明治28年に建った大規模な醸造蔵

旧大塚酒造本蔵は、茨城県坂東市岩井3351-2にある明治28年(1895年)建築の木造2階建の醸造蔵で、平成29年(2017年)5月2日に登録有形文化財となった。建築面積は795平方メートルあり、県西地域に残る明治期の酒蔵建築としては最大級の規模をもつ。

建てたのは大塚家ではない。この敷地はもともと相澤酒造のもので、同家は江戸時代末期の天保年間(1830年から1844年)に創業し、明治中期から大正期にかけて醸造用の蔵を次々と敷地内に増やしていった。本蔵の建築年は建物自身が記録している。2階の地棟の下面に墨書があり、明治28年(1895年)7月の日付とともに、当時27歳9か月だった当主・相澤子之吉の名と、棟梁を務めた山中米吉の名が読み取れる。

相澤酒造は昭和6年(1931年)に酒造業をやめる。取引のあった千葉県野田市の酒類販売業者・大塚栄吉が敷地と建物、醸造設備一式を引き継ぎ、以後は大塚酒造としてこの蔵を動かした。主力銘柄の「秀緑」は、良い酒を指す古語「緑酒」に由来し、その語は漢詩の一節に見える。生産量は昭和60年(1985年)頃が最盛期で、年間およそ360,000リットルに達した。平成23年(2011年)に醸造を終え、跡地と建物は坂東市の所有となった。

この蔵が登録された理由

旧大塚酒造本蔵は登録有形文化財である。これは平成8年(1996年)に始まった登録制度によるもので、指定制度とは別の枠組みにあたる。登録基準は「国土の歴史的景観に寄与しているもの」で、登録有形文化財としての登録番号は08-0298、員数は1棟である。

これだけの規模の木造醸造蔵が、姿を保ったまま残る例は多くない。廃業とともに解体されるか、小さく区切られて別用途に転じるか、地震で2階を失うかのいずれかをたどりやすい。本蔵は大正12年(1923年)の関東大震災と平成23年(2011年)の東日本大震災を経てなお平面と構造体と屋根を保ち、平成28年(2016年)の改修も骨組みを残すことを前提に進められた。登録が評価しているのは装飾ではない。地方の町で酒がどう量産されていたかを、建物そのものが今も説明できる点にある。

10本の通し柱、落葉松の梁、床の穴

旧大塚酒造本蔵に入ると、視線はまず上へ向かう。身舎は桁行17、梁間6間で、その3方に幅3間の下屋が取り付く。屋根は切妻造桟瓦葺。床面積は1階が約790平方メートル、2階が約170平方メートルある。

中央には2列の柱が並ぶ。1階から2階まで通した通し柱が計10本、いずれもおよそ300ミリ角という太さで立つ。内部が細かい柱間の連続ではなく一つの大きな空間として見えるのは、この10本が支えているからで、真横に立つとその断面の大きさが手で測れる距離になる。

梁に使われているのは落葉松である。硬く腐りにくい一方、乾くとねじれるため建築材としては避けられることが多い木だ。ただし水を大量に使い、空気が乾くことのない酒蔵では、その欠点が問題にならない。明治28年(1895年)の段階で、この性質を知っていた者が現場にいた。

2階の小屋組は和小屋で、梁と束が頭上にそのまま見える。目を落とせば、床板に大小2種類の丸い穴が並び、それぞれ蓋がはめ込まれている。階下の醸造樽へ棒状の道具を差し入れ、上から撹拌する作業に使われたものと考えられる。

1階にはかつて6,000リットルから8,000リットル級のタンクが40基以上並んでいた。現在も何基かはその場にあるが、今は醸造ではなく空調設備の一部として据えられている。タンクの木製の蓋は切り出され、敷地前面に建つ店舗兼主屋の床板として敷き直された。

旧大塚酒造本蔵の見学

旧大塚酒造本蔵は見学できる。建物は坂東市観光交流センター「秀緑」の敷地内にあり、この施設は平成28年(2016年)11月に開設された。名称はかつての酒銘から採られている。入場は無料、開館は午前10時から午後6時までで、月曜日は休館、月曜日が祝日の場合は翌日が休館となる。

