里の家(旧大宮家住宅)主屋:秋田に息づく茅葺き農家建築の風格

秋田市雄和地区のなだらかな丘陵に佇む「里の家」は、旧大宮家住宅の主屋を移築・保存した歴史的建造物です。明治17年(1884年)頃に建てられたこの大型農家住宅は、秋田地方特有の中門造りの建築様式を今に伝える貴重な存在として、平成16年(2004年)に国の登録有形文化財に登録されました。かつて地域の肝煎(村役人)を務めた大宮家の格式と、北国の暮らしの知恵が凝縮されたこの茅葺きの住まいは、現在も地域の交流施設として息づいています。

歴史的背景

大宮家は、旧雄和町相川の銅屋(どうや)地区において肝煎を務めた名家です。肝煎とは、江戸時代から明治時代にかけて村落の行政を担った役職であり、領主と村民の間に立って年貢の取りまとめや村政の運営にあたる重要な役割を果たしていました。その社会的地位にふさわしく、大宮家の住宅は地域の農家建築の中でも格別な規模と意匠を備えていました。

現在の主屋は明治17年(1884年)頃に再建されたもので、昭和62年(1987年)に大宮晃氏のご寄付により、もとの銅屋地区から現在の雄和妙法の地に移築されました。以降、秋田市が所有し、株式会社雄和振興公社が管理運営する文化・交流施設「里の家」として、地域住民や観光客に広く親しまれています。

文化財としての価値

里の家(旧大宮家住宅)主屋は、平成16年(2004年)3月2日に国の登録有形文化財(建造物)に登録されました。登録にあたっては、秋田地方を代表する中門造りの大型農家建築としての歴史的・建築的価値が高く評価されています。

建物は木造平屋建て、寄棟造、茅葺きで、建築面積は約270平方メートルに及びます。「馬屋片中門造り」と呼ばれる建築様式は、東北地方日本海側の農家に広く見られる形式であり、主屋の正面から馬屋(厩)部分が突出する独特の平面構成が特徴です。特に、中門正面の破風には曲面を上下に重ねた力強い造形が表れており、繊細な格子窓を備える妻壁に覆い被さるように構成されている点が、この建物の最も際立った特徴として評価されています。

建築の見どころ

旧大宮家住宅の魅力は、農家建築の実用性と武家住宅に通じる格式が見事に融合している点にあります。

外観では、茅葺きの大屋根が主屋と中門を一体的に覆う重厚な佇まいがまず目を引きます。中門造りの突出部は、かつて馬を飼育していた空間であり、秋田の厳しい冬に屋内から馬の世話ができるよう設計された、北国ならではの生活の知恵が反映されています。

内部に足を踏み入れると、手前に茶の間、奥に二間続きの座敷が広がります。座敷の欄間には白壁に浮彫りが施され、農家建築としては異例の繊細な装飾が見られます。さらに、武家風の本格的な書院が設けられており、民家全体の格調を高めています。これは、肝煎としての大宮家の社会的地位を物語る貴重な意匠です。

重厚な柱は家屋の長い歴史をしっかりと支え、その存在感は訪れる者に深い印象を与えます。屋外には樹齢100年を超える大木や土蔵が残されており、往時の農村風景を偲ばせる趣深い空間が広がっています。

体験・利用案内

里の家は文化財の見学だけでなく、さまざまな体験や利用ができる施設です。建物の見学は無料で、開館時間中は自由に茅葺き建築の美しさを楽しむことができます。

日本間は一部屋単位で貸し出しが行われており、茶会、会議、文化活動など幅広い用途にご利用いただけます。歴史ある空間での茶会は格別の趣があります。

また、秋田の郷土料理「きりたんぽ」づくりの体験プログラムも人気です。10名から20名のグループで参加でき、きりたんぽ鍋コース(鍋・うどん付き)をお楽しみいただけます。ご予約は利用日の7日前までに雄和振興公社へお申し込みください。

