし、片流れを長短に振り分けた非対称の屋根形式です。ここでは北寄りに棟を置いた置屋根とし、銅板で葺いています。
Q中に入れますか。
A敷地は秋田県立博物館の分館として公開されています。内部の公開状況は変わることがあるため、来館前に博物館へご確認ください。
Q入館料はかかりますか。
A分館の入館は無料です。ただし本館の特別展は別料金となる場合があります。
Q最寄り駅はどこですか。
A奥羽本線・男鹿線の追分駅が最寄りです。小泉潟公園内にあり、博物館本館と同じ敷地に建っています。

基本情報

名称旧奈良家住宅味噌蔵(きゅうならけじゅうたくみそぐら)
所在地秋田県秋田市金足小泉字上前8
指定区分登録有形文化財(登録年月日 2006年3月2日)
建築年代明治7年(1874)
構造土蔵造平屋建、銅板葺、建築面積約88平方メートル
員数1棟
所有者秋田県
公開・アクセス秋田県立博物館分館として公開、入館無料。開館はおおむね9:30〜16:30(4〜10月)、9:30〜16:00(11〜3月)、月曜・年末年始休館。開館情報は事前にご確認ください。

参考文献

国指定文化財等データベース(文化庁) — 旧奈良家住宅味噌蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00005228
秋田県立博物館 — 分館 旧奈良家住宅
https://www.akihaku.jp/exhibition/permanent/narake/
秋田県立博物館研究報告第20号 — 旧奈良家住宅の附属屋とその周辺(池田憲和、1995年)
https://www.akihaku.jp/cms/wp-content/uploads/2023/12/aktpmrep20_001-010.pdf
美の国あきたネット(秋田県) — 平成17年度国登録 旧奈良家住宅
https://www.pref.akita.lg.jp/pages/archive/1625

最終更新日: 2026.07.04