旧大塚酒造本蔵の1階は多目的ホールとして貸し出されており、コンサートや会議、同窓会などで使用中のことがある。側面の下屋は展示スペースにあてられている。何もない状態の大空間を見たい場合は、事前に0297-35-0002へ電話で確認しておくとよい。撮影の可否について公式な案内は出ていないので、催しの開催中は受付でひと言たずねてほしい。なお、敷地内で酒は造られていない。

最寄りのバス停は「本町」で、そこから徒歩1分。つくばエクスプレス守谷駅からは関東鉄道バスの岩井バスターミナル行きが本町を通り、所要は40分ほど。東武アーバンパークライン野田市駅からは茨城急行バスの岩井車庫行きが同じ停留所に停まる。同線の愛宕駅からはバスかタクシーで30分ほどの距離にある。車の場合は圏央道坂東インターチェンジから15分ほど。駐車場は本蔵の裏側に10台分、南側に車椅子対応が2台分ある。

Q&A

Q旧大塚酒造本蔵は見学できますか。入場料はかかりますか。
A見学できます。坂東市観光交流センター「秀緑」の一部で、入場は無料です。ホールが貸切で使用されている時間帯を除き、内部を自由にご覧いただけます。
Q旧大塚酒造本蔵の開館時間と休館日を教えてください。
A午前10時から午後6時まで開いており、月曜日が休館です。月曜日が祝日にあたる場合は翌日が休館になります。遠方から向かう場合は0297-35-0002へ事前にご確認ください。
Q旧大塚酒造本蔵では今も酒を造っていますか。
A造っていません。大塚酒造の廃業により平成23年(2011年)に醸造は終わりました。現在は多目的ホールと展示スペースとして使われ、敷地内の別棟にガラス・陶芸・木工の体験工房があります。
Q旧大塚酒造本蔵へ電車とバスで行くにはどうすればよいですか。
Aつくばエクスプレス守谷駅から関東鉄道バスの岩井バスターミナル行きに乗り、40分ほどで「本町」下車、徒歩1分です。東武アーバンパークライン野田市駅からの茨城急行バス岩井車庫行きも同じ停留所に停まります。
Q旧大塚酒造本蔵では何を見ればよいですか。
A中央に並ぶおよそ300ミリ角の通し柱10本、落葉松の梁、2階の床にある蓋つきの丸い穴、そして地棟下面に残る明治28年(1895年)の墨書です。

基本情報

名称旧大塚酒造本蔵(きゅうおおつかしゅぞうほんぐら)
所在地茨城県坂東市岩井3351-2
指定区分登録有形文化財(建造物)
指定年平成29年(2017年)5月2日登録
員数1棟
寸法建築面積795平方メートル、身舎は桁行17間・梁間6間、1階約790平方メートル、2階約170平方メートル
所有者坂東市
公開状況坂東市観光交流センター「秀緑」として公開。入場無料、午前10時から午後6時、月曜休館

参考文献

文化庁 国指定文化財等データベース「旧大塚酒造本蔵」
https://kunishitei.bunka.go.jp/heritage/detail/101/00011447
文化遺産オンライン「旧大塚酒造本蔵」
https://bunka.nii.ac.jp/heritages/detail/285646
観光交流センター秀緑「本蔵の風格(登録有形文化財)」
https://shuroku.com/shisetsu/honguranohukaku
観光交流センター秀緑「施設紹介・旧大塚酒造について」
https://shuroku.com/shisetsu-syoukai
観光交流センター秀緑「アクセス」
https://shuroku.com/access
茨城県 観光いばらき「坂東市観光交流センター『秀緑』」
https://www.ibarakiguide.jp/spot.php?mode=detail&code=217
坂東市「令和6年版 坂東市統計書」(沿革および国登録有形文化財一覧)
https://www.city.bando.lg.jp/data/doc/1748484586_doc_13_0.pdf

最終更新日: 2026.09.06