周辺の観光スポット

里の家は「ゆうわ花の里」エリアに位置しており、周辺には魅力的な観光スポットが集まっています。

  • 秋田国際ダリア園:里の家に隣接する世界有数のダリア園。世界14カ国から集められた約700品種、7,000株のダリアが咲き誇ります。オリジナル品種「NAMAHAGEダリア」シリーズの発祥地としても知られ、8月中旬から11月初旬にかけて開園します。
  • 雄和観光交流館「ヴィラフローラ」:ダリア園を見下ろす丘の上のレストラン・観光施設。地元食材を使った料理や雄和の特産品を楽しめます。
  • 温泉ユアシス:ナトリウム塩化物泉の温泉施設。日帰り入浴のほか、宿泊やコテージ利用も可能です。
  • 国際教養大学(AIU):雄和地区にある国際的な大学。美しいキャンパスと一般開放されている中嶋記念図書館は見学にもおすすめです。

Q&A

Q中門造りとはどのような建築様式ですか?
A中門造りは、東北地方の日本海側を中心に見られる伝統的な農家建築の様式です。主屋の正面から馬屋(厩)部分が突出した平面構成が特徴で、豪雪地帯において屋外に出ることなく馬の世話ができるよう工夫されています。里の家は「馬屋片中門造り」と呼ばれる形式で、片側に中門が突出する構造になっています。
Q入場料はかかりますか?
A建物の見学は無料です。日本間を貸切利用される場合は、1室3時間まで1,100円の利用料がかかります。なお、茶会での利用の場合は利用料金が5割増しとなります。
Qアクセス方法を教えてください。
A秋田空港から車でわずか約5分と大変便利な立地です。日本海東北自動車道の秋田空港ICからは車で約10分、JR秋田駅からは車で約40分です。無料駐車場が完備されています。
Qきりたんぽづくり体験はできますか?
Aはい、10名から20名のグループで体験可能です。きりたんぽ鍋コース(鍋・うどん付き)で、大人2,000円(税抜)、小学生以下1,500円(税抜)です。ご希望日の7日前までに雄和振興公社(TEL:018-881-3011)へご予約ください。
Qおすすめの訪問時期はいつですか?
A一年を通して見学可能ですが、特におすすめは秋(9月〜11月初旬)です。隣接する秋田国際ダリア園が開園し、色とりどりのダリアと茅葺き屋根の歴史的建造物を同時に楽しめます。年末年始(12月29日〜1月3日)は休館となります。

基本情報

名称 里の家(旧大宮家住宅)主屋
読み さとのいえ(きゅうおおみやけじゅうたく)しゅおく
文化財区分 国登録有形文化財(建造物)
登録年月日 平成16年(2004年)3月2日
建築年代 明治17年(1884年)頃 / 昭和62年(1987年)移築
構造 木造平屋建、茅葺、建築面積約270㎡
建築様式 馬屋片中門造り(寄棟造、茅葺)
所在地 〒010-1223 秋田県秋田市雄和妙法字糠塚21
所有者 秋田市
管理運営 株式会社雄和振興公社
開館時間 10:00〜18:00
定休日 毎週木曜日、12月29日〜1月3日
入場料 見学無料(日本間貸切:1室3時間 1,100円)
アクセス 秋田空港から車で約5分/秋田空港ICから車で約10分/JR秋田駅から車で約40分
駐車場 無料駐車場完備
電話 018-886-2715

参考文献

里の家(旧大宮家住宅)主屋 – 文化遺産オンライン
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/183853
旧大宮家 | 里の家 | 雄和振興公社
https://www.yuwa-kousya.jp/sato/oomiya.htm
旧大宮家住宅 | 木づかいの宝 | 秋田プライウッド株式会社
http://www.aplywood.co.jp/company-profile/kidukainotakara-abs/takara080823/index.html
秋田市雄和 里の家 – アキタッチ+(プラス)
https://www.akita-yulala.jp/see/200010423
国指定文化財等データベース(文化庁)
https://kunishitei.bunka.go.jp/bsys/maindetails/101/00003943

最終更新日: 2026.03.28