酒蔵の奥に建つ黒漆喰の内蔵

秋田県横手市増田町、酒造業を営む日の丸醸造の主屋の奥に、外壁を黒漆喰で塗り込めた二階建の土蔵が建つ。増田では、主屋の内部に建てて上屋(鞘)で覆った蔵を「内蔵(うちぐら)」と呼び習わしてきた。この文庫蔵は明治41年(1908年)の建築で、桁行約12メートル、梁間約6.1メートルを測る。醸造元の建物群のうち、見学者を受け入れているのはこの一棟である。

増田は雪深い地に開けた商家町である。蔵をもう一つの屋根で包むことで、漆喰や造作を雪や湿気から守り、外からはうかがい知れない内部に手を尽くすことができた。

登録の理由と価値

文化庁が登録有形文化財に登録したのは平成22年(2010年)で、周囲の七棟が平成14年(2002年)に登録されたのに比べると遅い。特色は仕上げにある。外壁は全面を黒漆喰の磨き仕上げとし、内部には青森ヒバの通し柱を約一尺(およそ30センチ)間隔で立て、軸部には漆を塗る。柱の間を白い塗り込めの壁が埋め、黒と白の対比が室内を引き締める。

もともと内蔵は家財を納める倉として建てられた。増田の商人はそこから一歩進み、内部を見せる部屋として造り込んだ。この蔵の細工にも、その意気込みが読み取れる。

見どころと訪ね方

一階は前後二室に分かれ、奥の室には床の間を構える。欄間や障子には繊細な意匠が残り、平成16年(2004年)の床の補修でも漆塗りの壁には手を加えていない。非公開の二階は白木のままで、欅(けやき)の太い小屋梁が架かる。

内部を見るには予約が要る。醸造元は見学料を得てこの蔵を公開する一方、酒造りの建物には立ち入れない。敷地内の直売所では、蔵元限定の酒や代表銘柄「まんさくの花」が求められる。時間があれば、四十棟を超える商家と内蔵が約400メートルにわたり並ぶ中七日町通りを歩くとよい。

Q&A

Q文庫蔵の中に入れますか。
A予約のうえ、見学料を払えば内部を見学できます。内蔵は公開されていますが、酒造りの建物には入れません。
Q「内蔵」とは何ですか。
A主屋の内部に建て、上屋(鞘)で覆った蔵を指す、増田特有の形式です。外側の屋根が、雪の多いこの地から蔵を守りました。
Qいつ建てられ、いつ登録されましたか。
A明治41年(1908年)の建築で、登録有形文化財への登録は平成22年(2010年)です。
Q周辺に見どころはありますか。
A中七日町通りには多くの商家と内蔵が残り、その多くが公開されています(一部有料)。一帯は重要伝統的建造物群保存地区です。

基本情報

名称日の丸醸造本社文庫蔵
所在地秋田県横手市増田町増田字七日町109-1
指定区分登録有形文化財(建造物)
登録年月日2010年(平成22年)9月10日
構造土蔵造2階建、鉄板葺、建築面積190平方メートル
建築年代明治41年(1908年)
所有者日の丸醸造株式会社
公開状況要予約・有料で内部公開(酒造建物は非公開)

参考文献

国指定文化財等データベース — 日の丸醸造本社文庫蔵
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00008240
増田町観光協会 — まちなみと内蔵
https://masudakanko.com/uchigura/
日の丸醸造株式会社 — 内蔵見学・蔵元直売所
https://hinomaru-sake.com/kurashop

最終更新日: 2026.07.03